
「運命の1日」とも呼ばれるプロ野球ドラフト会議が、23日に行われる。今年のドラフトの目玉、創価大の立石正広内野手(21)は、大学通算15本塁打、2年の春には東京新大学リーグで三冠王を獲得し、昨年から2年連続で大学日本代表にも選出された、大学球界屈指のスラッガーだ。すでに広島が1位指名を公言し、競合必至の逸材は「スイングの強さには自信がある。どこの方向に対しても長打やホームランを打てるコンタクト能力が一番の長所ではあります」と、自身の強みを語る。
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バレーボール一家に生まれて
ドラフトでの注目の的となった立石だが、実は“バレーボール一家”に生まれた。父・和広さんは、強豪の宇部商(山口)や法政大でプレー。母・郁代さん(旧姓・苗村)は、バレーボール日本代表として1992年のバルセロナオリンピック™に出場した経歴を持つ。姉の沙樹さん(29)はリガーレ仙台(V.LEAGUE)、優華さん(26)はクインシーズ刈谷(SV.LEAGUE)でプレーする現役のバレーボール選手で立石自身も幼い頃から母親の練習について行ったり、姉の春高バレーを観戦に行くなど、バレーボールに親しんできた。今では現役選手の姉2人とプロテインやトレーニングの情報交換も行っている。
そんななか立石が野球を始めたのは、父・和広さんのある思いからだという。「小学校の頃から野球をやっていて、プロ野球選手になりたいという思いがあった。背が高くて周囲の勧めもありバレーボールをやるようになったが、あのまま続けていたらどうなっていたかとか考えたこともある」。父の思いを知っていたのか、立石少年は「パパは俺に野球をしてほしいんじゃろ?」と言ったという。和広さんはその言葉が「うれしかった」と振り返る。
小学1年生の時に地元・山口の華浦スポーツ少年団に入団した立石。主にセンターと2番手投手を務め、6年時には県大会にも出場。肩が強くセンターゴロをアウトにしたこともあった。当時のコーチによると、食が細く乗り物酔いもする子だったが、バネのある走りと運動能力は高く、両親譲りの運動神経が感じられた、という。
野球にのめり込んだ立石は、私立の強豪で中高一貫校の高川学園(山口)に進学し、中学から硬式でプレー。高校では1年から起用され、2年の夏はコロナ禍で全国大会が中止になったが、山口県の独自大会で優勝。3年夏には甲子園に出場し、1回戦の小松大谷(石川)戦でバックスクリーンにホームランを放った。中高の6年間、父は駅まで毎日送迎し、母は朝4時から弁当を作り息子を応援した。
母・郁代さんは、バレーボール選手だった現役時代の話をほとんどしなかったが、立石は自身の野球のレベルが上がっていくにつれて、母親の凄さが分かってきたという。「お母さんがバレーの極みを求め続けてやってきた人なので、負けたくないじゃないですけど、自分も野球でやり続けた姿を見せたいっていうのはありますね」。
ひとり異なる道へと進んだが、日本代表の試合はハイライトでチェックするほど、バレーボール好きであることに変わりはない。今年7月には、バレーボールの世界三大大会のひとつ、ネーションズリーグ男子の日本対アメリカの試合を生観戦した。
「やっぱり石川(祐希)選手カッコいいですね」。大観衆の中、必死にプレーする石川祐希(29)や髙橋藍(24)の姿に刺激を受け、「大人数の中でプレーするのは幸せですし、自分もプロ野球選手になれれば、毎日いろんなファンの方が来てくれる中でプレーできるので、そういう環境でやりたいなっていう気持ちは一層増しました」。
座右の銘は「恩返し」
そんな立石の座右の銘は、「恩返し」だという。
「(恩返しは)一番大事で忘れがちなこと。一番は親をイメージして考えてますね、その言葉は。(直接言うのは)恥ずかしいので、そういう所(公の場)で言っといた方が親にも伝わるかなと思って。自分が(プロ野球選手として)いろんなテレビに出たり、近くのマツダスタジアム(広島)やペイペイドーム(福岡)に行ったら、楽しめるじゃないですけど、いろんな試合を見られたら、楽しくこれからも過ごしてくれるんじゃないかな」
バレーボール一家を巣立ち、プロ野球の道へ。「今は不安もあるけど楽しみに待っています」。支え続けてくれた父、母、姉たち、家族への思いも胸に、立石は「運命の1日」に臨む。
■立石正広(たていし・まさひろ)
2003 年11月1日生まれ、山口県防府市出身。右投右打。身長180cm、体重85kg。高川学園高3年で夏の甲子園に出場し本塁打を放った。創価大進学後、2年春には三冠王獲得。 ベストナイン4度、本塁打王・最多打点3度、首位打者を2度獲得した。
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