
NHKが今年8月に放送した戦時下の「総力戦研究所」を描いたドラマをめぐり、実際の所長だった人物の孫が「ドラマの内容で祖父の名誉を傷つけられた」としてNHKに賠償を求める訴えを起こしました。
NHKは今年8月、日米開戦前に設立された研究機関「総力戦研究所」を描いた番組を放送しました。この番組は、創作を加えて描いたドラマと史実を伝えるドキュメンタリーの2部構成で、ドキュメンタリー部分では、研究所の所長の孫で元外交官の飯村豊さんが祖父の人物像を説明するインタビュー映像も放送されました。
飯村さんは祖父について「研究所内で自由な議論を推し進めた人物」としていますが、ドラマでは祖父にあたる人物が「日本が戦争に敗れる」という研究結果を覆すよう研究生に圧力をかけるなど、アメリカとの開戦を肯定する人物として描かれました。
番組では「所長および関係者はフィクションとして描かれています」とするテロップを表示していましたが、飯村さんは「視聴者に誤解を与える内容だった」などとしてNHKに謝罪と訂正を求めています。
こうした中、飯村さんがきょう、都内で記者会見を開き、「祖父の名誉を傷つけられた」としてNHKに550万円の賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたと明らかにしました。
飯村さんは会見で、NHK側が「ドラマ制作プロセスについては謝罪する準備があるが、番組内容については謝罪しない」としているとし、「祖父の名誉は当然のこと、歴史の歪曲以外の何ものでもなく、平和を求めて戦う人たちに対する侮辱だ」と訴えました。
一方で、NHKは取材に「飯村氏には、番組の放送前はもちろん、放送後も誠心誠意対応させていただきましたが、結果としてこのような事態になったことは残念です。今後は訴状の内容を確認したうえで、裁判の中でNHKとしての考えを主張してまいります」としています。
この問題をめぐって、飯村さんはBPO=放送倫理・番組向上機構に審議などを求める要望書を出しましたが、BPOの「放送倫理検証委員会」は「ドラマであることを理由にいかなる番組を制作しても良いとはいえない」としつつ、「ドラマ制作として放送倫理上問題の疑いがあるとまではいえない」として、審議入りしないことを決めています。
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