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デジタル改革は意識改革から!デジタルイノベーションが進まぬ会社の問題点とは

2018-06-22 12:00:35

最近、上司から、突然「ITを活かした新事業を開拓してほしい」などと言われたことはありませんか? 特に具体的なビジョンなどの指示はなく、さらに会社からは失敗はしないように!とも言われ(どうすればいいのだろう…?)とお困りの方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、日本企業に必要とされる「デジタルイノベーションによる新たな価値創出」とその現状について、5月18日(金)に開催された富士通フォーラム2018のカンファレンスにおいて討論された模様を紹介します。

登壇したのは、株式会社フィラメント(Filament, Inc.)の角勝氏を進行役に、三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 統括の光村圭一郎氏、日経BP総研 イノベーションICTラボ所長の星野友彦氏、そして、富士通株式会社  デジタルフロント事業本部の武田英裕氏ら。デジタルイノベーションの最先端で活躍する4名が、それぞれの立場と経験から語りました。

既存のビジネスだけでは、新しいデジタルビジネスに飲み込まれてしまい、企業は生き残れない時代。理解はしているけれど、いっこうに進まない社内のデジタル新事業…その原因と対策に悩む方、必読です!

インハウス・エンジニアが少ない日本企業

なぜ、今「新たな価値創出」が必要なのか。その背景には「テクノロジーの発展」による「市場の変化」があげられます。

「今や、秋葉原に行けば10テラバイトのストレージが2万円で買えて、移動通信が5Gになろうかという時代。情報のデジタル化は、分解、分析、コピーできるチカラを加速させ、数十年足らずで一気にこの世の中の理を変えた」と星野氏が切り出すと、武田氏は「2015年くらいから、AWSなどのサービスやクラウドを使うことが普及し、仮想サーバー・運用環境・開発環境をセット契約しさえすれば、誰でも作りたいものだけを手軽に作れてしまうようになった。そのような環境下で我々エンジニアは、お客様と一緒になって価値を創造しなければ社会にインパクトを与えられない」と、ベンダーはシステムを作るだけでなく、お客さまとタッグを組み、目指す方向性を一緒になって模索できる二人三脚の開発に取り組む必要があると、共創事業のさらなる加速の必要性を訴えました。

富士通が共創事業 ― すなわちデジタルフロント事業部の立ち上げに力を入れる背景について、星野氏は、米国では65%のエンジニアが一般企業に在籍する一方、日本はエンジニアの72%がベンダー企業に在籍することを理由にあげ、日本企業の多くは、企業内に在籍するデジタルエンジニアが少なく、ICTの活用や実証実験などアイディアをカタチにできる人が少ないため、新規事業に着手するスピードが遅くなってしまうことを問題点として挙げました。

かけ声ばかり…いっこうに進まぬ我社のデジタル変革

しかし、例え企業側から相談を受けたとしても結果に結びつかないことも多く、武田氏自身の体験から「案件の自然消滅パターン」が紹介されました。

1 会社の経営層が海外視察に行き、ITもって帰国してくる。「我社はどうなってる?」と、にわかにタスクフォースやデジタルイノベーション立ち上げ部隊を設立。キーワードはAIとIoTという新規事業の命令だけ受け、ゴールが定まらない中“もやッ”とした状況で担当者は相談に来る。

2 そこで、担当者にアイディアを伝えざっくりと提案。担当者が自社に戻って組織トップに話すと「対価に見合った価値があるのか?」と聞かれてしまう。新規事業なのだからトライ&エラーは必要では?とこちらから確認してみると「やったら100億、1000億のマーケットになるの?」と言われる。やるか、やらないかの前に、拡大フェーズされては、新規事業担当者ではどうすることもできずに提案の検討が一旦、自然消滅のようになる。

3 しかし検討は続いたようで半年後くらいに「とりあえず、意欲があって好奇心のある技術者や人材を貸してほしい」などと新たなリクエストを言いだす。(エンジニアの目線で考えてもらえれば、良いアイディアが出るかも知れない…)ということだと思うが、これはコンプライアンス違反。もし、その企業の担当者に、強い想いと突破力があるのならプレ作業というかたちでお手伝いもできるが、担当者は会社から言われただけなので、そこまでの熱量もない。

「新たな価値創出」を阻む2つの要素

企業で新たな価値創出が進まない要因として、角氏は、組織がガバナンスを効かせすぎることでおこる「オーバーガバナンスシンドローム」。また、個人においては、一定方向の流れに逆らえない「慣性バイアス」の2つを挙げ説明しました。

「日本人は一定方向に努力し続けるのは得意。柔道とか茶道とか“道”をつくり、それを継承することを最上の美徳とするところがある。これが、かえって心を縛り、環境の変化に対応してゆくのを難しくしている気がします。“前例がなくリスキーだ”と阻む、組織の“善意あるおせっかい”は新しい挑戦を止めてしまう」と角氏。

光村氏は、「既存事業の利益を保つために省エネやコスト削減などは必要なことだから誰も反対しない。しかし確信のもてない新規事業となると頭の良い人ほどリスクを考え避けてしまう。まさに「慣性バイアス」が働いた状態」と話し、星野氏は「日本は世界で最もリスクを嫌がる国だといわれています。ハイコンテクストな文化といわれる日本の風土では、あ・うんの呼吸で意志疎通ができるところがあり、リスクを取ってでも意志表示をする必要を感じないのかも」と民族性をも示唆しました。

優れたイントレプレナーの3要素

光村氏は、閉塞的な組織のなかでイノベーションをおこすためには、社内起業家=イントレプレナーが必要だと提言します。

三井不動産では、商品企画が多くテクノロジーそのものの開発は行っていません。出来上がっている技術だけをフォローするだけでは遅れをとるという危機感から、光村氏が指揮をとり、オープンイノベーションの起点となる共創の場「baseQ」(東京ミッドタウン日比谷)を運営。イントレプレナーを育てて支援しています。

光村氏は、イントレプレナーの大切な要素として「ビジョン」「ダイバーシティ」「コミット」の3つをあげ、アイディアを実現するために、どのように会社のリソース利用して目的に近づくか、自分なりのフルビジョンを構築するチカラ。また、固定的なコミュニティに留まるのでなく、常に多様な価値観に触れて刺激を得る柔軟性。そして、何よりも“やりきれる実行力”が大切であり、障害や失敗にすぐ心が折れてしまうようでは難しいと話します。

チャレンジを許容する姿勢が大切

では、優れたイントレプレナーを育てる環境とはどのようなものでしょうか?

富士通では、2013年あたりから武田氏が推進する「ハッカソン」を定期的に開催しており、社内の各組織を横断する部門を設け、外部からゲストを招き意見交換やアイディアをカタチにするためのオープンイノベーションを行なっています。通常の業務とは違い「ハッカソン」で生まれたアイディアは、各々のグループや個人が自由に試行錯誤でき、課題に対して従来の枠にとらわれない挑戦がきます。

「提案依頼書を通さずとも、「こんなシステムを作ったのですが、面白がってもらえますか?」とお客様に提案できる。仮に提案が通らなくても「もうちょっと良いの考えてみてください」と期待を込められると、やる気にもつながる。このような、風通しのよい環境がイントレプレナーを育てる場になるのでは?」と武田氏は示唆し、実際に「アイディアソン・ハッカソン」から誕生したアイディアを叩きなおしたものが、いくつかソリューションになって世にでているそうです。

新たな取り組みに必要な3つの要素

最後に、新たな価値創出のために個人と組織に求められることは、以下の3要素であり、さらに企業内で事業の適切な仕分けが必要という、当たり前だけれども意外に出来ていない問題点が挙げられました。

  • 担当者の強い想い、突破力。
  • 担当者をサポートしてくれる組織。
  • 活動を応援してくれるトップ

角氏は「新規事業と既存事業、その両立が大切なんです。売上のほとんどは既存事業がもっていますから疎かにはできません。でも未来において利益が回り続けるかどうかは分らない。新規事業は、企業が“最先端”というエッジを掴み続けリフレーム・アップデートしてゆくためのものとポジテイブに捉えてほしい」とし、全員に100億の売上げを求めるのでなく、KPIや学びの量をどう評価するか考えるべきと提案。

光村氏は「肉と野菜切るときに包丁を変えるでしょう?。それと同じで、新規事業と既存事業を、同じ軸・制度・システム・価値観で運用しようとしてはいけない。逆に、新規事業にいきなり人を集めると失敗することもある。それぞれ、部門別に役割があり、どれが欠けても新しい価値は誕生しない。社内の誰もがイノベーション事業の本質まで理解できなくてもいい。でも、誰かが新しい挑戦をしようとする時に、失敗したらどうする?と足を引っ張ることをやめるべき。「見ててやるから頑張ってみろ」という上司の一言があるだけで、そのチャレンジは仕事として可能性を広げることができる」

星野氏は「SoRとSoEは両立させなければならない。人はぞれぞれ発想、特性、向上心が違う。適材適所で新しい組織形態も模索すべき。全社で目指す方向さえ一致していれば良いと思います」と光村氏の意見に賛同しました。

最後に武田氏は「もし、会社内で相談相手がおらず、独りで心もとなげれば外部の誰かを頼ればいいと思う。光村さんの運営する「baseQ」をはじめ、あなたの想いを手助けしてくれる場がありますから」と、次の価値を創出する勇気と自信を持ってほしいと訴えました。

写真)ディスカッションと同時進行で描かれた「グラフィック・カタリスト・ビオトープ」。これも富士通が誇る素晴らしい技術・才能のひとつ。後で見てもなるほど!と良く分る。

情報提供元: マガジンサミット

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