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年々患者数が増加傾向にある「アトピー」 発症に遺伝はどれだけ影響する?

2017-12-02 18:30:04


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
正式には「アトピー性皮膚炎」と呼ばれるアトピー。
皮膚にかゆみを伴う湿疹ができる病気です。
原因はさまざまで、たとえば、皮膚の乾燥、ダニやカビなどのアレルゲン、刺激の強い化粧品など、アトピーを発症させる「環境的な要因」が多く指摘されています。
「環境的要因」という観点からは、誰もがなりうる病気ともいえるでしょう。
それでは、遺伝の影響についてはどうでしょうか。
今回は、アトピーの基本情報と現状をおさえつつ、アトピーと遺伝との関係についてご説明いたしましょう。

アトピー患者の実態


アトピーの患者数は年々増加傾向にあります。
厚生労働省の患者調査では、2002年は279,000人 ⇒ 2008年は349,000人 ⇒ 2014年には456,000人という結果が出ています。
また、アトピーは幼児期に発症するケースが多いのですが、近年は、成人になってから発症する例も増えてきました。
ちなみに、アトピーを原因とする皮膚症状は、年代によって次のような傾向が指摘されています。

乳児期:顔や頭、首や前胸部にゴマ粒大の斑点が発生する


幼児期:皮膚がカサカサになり、肘や膝に赤い発疹が出て、ひっかき傷が加わる


小児期:皮膚がカサカサで、肘や膝の皮膚が分厚く硬くなり、淡い褐色の色素が沈着する


思春期:引き続き皮膚がカサカサで、肘や膝の皮膚が分厚く硬くなり、また、顔から首や肩にかけて乾燥した発疹がみられるようになる


成人期:身体全体の皮膚がカサカサで発疹が発生し、肘や膝の皮膚は分厚く硬く、首にはさざ波のような色素沈着がでてくる。また、顔は全体に赤くなり、ときどき腫れて、ジュクジュクとした透明の浸出液を流すようになる


アトピーの原因:環境的要因


アトピーは、遺伝的要因と環境的要因が関与して発症する「多因子疾患」と考えられています。
環境的要因には、おもに次のようなものがあります

皮膚の乾燥


乾燥した皮膚と汗や衣服との間に生じる摩擦や、掻いてしまって炎症を起こすことによる、バリア機能の低下

アレルギー


食べ物、ダニやカビ、花粉、ペットの毛など、まざまなアレルゲンに対するアレルギー反応

化粧品や入浴剤など


皮膚に合わない化粧品による炎症や、入浴剤で皮脂を過剰に洗い落とすことで招く乾燥

ストレス


ストレスによる免疫機能の低下、およびホルモンバランスの崩れからくる皮膚のターンオーバーの乱れ(乾燥しやすくなりアトピーを誘発する)

アトピーの原因:遺伝的要因


食事、生活、有害物質などの影響でアトピーが体質化してしまった状態を「アトピー体質」と呼んでいます。
「敏感肌」と呼ぶ医師もいます。
このアトピー体質が遺伝する確率は、両親ともにアトピー体質の場合50%くらい、両親のどちらかがアトピー体質の場合30%ほど、といわれています。
この結果をみると、遺伝性があるようにも思えます。
しかしながら、両親がアトピー体質でも本人はアトピーではない、また、両親がアトピー体質ではないのに本人がアトピーという例もありますから、厳密に「遺伝する」と決定づけるのは難しいかもしれません。
体質的な遺伝性と、生活習慣をともにするという環境性が合わさった「家族性」という言葉があります。
アトピーもアルツハイマー病や糖尿病などと同様、「家族性がある」ということでしょうか。
ひとつ言えるのは、たとえアトピー体質であっても、発症しにくい環境作りは予防策として大切である、ということでしょう。
アトピーに関する遺伝子研究によると、アトピーの感受性には複数の遺伝子がかかわり、それらが複雑に作用しあって、アトピー感受性を決定しているようです。
現在、そのなかの8つの遺伝子を検査してアトピーの発症リスクをみていく「遺伝子検査」もすすめられているとのことです。
この分野は飛躍的に発展を遂げようとする過程にありますので、将来、もっといろいろなことが解明されるでしょう。
患者数が増加傾向である点からも、今後の研究成果が心待ちにされる分野です。
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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