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また噛んだ! この「ろれつ」が回らないのは、なにかの異変?

2017-03-09 21:30:11


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ

ろれつが回らないとは、コトバがはっきりしなくなるさまのことを言います。
お酒に酔って舌がうまくまわらなくて「ろれつが回らない」なら、「お気の毒に!」ですむ話でしょうが、その原因に病気があるとなると、症状として言語障害が疑われます。
まずがはこの「ろれつが回らない」について、詳しくみていくことにいたしましょう。

「ろれつが回らない」の由来


「ろれつ」という言葉の由来は音楽です。
ド・レ・ミの7音階が有名ですが、音楽の基本となる「音階(スケール)」は国や地域によって非常に多様です。
多様なスケールの中で、雅楽で用いられる中国伝来の「呂(りょ)」と「律(りつ)」というスケールがあります。呂旋法は民謡音階とも呼ばれます。
律旋法は「君が代」がこれを使っています。どちらも五音階です。
さて、「ろれつが回らない」の由来は、この「呂」と「律」とのハーモニーがあっていないことを指していました。
ですから、漢字では「呂律が回らない」と書きます。それが転じて、現在の「コトバがハッキリしない」になっています。

ろれつが回らない:言語障害とは?


言語障害は「言語の適切な理解と表現が困難な状態」を指しています。
大別すると、音声・発音・話し方が障害される「音声機能障害」と、表現や理解に障害が出る「言語機能障害」とに区別されています。

音声機能障害


構音障害、吃音(きつおん)、けいれん性発生障害、脳性まひや聴覚障害が代表的です。

言語機能障害


失語症、高次脳機能障害、言語発達障害などが挙げられます。
ろれつが回らないという現象は、以上のうちの「構音障害」に分類されています。
これは、コトバを発するのに必要な、脳・神経・筋肉のどこかに障害があって、思い描いているような正しい発語や発声ができなくなってしまう状態を指しています。

ろれつが回らない:言語障害の原因となる病気


ろれつが回らなくなってしまったとき、どのような病気が原因として考えられるでしょうか。かなり多くの病気が関連しています。

脳血管障害


一番の原因に挙げられるのは「脳血管障害」です。
脳の血管が詰まったり出血したりすることで、脳細胞への栄養が行きとどかなくなり、ダメージを受けた脳のその場所が機能しなくなります。
これを「脳血管疾患」と呼びますが、発声や発語にかかわる口やほほなどの筋肉、それを支配する脳神経がダメージを受け、コトバが出ない、ろれつが回らないなどの症状が現れます。

筋肉や神経の障害


パーキンソン病、重症筋無力症、進行性筋ジストロフィーといった「神経筋疾患」になると、筋力の低下や萎縮によって、筋肉をうまく動かすことができなくなり、不明瞭な発語やろれつ障害をきたします。

球麻痺(きゅうまひ)


脳の延髄(えんずい)の疾患によって脳神経が障害されて、言語や嚥下(飲み込み)障害、あるいは顔面筋のマヒなどが起こって、ろれつが回らなくなったりします。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)や多発性硬化症などに球麻痺がよくみられます。

小脳疾患


小脳腫瘍、小脳梗塞などで、歩行時に体幹が大きくぶれたり千鳥足になったりする運動失調の症状が起こります。この中の一つに、ろれつが回らないという症状もみられます。

舌や口唇、咽頭の病気


舌やのど、口唇といった発声に必要な器官が、がんや腫瘍などによって障害されると、動きが悪くなって「ろれつ障害」が起こります。

過労・ストレス


過労やストレスが自律神経失調症を引き起こして、さまざまな不調をきたす中、ろれつが回らなくなるのも一つの症状として含まれます。

ストレス性障害や不安障害


精神的緊張や過度のストレスによって吃音症が出るときに、ろれつが回らなくなる症状も自覚されます。

ろれつが回らない:脳梗塞の影響


脳の血管が詰まる「脳梗塞」は、脳出血やくも膜下出血とならんで、脳血管疾患の代表的な病気です。
ところで、脳梗塞の後遺症の一つとして「言語障害」があり、声が出しにくくなったり、他人のコトバを理解できなくなったり、思っていることがコトバにならなくなったりすること、そして、ろれつが回らなくなる症状も起こります。

ろれつが回らない:対処法は?


ろれつが回らなくなってしまう原因が、お酒とか過労などということがはっきりしているなら、酔い覚ましや休息をすることで、対処することができるでしょう。
しかし、原因が不明なら病気によるものの可能性が高いと考えるべきかもしれません。
まずは、脳梗塞などの脳血管疾患が疑われます。神経内科や脳神経内科を受診しましょう。
また、口腔や舌に異常があるなら口腔外科や咽頭科への受診が適切かもしれません。
どちらにしても、危険信号だと思って、できるだけ早く受診することをおすすめします。
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお・かおるこ)
助産師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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