E START

E START トップページ > スポーツ > ニュース > 【卓球】「初めて『やりたくない』と言った」元全日本王者・宇田幸矢を救った父の言葉 苦難の4年を経て掴んだ世界への切符

【卓球】「初めて『やりたくない』と言った」元全日本王者・宇田幸矢を救った父の言葉 苦難の4年を経て掴んだ世界への切符

スポーツ
2026-03-17 14:54

今年2月に行われた世界卓球選手権(団体戦)の代表選考会で優勝し、アジア大会団体代表にも内定した卓球の宇田幸矢(24、協和キリン)。4歳でラケットを握り、各世代の頂点を走り続け、高校3年生で全日本選手権を制覇、若くして日本王者となった。しかしその直後の3月に腰を負傷。そこから大学4年間は、怪我と向き合う過酷な日々を過ごした。
練習すらままならない中、挑んだパリ五輪代表選考会。思うような結果を残せず、五輪への道が断たれた時、「初めて卓球をやりたくないと言った」という。絶望の淵にいた彼を救ったのは、父・直充さんの「お父さんのために戦ってほしい」という意外な一言だった。その言葉を胸に再起した宇田は、再び日の丸を背負う切符を掴み取った。家族の夢を力に変え、試練を乗り越えたサウスポーの覚悟を聞いた。


【写真で見る】宇田選手の幼少期、父・直充さんとの2ショット


「父の退職」不退転の決意で歩んだ師弟の道

今年2月、2026年世界卓球選手権ロンドン大会(団体戦)の代表選考会。決勝のコートに立っていたのは、かつての全日本王者・宇田幸矢だった。対するは、昨年16歳で世界ユースを制した超新星・川上流星。世代交代の波が押し寄せる中、宇田は執念の勝利で代表の座を奪い取った。


「本当に強い選手ばかりが集まり、一人しか枠がない中で勝ち切ることができた。ほっとしていますが、ここからがスタート。もう走り出したい気持ちです」


晴れやかな表情の裏には、怪我に泣き、ラケットを置くことさえ考えた「苦悩の4年間」があった。


宇田の卓球人生の原点は、父・直充さんの存在だ。
学生時代卓球に励んでいたが目立った結果を残せなかった直充さんは夢を息子に託し、宇田が中学3年生の時に、指導に専念するため大手化粧品会社を退職するという大きな決断を下した。「息子がうまくいかなかった時、絶対に後悔したくなかった」。その覚悟が、4歳から白球を追ってきた宇田を世界の舞台へと押し上げた。


そして2020年1月の全日本選手権。宇田は張本智和を破り、高校3年生で日本一に輝いた。この経験が卓球人生の大きなターニングポイントとなった。


「(2020年の全日本選手権を優勝して)今までは挑戦していくっていうのが100%だったんですけど、優勝してからは「負けられない」と考えさせられる日々がスタートした」


しかし、日本王者としての自覚が芽生えた直後、運命の歯車が狂い始める。


絶望の底で吐露した本音

同年3月に腰を負傷。大学4年間は、常に痛みとの戦いだった。練習すらままならない日々が続き、挑んだパリ五輪代表選考会。代表への道が絶望的となった時、宇田は初めて父に、心に秘めていた痛切な本音をぶつけた。


「パリに行けないと決まった時、プチンと何かが切れちゃって。『戦うのがきつい、練習もできない、どこを目指せばいいか分からない』と。初めて『卓球をやりたくない』と言いました。『自分一人のためには、もう頑張れない。モチベーションが作れない』と」


出口の見えないトンネル。モチベーションの糸が切れた息子に対し、父・直充さんは意外な言葉を投げかけた。


宇田を救った父の言葉

「お父さんのために、戦ってほしい」


この言葉に父・直充さんはどのような思いを込めたのか。


「自分のために頑張るのには、どうしても限界が来ます。色々な激励をしても彼に届いていないと感じた時、最後に出たのがあの言葉でした。何でもいいから、もう一度だけ『頑張る』と言ってほしかった」


父の思いがけない言葉に宇田は「マジか」と驚いた。だが、その言葉が「自分のため」に頑張る限界を迎えていた心に、新たな火を灯した。


「宇田家は祖父の代から卓球一家。家族の代表として夢を見せられるのは自分しかいない。そう思えたことで、もう一度頑張ることができた」


ただ息子の火を消したくない一心で絞り出した「父の願い」。「まさかそれが本人に一番響いていたとは、今の今まで知らなかったのですが(笑)」照れくさそうに笑う父の言葉が、折れかけていた王者の心を、再び戦いの舞台へと押し戻した。


意外なリフレッシュ法

父の想いを背負い、再び過酷な勝負の世界へと身を投じた宇田。張り詰めた心を解きほぐすため、リフレッシュの時間は「静寂」を求めている。


「最近、富士山を見に行きました。近くまで行ってパワーをもらってきました。サウナで『無』になるのも大好きです。普段ずっと体を動かしているので、違うスポーツとかするっていうよりかは、割とぼーっとしながらのんびり過ごすのが最近は好きですね」


苦難の4年間を乗り越え、ついに掴み取った世界への切符。2026年4月に開幕する世界選手権ロンドン大会に向け、宇田は「個」の勝利だけでなく、日本代表という「組織」の勝利を見据えている。


「久しぶりの代表権を獲得することができて、チーム戦になるので、その瞬間、その瞬間で自分の役割っていうのは変わってきたりもすると思うので、チームしっかり土台となれるようにみんなで戦っていきたいし、コミュニケーションを取って良いチームになれるように頑張りたいです」


アジア大会で家族に見せたい景色

さらにその先には、32年ぶりに日本で開催となる第20回アジア競技大会(愛知・名古屋)が待っている。


「出られる試合はしっかりいいパフォーマンスで迎えたいですし、やはり日本開催なので応援してくれる方々だったり、スポンサーの方々だったり見てると思うので、しっかり自分自身をアピールできるように感謝の気持ちも込めて戦いたいですね」


宇田の歩んできた道は、常に父と、そして家族と共にあった。「自分のため」の限界を超えた先にあったのは、家族の想いを背負って戦うという新たな決意。


「両親は結果よりも「後悔なくとか楽しんでね」って言ってくれると思うんですけど、やっぱりいい結果っていうのを見せたいので、本当に一生懸命頑張りたいです。勝つところを見せたいですね」


彼が今、一番に見せたいのは、支えてくれた人たちが心から笑えるような、最高の結果だ。


■プロフィール
宇田幸矢(協和キリン)2001年8月6日生まれ 東京都・調布市出身
左シェークドライブ型。4歳から卓球を始め、小・中・高のすべての年代で日本一を経験。高校3年生で出場した2020年全日本選手権では張本智和を破り男子シングルス初優勝。東京五輪リザーブ選出、2021年世界卓球ダブルス銅メダルなど、日本男子の主力として活躍。Tリーグやドイツ・ブンデスリーガ1部でもプレーし、世界ランク自己最高位は19位。


「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
【裁判詳細】女子大生2人焼死事故 両親「怒りでどうにかなってしまいそう」「遺体と対面し本当の絶望を知った」追突トラック運転の男「ぼーっとしていた」起訴内容認める 山口
「あんな微罪で死ぬことはないだろう…」逮捕直前にホテルで命を絶った新井将敬 衆院議員「この場に帰って来れないかもしれないけども、最後の言葉に嘘はありませんから」【平成事件史の舞台裏(28)】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ