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【パリオリンピック女子ストリート】吉沢恋と赤間凛音がワンツーフィニッシュの快挙!金メダルが恋した笑顔の滑り

2024-07-29 10:00:04

現地時間7月28日にフランスのパリ中心部に位置するコンコルド広場で開催された、パリオリンピック、スケートボード女子ストリートで吉沢恋(14歳)が金メダル、赤間凛音(15歳)が銀メダルを獲得し、見事日本勢がワンツーフィニッシュの快挙を成し遂げた。
銅メダルはブラジルのライッサ・レアウ(16歳)が獲得し、東京大会の銀メダルに続いて2大会連続の表彰台入り。女子ストリートは前回の東京オリンピックに続き、日本勢による2大会連続金メダル獲得となった。

日本勢は他にも東京オリンピック銅メダリスト、中山楓奈が決勝に進出し7位に入賞。今大会、女子ストリート全出場者の平均年齢は17.4歳で東京大会の平均年齢21.7歳から約4歳も下回る形になった。

【世界ランキング上位を占める女子ストリート日本勢】

ストリート女子の日本勢は世界ランキング1位に吉沢恋、2位が赤間凛音、4位が中山楓奈と、上位のほとんどは日本勢が占めている。

ちなみに1か国3人までの出場枠があるため、今大会には出場できなかったが、5位は織田夢海、7位に東京オリンピック金メダリストの西矢椛、9位に伊藤美優と続いている。
※パリオリンピックスケートボードは1種目22名が出場(その内ホスト国枠、各大陸枠、ユニバーサリティ枠が確保されている)、1か国最大3人まで。

パリオリンピックストリート種目は、45秒のラン2本と、一発技のベストトリック5本が行われ、ランのベストスコアと、ベストトリックの上位2本を合わせた得点で競われる(それぞれ100点満点で最高得点は300点)。
東京オリンピックと大きく違う点は、ランのスコアが必ずカウントされるという部分で、東京オリンピックの時はランでミスしてもベストトリックで巻き返しが可能だったが、パリオリンピックではランでミスがあると、逆転はかなり難しいルールになった。

【金メダル最有力候補、あわや予選敗退の危機に】

東京オリンピック銀メダリストで世界ランキング3位、金メダル最有力候補のブラジル、ライッサ・レアウが予選ヒート3に出場。
※(ライッサは世界ランキング3位だが、最もポイントが加算されたパリ五輪最終予選大会はすでに出場権を内定させていたため欠場した上での3位だ)

ランでは1本目と2本目で、バンクのキックフリップをミスしてしまい、59.88点のスコアでベストトリックに臨む形に。

ランをミスしてしまった時点で、あわや予選敗退かと思われたが、さすがは百戦錬磨のライッサといったベストトリックを見せる。
ベストトリックではメインのハンドレールで、キックフリップ フロントサイドボードスライド(88.87点)キックフリップ バックサイドリップスライド(92.68点)という他を圧倒するトリックを見せ、最終的には7位で決勝進出を果たす。

決勝進出者の中では、唯一ランでフルメイク(一度もミスせずに滑りきる事)がないにもかかわらず、決勝進出を決めることができたのはそれだけ高難度トリックの引き出しがある証だ。

日本勢は、世界ランキング1位の吉沢恋がヒート2に出場。ランではビッグスピン フロントサイドボードスライドなどの高難度トリックを決め、フルメイクのランを見せて83.59点を獲得すると、ベストトリックでも1本目にビッグスピン フロントサイドボードスライド(86.65点)、2本目にはキックフリップ フロントサイドボードスライド(88.68点)を決め、早々と決勝進出を確定させる。

ヒート4には赤間凛音と中山楓奈が出場。
2人ともラン1本目でしっかりフルメイクのランを見せると、赤間はバーレーグラインドtoレギュラー(86.83点)フロントサイド180to50-50グラインド(84.61点)を決め、こちらも早々に決勝進出を決める。

中山はベストトリックにフロントサイドKグラインド(84.56点)、コース中央にあるギャップtoレールの最高難度セクションで、バックサイドリップスライド(81.09点)を決め決勝進出を決めた。

【五輪のプレッシャーから有力選手のミスが続く波乱の決勝】

決勝はブラジルのライッサ・レアウや、オーストラリアのクロエ・コベル(14歳)といった各国の優勝候補たちが、2本ともランをミスしてしまう波乱の展開の中、日本勢は3人ともしっかりフルメイクの滑りを見せ、ラン終了時点で首位が赤間凛音(89.26点)、2位が吉沢恋(86.80点)、3位に中山楓奈(79.77点)と日本勢が優位にベストトリックに進む。

ちなみに決勝のランをフルメイクしたのは日本勢3人とアメリカのページ・ハイン(76.41点でラン4位)のみで、ライッサが5位(71.66点)、クロエが6位(70.33点)で日本勢を追う展開に。

迎えたベストトリックでも波乱は続く。

表彰台候補の中山がコース中央のメインセクション、ギャップtoレールでフロントサイドK(クルックド)グラインドを狙うも、5本全てミスしてしまう。続いて、クロエも10段ハンドレールで、フロントサイド50-50グラインドからキックフリップアウトを狙うも、こちらも5本全てミス。
誰がこんな展開を予想できただろうか?

そんな中、集中力が誰よりも神がかっていたのが吉沢だった。

ベストトリック2本目に、10段ハンドレールでキックフリップ フロントサイドボードスライドを決めると、4本目にはデッキを横に270度回転させ、縦にも1回転させてレールを滑り降りるビッグスピンフリップ ボードスライドを決め、今大会最高得点となる96.49点を獲得。

ランで最高得点を獲得し、ベストトリック1本目でフロントサイド270リップスライド(92.62点)を決め、その後もフロントサイド180ノーズグラインド(84.07点)でトップを走っていた赤間を抜いて暫定首位に立つ。

赤間もさらにスコアを伸ばすべく、フロントサイドフィーブルグラインドからの180アウトを狙うが、3本続けて失敗してしまう。

最終5本目、ウイニングランとなった吉沢はフロントサイドハリケーングラインド(89.46点)でさらにスコアを伸ばし、見事に金メダルを獲得。

3年前に実況が放った「13歳、真夏の大冒険」で西矢椛が金メダルを獲得した3年後、今度は西矢を見てオリンピックを目指した吉沢恋が金メダルを獲得。
フロントハリケーンをメイクした際に実況が放った言葉は「金メダルに恋した14歳」だった。

今大会気になったのが、あくまで画面越しに見ていての話になるが、海外勢のクロエもライッサもいつも大会で見せる、笑顔があふれる楽しそうな滑りがあまりできていなかったという点だ。

国を背負って出場するオリンピックという、普段のスケートボードとは違う独特すぎる雰囲気がそうさせてしまったのかはわからないが、いつもの彼女たちの滑りではなかったことだけは確かだった。

そんな中、金メダルを獲得した吉沢とアメリカのポエ・ピンソンだけは笑顔が絶えなかったように思える。特にポエ・ピンソンは決勝では5位だったが、ヘッドフォンをして楽しそうに滑る姿は多くの人の心に刻まれたことだろう。
そして吉沢の笑顔のスケートに恋したのは、金メダルの方だったのかもしれない。

【最高難度で決めた金メダル/吉沢恋】

予選ではラン1本目に、ビッグスピン フロントサイドボードスライドやメインのギャップtoレールで、バックサイドリップスライドなどフルメイクの滑り(83.59点)を見せ、ベストトリックでも1本目にメインハンドレールで、ビッグスピン フロントサイドボードスライド(86.65点)、2本目ではキックフリップ フロントサイドボードスライド(88.68点)など、まったく危なげない滑りを見せ、1位で決勝に進出。

迎えた決勝のランでは、1本目と2本目でフルメイクの滑りを見せる。

1本目をフルメイク(85.02点)した後、2本目のランではキックフリップ フロントサイドボードスライド(ハンドレール)、ビッグスピン フロントサイドボードスライド(ハンドレール)、キックフリップ(バンク)、バックサイドスミスグラインド(バンクtoフラットレール)、バックサイドテールスライド(レッジ)、最後はギャップtoレールで、バックサイドリップスライドという1本目のランと同じ構成だったが、技の精度を上げた滑りを見せ、86.80点を獲得。

ランを終えた時点で、2位につけた吉沢は各選手がメイク率に悩む中、ベストトリックで誰よりもずば抜けた集中力を見せる。

以下、吉沢ベストトリック[]はセクション名。

1本目[10段ハンドレール]キックフリップ フロントサイドボードスライドをミス。
2本目[10段ハンドレール]キックフリップ フロントサイドボードスライドを決め、86.34点。
3本目[10段ハンドレール]ビッグスピンフリップ フロントサイドボードスライドをミス。
4本目[10段ハンドレール]ビッグスピンフリップ フロントサイドボードスライドを決め、96.49点を獲得し、首位に立つ。
5本目[10段ハンドレール]ウイニングランとなった最終トリックは、フロントサイドハリケーングラインドを決め89.46点を獲得し、金メダルを獲得。

金メダルが確定した瞬間、昨年12月の世界選手権終わりに、彼女の所属するスケートショップACT sb storeのオーナー、寺井裕次郎氏と話した会話を思い出した。

寺井氏によると、吉沢は元々何十人といるスケートスクールの教え子の中で残った1人だが、スケートを始めた最初の頃は一番素質がなかったと話していた。

しかし、誰よりもスケートボードが好きで、誰よりも努力を重ね、誰よりもスケートボードを楽しんできたのだろう。一番素質のなかったスケーターは、オリンピックの舞台で金メダルが恋してしまうほどの滑りを見せ、最高の笑顔とともに素晴らしいシンデレラガールに成長した。

【ラン最高得点の実力/赤間凛音】

予選2位で決勝に進んだ赤間は、決勝1本目のランでは得意のバーレーグラインド リバートをミスしてしまい、2本目にかける形に。
プレッシャーのかかった2本目のランでは、フロントサイドフィーブルグラインド(バンクからフラットレール)、キックフリップ(バンク)、バーレーグラインド リバート(ハンドレール)、フロントサイド360(バンク)、フロントサイドビッグスピン(バンクtoバンク)、フロントサイド180ノーズグラインド(ハバレッジ)をフルメイクし、89.26点を獲得。

ラン終えた時点で、首位でベストトリックに臨んだ。

以下、赤間のベストトリック[]はセクション名。

1本目[10段ハンドレール]フロントサイド270リップスライドを決め、92.62点。
2本目[10段ハバレッジ]フロントサイド180からの50-50グラインド、少し後ろのトラックが乗り上げてしまうもしっかり決めきり、84.07点を獲得して暫定首位に。
3本目[10段ハンドレール]フロントサイドフィーブルグラインドから180アウトを狙うもミス。
4本目[10段ハンドレール]この時点では吉沢に抜かれ2位、再びフロントサイドフィーブルグラインドから180アウトを狙うもミス。
5本目[10段ハンドレール]フロントサイドフィーブルグラインドから180アウトを狙うが最後も決めきれず。

最後のトリックが決めきれず、本人にとっては悔しい銀メダルかもしれないが、多くのトップ選手のミスが続く緊張感の中、これほどの安定した滑りを見せたのは本当にとてつもない精神力であり、誰もがリスペクトを送る最高の銀メダルだった。

【オリンピックだけが全てじゃないが】

残酷だがどんなに世界ランキング上位にいても、オリンピックは1つの国から3人までしか出場できない。今回のパリオリンピック予選ツアー大会、女子ストリートは日本勢同士の争いが本当に過酷だった。

男子ストリートでも同様のことがあったが、昨年の世界選手権の女王で世界ランキング5位の織田夢海が、日本勢4番手で出場を逃すという展開になった。

ちなみにパリオリンピック、スケートボード競技でランキング上位につけていながら、国枠制限で出られなかった最高順位は、男子パークのジャガー・イートン(アメリカ)の5位(ストリートでは出場を決めたが、残念ながら二刀流出場は果たせず)と男子ストリートの根附海龍と、織田夢海のいずれも5位である。

他にも東京オリンピック金メダリストの西矢椛も、パリオリンピック最終予選となるブダペスト大会で準決勝敗退を喫し、パリ大会出場を逃してしまった。

スケーターにとってオリンピックが全てではないが、東京オリンピックでの注目度の高さもあり、日本選手権や海外での大会などなど、パリオリンピックに向けて必死に努力してきた姿を、画面越しにとはいえずっと見てきた。

大げさでなく、本当に全員パリでの姿を見たかったし、全員に表彰台のチャンスがあった。これから次の2028年ロサンゼルス大会を目指す人も、目指さない人もスケートボードを楽しみつつ、また新たな道に進んで行けたらいいなと、いちスケートボードファンとして切に願っている。

【パリオリンピック女子ストリートリザルト】

1位 吉沢 恋(日本)–272.75
2位 赤間 凛音(日本)–265.95
3位 ライッサ・レアウ(ブラジル)–253.37
4位 サイ・シンギ(中国)–241.56
5位 ポエ・ピンソン(アメリカ)–222.34
6位 ページ・ハイン(アメリカ)–163.23
7位 中山 楓奈(日本)–79.77
8位 クロエ・コベル(オーストラリア)–70.33

以下予選敗退順位
9位 シュ・ユエンリン(中国)–234.82
10位 ロース・ズウェツロート(オランダ)–233.71
11位 ルーシー・ショーニル(フランス)–228.05
12位 ソウ・ブンケイ(中国)–223.49
13位 ダニエラ・テロル(スペイン)–220.38
14位 ナタリア・ムニョス(スペイン)–214.70
15位 ケート・オルデンベービング(オランダ)–210.78
16位 パメラ・ロザ(ブラジル)–205.23
17位 ワーリーラヤー・スックガセーム(タイ)–200.75
18位 ポイペロ・アウアー(南アフリカ)–159.34
19位 ガビ・マゼット(ブラジル)–144.35
20位 ヘイリー・パウエル(オーストラリア)–125.30
21位 リブ・ラブレース(オーストラリア)–118.10
22位 マライア・デュラン(アメリカ)–58.36

文 小嶋勝美
スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。
約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。

情報提供元: マガジンサミット

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