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寝ているはずなのに寝た気がしない… 「熟睡障害」の可能性も

2017-03-14 18:30:06


執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
熟眠障害をご存知でしょうか。
不眠症の一つですが、睡眠時間をしっかりとっているはずなのに、朝起きても疲れが取れず、全然寝た気がしないといった本人の訴えが多いものです。
この睡眠障害がどうして起きるのか、その原因は何かなどを考えてみましょう。

熟眠障害は不眠症


熟眠障害は「熟眠感欠如」とも言われます。
自覚症状としては、「寝ているはずなのに疲れが取れない」「寝た気がしない」「身体が一日中だるい」「頭痛がする」「最近悪い夢ばかり見る」などが挙げられます。
睡眠時間は十分とっているはずなのに、朝起きるのがだるかったり、仕事がはかどらなかったりする、不眠症の一つです。
休日に一気に寝て回復しようとしている人に熟眠障害の傾向があるという指摘もあります。
ちなみに、不眠症にはほかに、寝つきが悪くなる「入眠障害」、朝早く起きてしまう「早朝覚醒」、深夜にふと目覚めてしまう「中途覚醒」があります。
これらは比較的、眠れていないことを自覚しやすいのに比べると、熟眠障害は「眠っているつもりなのに」と自覚症状がハッキリしないことが多いようです。

熟眠障害のとき身体で何が起こっているの?


熟眠障害が起きるとき、身体や脳では何が起こっているのでしょうか。
これについては、二つのことが指摘されています。
ひとつは、睡眠の質が悪くなっていること。これには、「ノンレム睡眠」という、いわゆる深い眠りが現れなくなってしまうことが挙げられます。
脳も身体もスリープ状態になる「ノンレム睡眠」。
通常は、入眠直後の3時間くらいがもっとも深くなり、時間が経つにつれて浅い睡眠が多くなって覚醒に至ります。
熟眠障害の場合、深いノンレム睡眠なしに目覚めるので、「寝た気がしない」という事態になってしまうということです。
もう一つは、体内時計と光によって分泌を左右される睡眠ホルモン「メラトニン」が不足すること。
このため、睡眠の質が悪くなっていることが挙げられます。
さらに、メラトニンの分泌時間は太陽の光を浴びるタイミングと関連するので、夜勤などの理由でメラトニンの分泌タイミングが不適切になって、熟眠障害をきたしている場合もあるそうです。

熟眠障害のさまざまな原因


熟眠障害が起きる原因として、次のようなことが挙げられています。

加齢


高齢化することで、メラトニンの分泌量が減少し、睡眠の質が低下して熟眠障害となる

ストレス


ストレスは緊張状態を創り出すので、睡眠よりも覚醒を促し、睡眠の質を下げてしまう

飲酒


アルコールは「寝酒」のように、睡眠導入効果があるといわれる。確かに入眠作用はあるものの、むしろ今では、睡眠の質を下げることが強調され、熟眠障害を誘発するとされている
そのほか、季節の変わり目や夜勤、鼻づまりや身体の痛み、生理や妊娠なども熟眠障害の誘因とされていますが、重要な原因として「睡眠障害」を挙げておかなければなりません。

睡眠障害からくる熟眠障害


熟眠障害(不眠症)自体がすでに睡眠障害ですが、他の睡眠障害が熟眠障害をもたらします。
「睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)」では、睡眠障害として「不眠症」はじめ、さまざまな睡眠障害を分類しています。
この中で、熟眠障害の原因として挙げられているものは、次の2項目です。

逆説性不眠症(不眠症の一つ)


本人は眠れなくて困っていると悩み、医師に相談したりするのですが、検査では睡眠障害の証拠がみられないケースを指します。
この場合も、睡眠の質は低下して深い睡眠が減っているとか、実際には目覚めていないけれども「眼覚めようとする覚醒反応:CAP」が脳波検査ではみられるという傾向があるとのこと。
そして、背景にうつ病や神経症的な意識過剰、あるいは妄想的な解釈があるといった病気も想定されます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)


睡眠障害では「睡眠関連呼吸障害」に分類される「睡眠時無呼吸症候群」。
呼吸が止まってしまう「無呼吸」や、1回の呼吸量が減る「低呼吸」など、眠っているあいだに呼吸障害が起きているケースです。
この場合も本人には、睡眠の質が下がっているのに眠れていない自覚がなく、日中に居眠りなどをしてしまうケースがよくあります。

熟眠障害:周囲が気づかせてあげよう!


他の不眠症と違って、自覚が難しい「熟眠障害」。
パートナーや周囲の人が、指摘したり注意したりして、気づかせてあげることが早期対応につながります。
そして、本人が熟眠障害を認めたら、睡眠外来などを受診したり、カウンセリングを受けるとよいでしょう。
【参考】
坪田聡『不眠症の科学』サイエンス・アイ新書、2011.
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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