各地で人の生活圏に出没するクマ。私たちも取材中に遭遇。クマは道路脇の茂みに7秒間たたずみ、走り去りました。周辺の学童クラブではハロウィーンパーティーが急きょ屋内に変更されるなど、生活にも影響が出ています。専門家からは“冬眠しないクマ”出現の可能性が指摘されています。
【写真で見る】“人目が付きにくい”用水路や茂みを移動するクマ
取材中にもクマ ハロウィーンパーティーは屋内に変更
岩手県滝沢市を車で移動中、私たちは道路脇の茂みにいたクマに遭遇しました。
記者
「目の前にクマが現れました。あっ今、山の方に逃げていきました」
映像でクマをとらえたのは7秒。一瞬こちらを向いた後、木が生い茂る方へ去って行きました。
午前中には1キロほど離れた岩手県立大学でもクマが目撃されていました。
学生
「すごく怖いですね。休校になってほしかった」
「クマよけのスプレーとかもあるみたいなので、そういう防御しないといけないなって」
クマが出没した場所の周辺にある学童クラブでは…
学童クラブでの呼びかけ
「学童での対策です。クマが出たときは(学童施設まで)学校の中を通って入ってくる。それと、あとは外にはでないこと」
川前学童保育クラブ 主任支援員 久家真由子さん
「きょうはハロウィーンパーティーで、本当は学童の前にある光の森で(パーティーを)行う予定だった。朝からクマの目撃情報が相次いだため、体育館を急きょ借りて、屋内でパーティーを行った」
クマの影響で、活動や授業などに制限が出ているといいます。子どもたちのランドセルにはクマよけの鈴がついていました。
学童を利用する児童
「登下校の時とか夜は暗いから、結構怖くて気をつけたいと思いました」
保護者
「迎えに来るようにって案内はありました。やっぱり登下校の時に(クマに)あったりすると怖いだろうなと思うので」
岩手県雫石町では、公民館の防犯カメラにクマの姿が映っていました。クマは入り口の自動ドアに前足をかけ、その後、去りました。
“クマ対策”8つの省庁の役割は? 初の「関係閣僚会議」
各地で人の生活圏にクマが現れる中、30日、国をあげてクマ対策を話し合う関係閣僚会議が初めて行われました。
木原稔 官房長官
「死者数は本日までに12名となり、国民の安全安心を脅かす深刻な事態です」
会議には、環境省・防衛省など8つの省庁が参加しています。
石原宏高 環境大臣
「最新のデータでは、北海道に住むヒグマは約1万2000頭。本州四国に生息するツキノワグマは約4万2000頭以上と推定されています。科学的データに基づく個体数の適切な捕獲強化や人材確保、新技術の活用といった三段階で取り組みを強化する」
会議に参加した文科省は全国の教育委員会などに対し、学校でのクマ対策に関する通知を出しました。
「学校のごみ集積所に鍵をかける」、「後ずさりしながら離れる」「大声を出したり、石を投げたりしない」など具体的な対策を示し、注意喚起を行っています。
防衛省も会議に参加しました。
小泉進次郎 防衛大臣
「本日午前、秋田駐屯地で秋田県庁や猟友会とともに、箱罠の運搬等に関する訓練を実施しました」
陸上自衛隊・秋田駐屯地の自衛隊員約130人は、秋田県からの派遣要請を受け準備を進めています。
市街地に出没 河川が移動ルートに
クマの行動で気になるのは、都市部での出没です。盛岡市では銀行や大学でクマが目撃されています。先週も中心街にクマが姿を現しました。
そもそも人間を怖がる、避けると言われるクマが、なぜ町中に現れるのか。クマ対策の閣僚会議で金子国交大臣は…
金子恭之 国土交通大臣
「河川はクマが人の生活圏に侵入する移動ルートとなっている可能性が指摘されている。国土交通省では、河川におけるクマ被害対策の支援を行っております」
記者(札幌市・2021年)
「用水路をクマが歩いています」
2021年、札幌市の用水路にクマが現れました。このクマは数時間前に住宅街で男女4人を襲撃。クマは人目が付きにくい用水路や河川敷、茂みなどに入り、隠れながら移動する傾向があるといいます。
木原長官は30日、住宅街などに侵入してきたクマに対して、自治体の判断で発砲を可能とする「緊急銃猟」を拡大し、警察官や狩猟免許を持つ公務員が速やかな駆除に協力できる体制をとれるよう指示。関係省庁に、緊急のクマ対策パッケージを11月中旬までにとりまとめるよう求めました。
エサがあれば…“冬眠しないクマ”出現の可能性
今後はクマにとって冬眠の時期になりますが、専門家は引き続き警戒が必要だと考えています。
岩手大学農学部 山内貴義 准教授
「今年は冬になってもなかなか冬眠に入らなくて、(冬も)町中に出没する個体が出てくる可能性が考えられる」
本来クマは体にエネルギーを蓄え、森でエサが取れなくなる12月前後から春まで冬眠に入るとされています。しかし、もしも継続的にエサにありつくことができたら…
動物園にいる8歳のツキノワグマは、飼育されてエサを十分に食べるようになってから1度も冬眠していないそうです。
1度に与えられるエサの量は3.5キロ前後。サツマイモやドングリなど脂質や糖質が多いものを食べています。
ツキノワグマ飼育員 笹井恵さん
「1日に必要なエネルギーを摂取できれば、冬眠しなくても生きていくことはできます」
ーーQ.都市部でエサを見つけられれば、冬眠しないクマも?
「定期的にエサが食べられて体調に問題が無ければ、冬眠をしなくても過ごせてしまうクマも出てくるかもしれないですね」
2024年、福島県では冬眠シーズンのはずの12月末にクマが住宅に侵入しました。町の中でも冬場でも、クマと人間の距離が近づいています。
岩手大学農学部 山内貴義 准教授
「改善する見込みが今のところない。都市部に集まっている状況が目に見える。今後こういったことがどんどん続いていくんじゃないか」
「精緻なデータ」と「予算の投入」を クマとの向き合い
小川彩佳キャスター:
冬眠しないクマが増える可能性も考えられるということですが、様々な懸念が浮かび上がりますね。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
気候変動の影響もあると思います。
環境省のデータを見ると、個体数は増えているが、エサとなるドングリなどが不作で減っていて、その分“アーバンベア化”しているようですね。
エサが減っていたら個体数も減りそうですし、山ごとに状況も違うと思うので、もっと科学的なデータがしっかり集まって、対策が練られるといいなと思います。
小川彩佳キャスター:
今起きている被害を広げないために、即時の対応も必要ですし、同時に長期的な目線で対応をしていかなければなりませんね。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
やはり地方の人口減少や、里山がなくなったり、漁師が高齢化したり、気候変動など色々な条件がある中で、これを猟友会・民間に任せ続けるのは限界があると思います。
行政主体の公務員ハンターを養成したり、野生動物管理学と呼ばれる専門家の養成をしたり、もっと本格的な対策をしていく必要があると思います。
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
著書『人新世の「資本論」』
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