国内
2025-12-20 12:00
12月31日開催の『Yogibo presents RIZIN師走の超強者祭り』(さいたまスーパーアリーナ)で、神龍誠との対戦が決定したヒロヤ。7月のフライ級GP1回戦で元谷友貴に敗れてからの再起戦で、同じくGP準決勝で元谷に敗れた神龍とは、まさにサバイバルマッチとなる。
【インタビュー動画】ヒロヤ「負けたからこそ新しい自分を見つけられた」大みそか神龍誠戦への覚悟
キャリア・戦績では格上と見られる神龍との試合となるが、先日の公開練習でヒロヤは神龍に勝っている点を聞かれると「それは試合で証明したい。やってみないとわからない」と静かに自信をにじませた。RIZIN榊原信行CEOが「フライ級新世代のサバイバルマッチ」と期待を寄せるこの試合に向けて、アメリカ修行の成果を発揮すべく日本で追い込んでいるヒロヤに、オリコンニュースはじっくりと話を聞くことができた。
■進化するベテラン・元谷友貴に敗れて掴んだ「心の強さと嗅覚」
――試合まで3週間を切りましたが、この時期はどんな練習をされていますか?(取材日は12月12日)
【ヒロヤ】僕は試合の1週間くらい前までバンバン練習をやって追い込むので、ギリギリまで対人練習をやって、1週間前から疲れを抜きながら水抜きしていきます。だから、今はけっこう疲れが溜まってる時期だったんですけど、今日は朝から伊澤星花選手のジムに出稽古に行かせてもらって、そこで練習してたら疲労が抜けていい感じに回復してきました。その後はウエイトトレーニングをやって、この取材が終わったら走ってきます。
――東京はかなり寒いですけど、夏と冬はどちらが得意ですか?
【ヒロヤ】僕は両方とも好きですね。それぞれの季節の良さもあるし、温度もあんまり気にしないです。
――7月の元谷友貴選手との試合後、またアメリカで練習されていたんですよね?
【ヒロヤ】はい、試合が終わってすぐの8月から10月末まで行ってました。アメリカでのスケジュールも慣れてきたので、日本とアメリカのどっちが自分の拠点かわからない感じです(笑)。アメリカではビリーと練習してましたが、今回の試合のセコンドはちょっと事情があって難しいみたいです。
――RIZINのビッグマッチに欠かせないヒロヤ選手ですが、大みそか大会は2023年の新井丈戦以来、今年が2回目です。
【ヒロヤ】去年は篠塚(辰樹)にリング上から喧嘩を売られたぐらいで、試合ぐらいインパクトあったみたいですけど(笑)。やっぱり大みそかに戦えるのは誇らしいですし、夢の舞台って感じですよね。普通の大会とはぜんぜん違うし、しかもRIZINの10周年という大会は、本当に選ばれたファイターしか出ることができないのですごくうれしいです。
――大みそかの試合の前に、前回の元谷戦についてもお伺いしたいです。判定で敗れたあの一戦、改めて振り返ってどんな試合でしたか?
【ヒロヤ】約半年が経って振り返ってみると、自分にとって得られたものがすごく大きい試合だったと思います。これまでに勝った試合も負けた試合もたくさんありましたが、久々にフルマークの判定負けで、今の自分の課題であるとか足りない部分が見えた試合でした。それと同時に、自分がもうすぐトップ戦線に行けると確信した試合でもあり、本当にマイナスもプラスも得られるものが大きかったと感じています。
――今は冷静に分析されていますが、優勝を目指していたフライ級グランプリの1回戦で敗退だったので、試合直後はかなり落ち込んだのでは?
【ヒロヤ】そうですね、負けた直後は本当にドーンって落ち込んだし、格闘技って甘くないなって思えたというか、RIZINデビュー戦みたいな気持ちになりました。「そりゃそうだよな」って、そんなに簡単に勝ち上がれる世界ではないので。でも、元谷選手と戦えた部分も確実にあったし、元谷さんがグランプリを勝ち上がっていくことで「俺が弱いから負けたわけじゃなく、やっぱり強い選手だったんだ」って確認できたことで自分の自信にもなって。そういう意味で、初戦で負けましたけど“いい相手”に負けたのかなと思います。
――試合直後の会見では「自分みたいな凡人は2倍、3倍、10倍やっていかないといけない」と語っていました。実際に元谷戦から今日まで、それくらいやってきた手応えはありますか?
【ヒロヤ】それだけやってきましたし、自分はどこにいても一番下からやっていくタイプだったんで。地元でセミプロみたいな試合に出てた時は、DEEPやパンクラスに出場していたプロ選手と練習して、JTTに入ってからはRIZINに出ている選手と練習して、今はアメリカでUFCファイターと練習して。そうやってたくさん経験して、今は習うことも大事だけど自分の感覚とか経験したものの価値を自分で見つけていく段階です。信頼できるコーチのアドバイスを全て聞くことも大事ですけど、そのなかで自分の嗅覚をもうちょっと大事にして、その上で「絶対に勝つ」という強い気持ちがないとトップファイターに勝つことは難しいと、元谷選手との試合で感じました。例えば、RIZINでは1ヶ月未満で試合が決まることもあるので、それでも勝っていくにはその嗅覚が自分にとって今一番必要なんじゃないかって気づくことができて、新しい自分を見つけられた半年だったと思います。
――元谷選手に敗れたことでいろいろな発見があったんですね。
【ヒロヤ】どの選択も自分がして、どの責任も自分が負う。そんな戦い方ができるようになった。強い心ができたというか、自分の土台ができてきた感覚です。技術だけじゃなく心の強さ、やっぱりそれがめちゃくちゃ大事だと気づくことができました。
■“格闘エリート”神龍誠に「アメリカで学んだトータルMMAで勝利する」
――大みそかで対戦する神龍選手とは、いつか試合をする考えはありましたか?
【ヒロヤ】2026年の後半で当たるかなって、なんとなく思ってました。RIZINフライ級の若手の中でトップを走っていた選手で、自分も上がっていく中で戦うだろうと考えていましたが、いろんな流れがあってタイミングが早まったなって感じです。
――神龍誠というファイターの印象は?
【ヒロヤ】格闘エリートって感じです。自分より若くて、10代からずっと格闘技だけをやって生きてきた選手なので尊敬していますし、フライ級の顔というか頭一つ抜けてるファイターだと思っています。
――試合決定のタイミングで神龍選手のATT所属も発表されました。
【ヒロヤ】自分も2年前の大みそか大会の直後からアメリカに行って、2年くらい練習をやってきたので、アメリカでの生活の状況とか心境とか、一番わかる立場なのかなって思います。その中でもATTって素晴らしいジムで優秀な指導者もフライ級のすごいファイターも揃っていて、さらに伸びていくっていうタイミングの神龍選手と試合ができるのは、俺にとってもプラスになります。
――この試合が発表された配信特番で、ヒロヤ選手は「打撃や組みの単体じゃなく、MMAで戦わないといけない」とおっしゃっていました。この言葉の意味をもう少し噛み砕いて教えていただけますか?
【ヒロヤ】日本とアメリカの差という訳じゃないですけど、僕は日本人って一つのことをやるとすごく強いと思っていて、レスリングや柔道、空手などの競技ではオリンピックでメダルを取るなど結果を残していますよね。頭が良いし、一つのことにこだわるからそこまで極められる。でも、MMAはすべての技術を使って“格闘IQ”で相手を倒す競技だし、際の変化のところで切り替えられないのかなと。レスリングが得意な選手が打撃で劣勢になった時に、客観的に分析してグラップリングに行くのか、テイクダウンを狙って1回立たせてから打撃に行くのか、シチュエーションに合わせて変えていくことが大事なんです。アメリカのMMAはトータルで勝つことを大事にしていて、グラップリングで攻めるだけじゃなく「立つのか、極めにいくのか」っていう展開を作っていく。それがMMAで戦うということ。打撃で攻められたら打撃で戦うんじゃなく、自分の強い展開に持っていくのが大事なんです。
――状況に合わせて判断して、相手のペースにならないように展開を作っていく。
【ヒロヤ】そうです。際で戦うというのは、自分の強みにこだわりすぎないで、頭で考えるのも大事だし、考える前に体を動かせるように染み込ませるのも大事。自分が練習でやってきたこと以上のものは試合では出せないので、染み込ませるためにはひたすら練習のみです。だからこそ、MMAの練習ってめちゃくちゃやることが多いし、相手によって対策も変わってくる。それが大変なんですけど楽しいんですよね。ボクシングだとボクシングを極めてる人には絶対に勝てないけど、対戦相手と差があるって言われても格闘IQで勝てるのがMMAなんです。
■高い志の仲間と切磋琢磨の日々 プロ野球選手との交流で感じたプロアスリートの自覚
――試合が発表された特番の終了後、高木凌選手と一緒にラントレしていましたが、普段から練習していますか?
【ヒロヤ】高木くんはアメリカで一緒に練習してだいぶ仲良くなって、昨日もダッシュしてサウナに行きました。サウナでもずっと格闘技の話とか、減量中だから試合が終わったらあれを食べに行こうよとか、RIZINに出れると思ったのはいつ?って話をしてました。格闘技に対する考えとか姿勢もめっちゃ近いし、RIZINに出るまでの道のりはかなり違うけど、そんな2人がRIZINで交わるのって面白いですよね。大みそかも一緒に出たかったです。
――また2人でアメリカで練習する可能性もありますか?
【ヒロヤ】行きたいですね。日本人と一緒に行ってたほうが「いまの練習はこういうことだよね」って落とし込みやすいし、自分以外の視点で見た人とフィードバックすることも大事だと思いますし。高木くんとアメリカに行ってた時も「俺はこう思うけど高木くんはどう思う?」って話ばっかりしていました。アメリカもいいけど、高木くんにはJTTにも練習に来てほしいですね。
――先日はヒロヤ選手ファンというプロ野球・千葉ロッテマリーンズの山口航輝選手と山本大斗選手と交流されていました(YouTube「千葉ロッテマリーンズ公式チャンネル」で公開中)。2人ともすごくうれしそうでしたが、同じプロアスリートから応援されてヒロヤ選手もモチベーションが上がったのでは?
【ヒロヤ】僕もすごくうれしかったですね。プロ野球選手の方と初めてお会いしたのですが、お話を伺うと野球ってすごいなって思いました。シーズン中はほぼ毎日試合があるって、めっちゃキツイですよね。そんなすごい頑張っているアスリートがいるんだから、俺も頑張ろうっていうのは、お互いに思えたんじゃないですか。それに、アスリートの方に「ファンです」って言っていただいて、自分もプロアスリートとして見ていただくことを意識しながら、格闘家としてやっていきたいって改めて思えました。RIZINに出ることで自分の成長を感じられるし、人生もどんどん成長するというか何かを刻んでいるような、自分が作られていく感覚もあります。
――ヒロヤ選手がアスリートから応援されている姿を見ると、我々もうれしいですね。さて、改めて大みそか大会についての話題に戻ります。10周年を締めくくる大会として豪華カードが並んでいますが、ご自身の試合以外で注目している対戦は?
【ヒロヤ】全部が気になる豪華な試合しかないですが、どれか一つを挙げるならやっぱり2年前からのドラマがある「篠塚辰樹vs.冨澤大智」です。自分は大智と友達なのでもちろん応援していますが、篠塚選手も対戦しているので頑張ってほしいという気持ちもある。両者と関係性があるので、いい試合になってくれたらベストだと思います。
――冨澤選手とは練習動画も公開されていましたが、篠塚選手対策は伝授されましたか?
【ヒロヤ】大智とは週に2回練習していて、ある程度の対策とか話しましたけど、彼はストライカーで自分みたいにグラップリングでガンガン攻めるタイプじゃないから、自分と同じ作戦だとガス欠をしちゃうかもしれない。だからアドバイスできることは限られていますけど、自分も彼から学ぶことが多いのでお互いに意見交換して成長を実感しながら練習しています。
――まさに格闘IQを使って自分なりの戦いができるか、が大事ということですね。
【ヒロヤ】そうですね。でも、本当に楽しみな試合です。大智は1回目にあんだけ派手にやられてるんで、絶対に死んでも勝ちたいからこの試合のためにMMAをやってきたという覚悟があると思います。篠塚選手も自分に負けて2連敗になったら厳しいし、お互いに負けられないからこそ、盛り上がる試合になります。
■ベルトを見据えて大みそかに爆発宣言!「物語とドラマがあるのは自分」
――大みそかにはヒロヤ選手も参加したフライ級GP決勝の「扇久保博正vs.元谷友貴」も行われます。
【ヒロヤ】この試合はどっちが勝つか、本当にわからないですね。元谷選手の強さは身を持って知っているけど、扇久保選手ってめっちゃ強いじゃないですか。普通に考えたら扇久保選手が勝つだろうって思うけど、元谷選手の最近の戦い方が変わり始めていて、神龍選手を倒した勢いで自信が確信になってきてるんじゃないかな。アメリカに行って1年くらい経って順応してくるタイミングでしょうし、元谷選手が自分で戦い方を見つけてきてるだろうって考えると、扇久保選手の負けが想像できなかったけど、元谷選手の勝率がどんどん上がってきて、いまはフィフティ・フィフティだと思います。
――ヒロヤ選手よりも10歳も上の2人がさらに進化している姿を見て、どんなことを感じますか?
【ヒロヤ】経験の差を俺たちが超えないといけないっていうのは感じていますけど、そう簡単に超えられる壁じゃないっていうこともわかっているし、扇久保選手はかつては(前UFCフライ級王者のアレッシャンドリ・)パントージャにも勝っていて、本当に世界トップクラスだと思います。でも、ここ2~3年が流れが変わるタイミングだと思うし、時代を動かすためにも自分が20代でベルトを巻きたいです。ここまで来たんで、もう行けるところまで行きたいですし、その大会で自分が神龍選手と戦うことになって、この結果でも大きく変わってくると思っています。
――毎回プレッシャーは大きいですが、特に今年はヒロヤ選手にとって背負うものが大きくなりそうです。
【ヒロヤ】試合までにナイーブになったり、いろんな感情が絶対に出てくると思うんですけど、当日には覚悟を持って挑める試合を自分はやってきました。今年の大みそか、物語であったりドラマがあるのは自分かなと思うので。この前までただの不良だった人間が、チャンピオンベルトを考えたり格闘技に対して本気で向き合えるように変わってきて、でも大事なのは大みそかに勝つことがいまの僕には必要なので、それを証明したいです。
――きょうはたっぷりと語っていただき、ありがとうございます。最後に気になることをお伺いしたいのですが、試合発表の特番で朝倉未来さんにアポ無しで電話をして出演してもらいまいたが、後から怒られませんでしたか…?
【ヒロヤ】いや、ぜんぜん怒られてないです(笑)。絶対にそういうことで怒る人じゃないですし、次の日に会って「昨日はありがとうございました」って伝えたら、「…ッス」っていつも通りでした。普段は電話をかけることはないので絶対に出てくれると思っていたし、寝起きでも出てくれてありがたかったです(笑)。未来さんも1番強いチャンピオンのシェイドゥラエフに挑戦して、自分もGP決勝の2人の次に強いと思っている神龍選手に挑むので、まずは自分が大みそかの会場を爆発させますよ!
【動画】神龍誠vs.ヒロヤ、公開練習で静かな火花「違いがわかると思う」
【インタビュー動画】萩原京平との激闘に勝利した秋元強真「萩原選手の打撃は一番強かった」
【画像】ABEMA PPV「朝倉未来応援チケット」の特典、割引キャンペーンの詳細など
【会見動画】朝倉未来「俺は喧嘩しにいく」最強王者シェイドゥラエフと大みそかに対戦
【動画】芦澤竜誠「楽勝でイジめる」ジョリーの姿勢を評価も試合では完封宣言
【インタビュー動画】ヒロヤ「負けたからこそ新しい自分を見つけられた」大みそか神龍誠戦への覚悟
キャリア・戦績では格上と見られる神龍との試合となるが、先日の公開練習でヒロヤは神龍に勝っている点を聞かれると「それは試合で証明したい。やってみないとわからない」と静かに自信をにじませた。RIZIN榊原信行CEOが「フライ級新世代のサバイバルマッチ」と期待を寄せるこの試合に向けて、アメリカ修行の成果を発揮すべく日本で追い込んでいるヒロヤに、オリコンニュースはじっくりと話を聞くことができた。
■進化するベテラン・元谷友貴に敗れて掴んだ「心の強さと嗅覚」
――試合まで3週間を切りましたが、この時期はどんな練習をされていますか?(取材日は12月12日)
【ヒロヤ】僕は試合の1週間くらい前までバンバン練習をやって追い込むので、ギリギリまで対人練習をやって、1週間前から疲れを抜きながら水抜きしていきます。だから、今はけっこう疲れが溜まってる時期だったんですけど、今日は朝から伊澤星花選手のジムに出稽古に行かせてもらって、そこで練習してたら疲労が抜けていい感じに回復してきました。その後はウエイトトレーニングをやって、この取材が終わったら走ってきます。
――東京はかなり寒いですけど、夏と冬はどちらが得意ですか?
【ヒロヤ】僕は両方とも好きですね。それぞれの季節の良さもあるし、温度もあんまり気にしないです。
――7月の元谷友貴選手との試合後、またアメリカで練習されていたんですよね?
【ヒロヤ】はい、試合が終わってすぐの8月から10月末まで行ってました。アメリカでのスケジュールも慣れてきたので、日本とアメリカのどっちが自分の拠点かわからない感じです(笑)。アメリカではビリーと練習してましたが、今回の試合のセコンドはちょっと事情があって難しいみたいです。
――RIZINのビッグマッチに欠かせないヒロヤ選手ですが、大みそか大会は2023年の新井丈戦以来、今年が2回目です。
【ヒロヤ】去年は篠塚(辰樹)にリング上から喧嘩を売られたぐらいで、試合ぐらいインパクトあったみたいですけど(笑)。やっぱり大みそかに戦えるのは誇らしいですし、夢の舞台って感じですよね。普通の大会とはぜんぜん違うし、しかもRIZINの10周年という大会は、本当に選ばれたファイターしか出ることができないのですごくうれしいです。
――大みそかの試合の前に、前回の元谷戦についてもお伺いしたいです。判定で敗れたあの一戦、改めて振り返ってどんな試合でしたか?
【ヒロヤ】約半年が経って振り返ってみると、自分にとって得られたものがすごく大きい試合だったと思います。これまでに勝った試合も負けた試合もたくさんありましたが、久々にフルマークの判定負けで、今の自分の課題であるとか足りない部分が見えた試合でした。それと同時に、自分がもうすぐトップ戦線に行けると確信した試合でもあり、本当にマイナスもプラスも得られるものが大きかったと感じています。
――今は冷静に分析されていますが、優勝を目指していたフライ級グランプリの1回戦で敗退だったので、試合直後はかなり落ち込んだのでは?
【ヒロヤ】そうですね、負けた直後は本当にドーンって落ち込んだし、格闘技って甘くないなって思えたというか、RIZINデビュー戦みたいな気持ちになりました。「そりゃそうだよな」って、そんなに簡単に勝ち上がれる世界ではないので。でも、元谷選手と戦えた部分も確実にあったし、元谷さんがグランプリを勝ち上がっていくことで「俺が弱いから負けたわけじゃなく、やっぱり強い選手だったんだ」って確認できたことで自分の自信にもなって。そういう意味で、初戦で負けましたけど“いい相手”に負けたのかなと思います。
――試合直後の会見では「自分みたいな凡人は2倍、3倍、10倍やっていかないといけない」と語っていました。実際に元谷戦から今日まで、それくらいやってきた手応えはありますか?
【ヒロヤ】それだけやってきましたし、自分はどこにいても一番下からやっていくタイプだったんで。地元でセミプロみたいな試合に出てた時は、DEEPやパンクラスに出場していたプロ選手と練習して、JTTに入ってからはRIZINに出ている選手と練習して、今はアメリカでUFCファイターと練習して。そうやってたくさん経験して、今は習うことも大事だけど自分の感覚とか経験したものの価値を自分で見つけていく段階です。信頼できるコーチのアドバイスを全て聞くことも大事ですけど、そのなかで自分の嗅覚をもうちょっと大事にして、その上で「絶対に勝つ」という強い気持ちがないとトップファイターに勝つことは難しいと、元谷選手との試合で感じました。例えば、RIZINでは1ヶ月未満で試合が決まることもあるので、それでも勝っていくにはその嗅覚が自分にとって今一番必要なんじゃないかって気づくことができて、新しい自分を見つけられた半年だったと思います。
――元谷選手に敗れたことでいろいろな発見があったんですね。
【ヒロヤ】どの選択も自分がして、どの責任も自分が負う。そんな戦い方ができるようになった。強い心ができたというか、自分の土台ができてきた感覚です。技術だけじゃなく心の強さ、やっぱりそれがめちゃくちゃ大事だと気づくことができました。
■“格闘エリート”神龍誠に「アメリカで学んだトータルMMAで勝利する」
――大みそかで対戦する神龍選手とは、いつか試合をする考えはありましたか?
【ヒロヤ】2026年の後半で当たるかなって、なんとなく思ってました。RIZINフライ級の若手の中でトップを走っていた選手で、自分も上がっていく中で戦うだろうと考えていましたが、いろんな流れがあってタイミングが早まったなって感じです。
――神龍誠というファイターの印象は?
【ヒロヤ】格闘エリートって感じです。自分より若くて、10代からずっと格闘技だけをやって生きてきた選手なので尊敬していますし、フライ級の顔というか頭一つ抜けてるファイターだと思っています。
――試合決定のタイミングで神龍選手のATT所属も発表されました。
【ヒロヤ】自分も2年前の大みそか大会の直後からアメリカに行って、2年くらい練習をやってきたので、アメリカでの生活の状況とか心境とか、一番わかる立場なのかなって思います。その中でもATTって素晴らしいジムで優秀な指導者もフライ級のすごいファイターも揃っていて、さらに伸びていくっていうタイミングの神龍選手と試合ができるのは、俺にとってもプラスになります。
――この試合が発表された配信特番で、ヒロヤ選手は「打撃や組みの単体じゃなく、MMAで戦わないといけない」とおっしゃっていました。この言葉の意味をもう少し噛み砕いて教えていただけますか?
【ヒロヤ】日本とアメリカの差という訳じゃないですけど、僕は日本人って一つのことをやるとすごく強いと思っていて、レスリングや柔道、空手などの競技ではオリンピックでメダルを取るなど結果を残していますよね。頭が良いし、一つのことにこだわるからそこまで極められる。でも、MMAはすべての技術を使って“格闘IQ”で相手を倒す競技だし、際の変化のところで切り替えられないのかなと。レスリングが得意な選手が打撃で劣勢になった時に、客観的に分析してグラップリングに行くのか、テイクダウンを狙って1回立たせてから打撃に行くのか、シチュエーションに合わせて変えていくことが大事なんです。アメリカのMMAはトータルで勝つことを大事にしていて、グラップリングで攻めるだけじゃなく「立つのか、極めにいくのか」っていう展開を作っていく。それがMMAで戦うということ。打撃で攻められたら打撃で戦うんじゃなく、自分の強い展開に持っていくのが大事なんです。
――状況に合わせて判断して、相手のペースにならないように展開を作っていく。
【ヒロヤ】そうです。際で戦うというのは、自分の強みにこだわりすぎないで、頭で考えるのも大事だし、考える前に体を動かせるように染み込ませるのも大事。自分が練習でやってきたこと以上のものは試合では出せないので、染み込ませるためにはひたすら練習のみです。だからこそ、MMAの練習ってめちゃくちゃやることが多いし、相手によって対策も変わってくる。それが大変なんですけど楽しいんですよね。ボクシングだとボクシングを極めてる人には絶対に勝てないけど、対戦相手と差があるって言われても格闘IQで勝てるのがMMAなんです。
■高い志の仲間と切磋琢磨の日々 プロ野球選手との交流で感じたプロアスリートの自覚
――試合が発表された特番の終了後、高木凌選手と一緒にラントレしていましたが、普段から練習していますか?
【ヒロヤ】高木くんはアメリカで一緒に練習してだいぶ仲良くなって、昨日もダッシュしてサウナに行きました。サウナでもずっと格闘技の話とか、減量中だから試合が終わったらあれを食べに行こうよとか、RIZINに出れると思ったのはいつ?って話をしてました。格闘技に対する考えとか姿勢もめっちゃ近いし、RIZINに出るまでの道のりはかなり違うけど、そんな2人がRIZINで交わるのって面白いですよね。大みそかも一緒に出たかったです。
――また2人でアメリカで練習する可能性もありますか?
【ヒロヤ】行きたいですね。日本人と一緒に行ってたほうが「いまの練習はこういうことだよね」って落とし込みやすいし、自分以外の視点で見た人とフィードバックすることも大事だと思いますし。高木くんとアメリカに行ってた時も「俺はこう思うけど高木くんはどう思う?」って話ばっかりしていました。アメリカもいいけど、高木くんにはJTTにも練習に来てほしいですね。
――先日はヒロヤ選手ファンというプロ野球・千葉ロッテマリーンズの山口航輝選手と山本大斗選手と交流されていました(YouTube「千葉ロッテマリーンズ公式チャンネル」で公開中)。2人ともすごくうれしそうでしたが、同じプロアスリートから応援されてヒロヤ選手もモチベーションが上がったのでは?
【ヒロヤ】僕もすごくうれしかったですね。プロ野球選手の方と初めてお会いしたのですが、お話を伺うと野球ってすごいなって思いました。シーズン中はほぼ毎日試合があるって、めっちゃキツイですよね。そんなすごい頑張っているアスリートがいるんだから、俺も頑張ろうっていうのは、お互いに思えたんじゃないですか。それに、アスリートの方に「ファンです」って言っていただいて、自分もプロアスリートとして見ていただくことを意識しながら、格闘家としてやっていきたいって改めて思えました。RIZINに出ることで自分の成長を感じられるし、人生もどんどん成長するというか何かを刻んでいるような、自分が作られていく感覚もあります。
――ヒロヤ選手がアスリートから応援されている姿を見ると、我々もうれしいですね。さて、改めて大みそか大会についての話題に戻ります。10周年を締めくくる大会として豪華カードが並んでいますが、ご自身の試合以外で注目している対戦は?
【ヒロヤ】全部が気になる豪華な試合しかないですが、どれか一つを挙げるならやっぱり2年前からのドラマがある「篠塚辰樹vs.冨澤大智」です。自分は大智と友達なのでもちろん応援していますが、篠塚選手も対戦しているので頑張ってほしいという気持ちもある。両者と関係性があるので、いい試合になってくれたらベストだと思います。
――冨澤選手とは練習動画も公開されていましたが、篠塚選手対策は伝授されましたか?
【ヒロヤ】大智とは週に2回練習していて、ある程度の対策とか話しましたけど、彼はストライカーで自分みたいにグラップリングでガンガン攻めるタイプじゃないから、自分と同じ作戦だとガス欠をしちゃうかもしれない。だからアドバイスできることは限られていますけど、自分も彼から学ぶことが多いのでお互いに意見交換して成長を実感しながら練習しています。
――まさに格闘IQを使って自分なりの戦いができるか、が大事ということですね。
【ヒロヤ】そうですね。でも、本当に楽しみな試合です。大智は1回目にあんだけ派手にやられてるんで、絶対に死んでも勝ちたいからこの試合のためにMMAをやってきたという覚悟があると思います。篠塚選手も自分に負けて2連敗になったら厳しいし、お互いに負けられないからこそ、盛り上がる試合になります。
■ベルトを見据えて大みそかに爆発宣言!「物語とドラマがあるのは自分」
――大みそかにはヒロヤ選手も参加したフライ級GP決勝の「扇久保博正vs.元谷友貴」も行われます。
【ヒロヤ】この試合はどっちが勝つか、本当にわからないですね。元谷選手の強さは身を持って知っているけど、扇久保選手ってめっちゃ強いじゃないですか。普通に考えたら扇久保選手が勝つだろうって思うけど、元谷選手の最近の戦い方が変わり始めていて、神龍選手を倒した勢いで自信が確信になってきてるんじゃないかな。アメリカに行って1年くらい経って順応してくるタイミングでしょうし、元谷選手が自分で戦い方を見つけてきてるだろうって考えると、扇久保選手の負けが想像できなかったけど、元谷選手の勝率がどんどん上がってきて、いまはフィフティ・フィフティだと思います。
――ヒロヤ選手よりも10歳も上の2人がさらに進化している姿を見て、どんなことを感じますか?
【ヒロヤ】経験の差を俺たちが超えないといけないっていうのは感じていますけど、そう簡単に超えられる壁じゃないっていうこともわかっているし、扇久保選手はかつては(前UFCフライ級王者のアレッシャンドリ・)パントージャにも勝っていて、本当に世界トップクラスだと思います。でも、ここ2~3年が流れが変わるタイミングだと思うし、時代を動かすためにも自分が20代でベルトを巻きたいです。ここまで来たんで、もう行けるところまで行きたいですし、その大会で自分が神龍選手と戦うことになって、この結果でも大きく変わってくると思っています。
――毎回プレッシャーは大きいですが、特に今年はヒロヤ選手にとって背負うものが大きくなりそうです。
【ヒロヤ】試合までにナイーブになったり、いろんな感情が絶対に出てくると思うんですけど、当日には覚悟を持って挑める試合を自分はやってきました。今年の大みそか、物語であったりドラマがあるのは自分かなと思うので。この前までただの不良だった人間が、チャンピオンベルトを考えたり格闘技に対して本気で向き合えるように変わってきて、でも大事なのは大みそかに勝つことがいまの僕には必要なので、それを証明したいです。
――きょうはたっぷりと語っていただき、ありがとうございます。最後に気になることをお伺いしたいのですが、試合発表の特番で朝倉未来さんにアポ無しで電話をして出演してもらいまいたが、後から怒られませんでしたか…?
【ヒロヤ】いや、ぜんぜん怒られてないです(笑)。絶対にそういうことで怒る人じゃないですし、次の日に会って「昨日はありがとうございました」って伝えたら、「…ッス」っていつも通りでした。普段は電話をかけることはないので絶対に出てくれると思っていたし、寝起きでも出てくれてありがたかったです(笑)。未来さんも1番強いチャンピオンのシェイドゥラエフに挑戦して、自分もGP決勝の2人の次に強いと思っている神龍選手に挑むので、まずは自分が大みそかの会場を爆発させますよ!
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