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1LDKが50万… NY新市長・マムダニ氏当選の背景にはトランプ氏への失望 「劇薬に期待」で左右のポピュリズムに揺れるニューヨーク【サンデーモーニング・風をよむ】

海外
2025-11-09 14:53

4日に行われたニューヨーク市長選挙で、トランプ大統領が「共産主義者」と呼び目の敵にしていた異色の候補が当選しました。“マムダニ旋風”の背景には何があるのでしょうか。


【写真で見る】“旋風”おこしたマムダニ氏のSNS発信


NY次期市長 “社会主義的”候補が当選

10月、ホワイトハウスで行われたアルゼンチンの大統領との昼食会。その最中、トランプ大統領が突然、厳しい口調で批判を始めます。


トランプ大統領(10月)
「『共産主義者』で下劣で卑怯なやつだ。国の税金を無駄遣いするような人物を当選させてはならない」


その矛先が向けられたのは、4日に行われたニューヨーク市長選で当選した民主党、ゾーラン・マムダニ氏(34)。


マムダニ氏
「ドナルド・トランプ、これを見ているのは分かっている。音量を上げて聞きなさい。国民の期待を裏切ったトランプを倒せるのは、彼を生んだニューヨークだけだ」


マムダニ氏は、アフリカ・ウガンダ生まれ。7歳でニューヨークに移住し、インド系の両親を持つイスラム教徒です。


マムダニ氏
「NYの皆さん、一緒に凍結するのは『家賃』。NYの皆さん、一緒にバスの運行をスムーズにし『無料』に。NYの皆さん、私たちが実現するのは普遍的な『保育』だ」


州議会議員のかたわら、ラッパーとして活動した時期もある異色の経歴に加え、掲げた公約は、最低賃金の引き上げに加え、家賃の値上げ凍結、公営バスや保育の無償化といった社会主義的な政策。


その実現にかかる1兆5000億円あまりの財源は、富裕層や大企業への増税でまかなうとします。


“マムダニ旋風”に危機感 なりふり構わないトランプ氏

マムダニ氏
「次期ニューヨーク市長として、家賃(の値上げ)を凍結します」


2025年2月時点での支持率はわずか1%でしたが、SNSを通じて発信を始めると、若者を中心に有権者の心をつかみます。

そして、9万人以上のボランティアが彼への投票を呼びかけるなど、一躍、“マムダニ旋風”が巻き起こったのです。


これに危機感をいだいたのがトランプ氏。対立候補で前民主党州知事のクオモ氏に投票を呼びかけ、マムダニ氏が当選すれば連邦資金を出さないと言及するなど、なりふり構わぬ“選挙介入”を行います。


にもかかわらず、マムダニ氏が当選した背景には、ここ最近のニューヨークの異常な物価高がありました。


ニューヨークの街の人
「食品3つで60ドル(約9000円)もする。インフレがすごくて、何もかも高すぎます」


1年前のトランプ氏「私がインフレを終わらせる」 それでも止まらぬNYの異常な物価高

全米一物価の高いニューヨークですが、この1年だけ見ても食費や電気代などの物価がさらに高騰。


とりわけ異常ともいえるのが家賃。日本でいえば1LDKほどの部屋の家賃が、ひと月およそ50万円に達し、過去5年で2割近く上昇しています。


ニューヨークの街の人
「多くの友人が家賃を払えず、引っ越しせざるを得なくなった」


そうした中、市民の約4分の1が、生活必需品すら購入するのに困難な状態に陥っているとの報告書まで出ています。


しかし思い返せば、ちょうど1年前の大統領選で、物価高解消を明言し、勝利したのが、トランプ氏でした。


トランプ氏(2024年11月・ペンシルベニア州)
「希望のメッセージを届けに来ました。皆さんの投票で私がインフレを終わらせます」


ところが、最新の世論調査で、インフレと生活費へのトランプ政権の対応が「期待を下回っている」との回答が66%に上ったのです。


「“劇薬”を期待する雰囲気」 左右のポピュリズムに揺れるNY

マムダニ氏当選の背景には、トランプ氏への失望もあったと専門家はいいます。


慶應義塾大学(現代アメリカ政治)渡辺靖 教授
「大型予算案が通りましたけど、富裕層に対しては減税が維持されて、労働者層の人が頼りにしていた、保険医療に関する予算などが実質的には削られていく方向になった。確かに株価は連日高騰しているが、物価が沈静化する兆しはないし、解雇も相次いでいる。トランプ氏を支持した人であっても、自分の生活が良くなっていないという失望感が大きい」


勝利宣言でもマムダニ氏は、鋭くトランプ氏を批判しました。


マムダニ氏
「トランプのような億万長者が税金を逃れ、減税を悪用してきた。腐敗の文化に終止符を打つ」


結果として、過激とも思える主張であっても、有権者はマムダニ氏を支持したのです。


ニューヨークの街の人
「ここは本当に住みにくくなってしまった。彼(マムダニ氏)なら変えてくれると思う」
「多くの人の利益になる社会主義者を選ぶことは、世界のモデルになると思う」


資本主義の聖地ニューヨークで、社会主義的な政策を訴える市長の誕生。その意味を、渡辺教授は…


慶應義塾大学(現代アメリカ政治)渡辺靖 教授
「現状不満を多くの国民が持っていて、左にしろ右にしろ、過激なアプローチ、劇薬を期待するような雰囲気が出てくる。そういう意味では、トランプ氏が躍進するのも、マムダニ氏が躍進するのも同じなのかなという気はします。

左右のポピュリズムへの遠心力が働いていくわけですから、民主主義にとって非常にまずい状況。民主主義国家が、権威主義国家に劣化していくときの教科書に書いたような構図。そういう傾向が世界の中で広がっている」


今回のニューヨーク市長選の結果は、今後の世界を占うものとなるかもしれません。


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