
高市政権の経済運営に手詰まり感が漂っています。イラン戦争でインフレ懸念が一段と強まったことで、長期金利の上昇に歯止めがかかりません。為替市場でも円安が進み、先月末の市場介入効果が、ほぼ『帳消し』になりました。金融市場は「金融緩和と財政拡大」という、デフレ時代に全盛を極めた、看板の修正を迫っているのです。
【画像でみる】止まらない長期金利上昇と為替介入効果『ほぼ帳消し』、市場が促す政策修正
長期金利が一時2.8%に
18日の東京債券市場では、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが、一時、2.80%にまで上昇しました。およそ29年ぶりの高い水準です。アメリカとイランの戦争終結に向けた動きが停滞、原油価格をはじめとするインフレへの懸念が強まり、アメリカの長期金利が上昇したことが、日本にも波及しました。
また、高市総理大臣が、夏の電気・ガス料金やガソリン価格への補助のために、補正予算編成の検討を指示したことから、財政がさらに悪化するとの懸念が一段と強まったためです。予算成立から2か月も経たないうちに「補正」と言われれば、市場が驚くのも当たり前です。
このところ長期金利は、日銀の利上げの遅れによって、インフレ対処が後手に回れば、最終的な到達金利(ターミナルレート)が高くなってしまうという見方から、一本調子の上昇が続いており、ついに2.8%台へとピッチを加速させたのでした。高市政権が発足した去年10月の長期金利は1.6%前後でしたから、7か月で1.2%もの急騰ぶりです。
ガソリン、電気・ガス、いつまで一律補助なのか
現在行われているガソリン補助は、価格を1リットル170円程度に抑えるため、政府が元売りに補助金を出す仕組みです。21日現在の補助額は1リットルあたり41.8円という大幅なものです。高市総理はホルムズ海峡封鎖で原油高が続くことから、これを継続する考えのようです。
しかし、211円のガソリンを170円にするため税金を使い続けることは、大盤振る舞いに過ぎるでしょう。今や日本のガソリンの店頭価格の安さは、世界を見回しても際立っています。
確かにガソリン価格は輸送費にも跳ね返るので、国民生活に広く影響を及ぼします。それでも、そもそも所得の高い人や高い賃上げの恩恵に浴している人にまで、一律補助するというのは、おかしな話です。節約の観点から言っても、多く使う人ほど補助金をたくさん受け取る制度もいかがなものでしょうか。現在検討されている電気・ガス料金への補助も、これまで通りの仕組みなら、一律支給という意味では、同じ問題をはらんでいます。
長期金利の上昇は当たり前だが
アベノミクスによる異次元金融緩和で、日銀が大量の国債を買い入れ、長期金利をいわばコントロールしていた時代が終わった以上、長期金利が上昇していくのは、仕方のないことです。また、デフレから脱却し、インフレが織り込まれるようになれば、長期金利が上昇するのは、健全な動きでもあります。
しかし、あまりに急ピッチに、しかも無秩序に動くことは、大きなリスクを伴います。長期金利は企業の借り入れコストに直結していますし、何より、財政赤字が大きな日本にとっては、国債の利払い費を急増させ、財政圧迫要因になるからです。市場の信認を得ながら、財政運営に努める必要があるのです。
ベッセント長官は日銀の最大の味方
19日、アメリカのベッセント財務長官は、パリで日銀の植田総裁と会談しました。先日のベッセント長官来日の際に、植田総裁が出張中だったことから、訪問先での会談が実現したのです。古くからの友人とはいえ、アメリカの財務長官が、日本の中央銀行トップと会談するのは異例のことです。
会談後、ベッセント財務長官は「植田総裁は日本の金融政策を適切に導くと確信している」とSNSに投稿しました。その後、ロイター通信とのインタビューに対し、「植田氏は優れた中央銀行総裁だ。必要なことを行う余地が与えられれば、優れた金融政策を実現すると確信している」と述べたと言うことです。
要は、植田総裁を応援しつつ、『植田総裁に正しいことをやらせないことが問題だ』と、釘を刺しているわけです。
円相場は介入効果を「ほぼ帳消し」
今年4月30日に、日本の通貨当局が為替市場へ介入を行った際の円相場は、1ドル160円台でした。介入で一瞬155円台まで円高方向に跳ね返したものの、その効果は持続せず、足元では再び159円台へと、介入効果は「ほぼ帳消し」の状態です。
為替介入をめぐって、アメリカがここまで理解を示し、ピタリと歩調が合うことは、過去を振り返ってもそうそうあることではありません。にもかかわらず、市場が介入効果を一時的とみているのは、イラン情勢受けた原油高が円安に作用する上に、日銀の金融正常化が遅れると見ているからです。
当初、予想された4月の利上げはあっさりと見送られ、高市政権の『利上げ拒否感』は依然として強いと、市場には見られているようです。金融界出身で、そうした事情を百も承知のベッセント長官は、植田総裁へのエールを送ったのでした。もちろん、それは、日本のためだけではなく、各国の長期金利、ひいては世界の金融市場に、不測の事態を起こさせないためでもあります。
まとめ
日本の経済運営には、今や、最低限の節度がある財政出動と、インフレ抑制、そして円安の是正が必要です。特にインフレ抑制と円安是正には、金融正常化が必要条件です。
金融を引き締めて円高に戻る保証はなくても、日本だけが「実質金利大幅マイナス」という状態で円高方向に戻るわけがありません。
高市総理が「積極財政」や「金融緩和」という自らの「キャッチフレーズ」、いわば言葉に縛られるのではなく、デフレからインフレへと必要な政策が変わったことを受けて、政策を修正すべき時が来ています。それは、政権発足以来の歩みから「学ぶ」過程でもあります。「市場の声」を素直に聞くべき時です。
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