アメリカとイランの戦闘終結に向けた「覚書」に双方が署名したことが明らかになりました。
トランプ大統領は、署名式典が行われる19日に「ホルムズ海峡が完全に開放される」との認識を示しています。
【写真を見る】今後の協議の焦点は“イランの核問題” イランの核施設
戦闘終結に向けた「覚書」に署名 最終合意はどうなる?
高柳光希キャスター:
アメリカとイランの戦闘終結に向けた交渉をめぐり、トランプ大統領は「合意が成立した」と発表しました。
6月15日に、アメリカとイランの双方が戦闘終結に向けた「覚書」に署名し、19日にはスイスで「署名式典」が予定されています。
トランプ大統領はこれまで、このような発言をしています。
5月6日:
「合意できる可能性は十分ある」
5月23日:
「最終調整の段階にある」
6月8日:
「最終交渉がすすんでいる」
今回は本当に「最終合意」となるのでしょうか。
JNN中東支局長 増尾聡 記者:
今回合意したのはあくまで「覚書」です。今後60日間で協議される内容の中心は、イラン核問題についてです。
イランとアメリカはこれまでも核問題をめぐる交渉を続けてきましたが、双方の要求の隔たりは大きく、互いに決定的な譲歩ができずに行き詰まってきた経緯があります。
今回もアメリカ側は、▼核開発の制限や、▼核施設の解体などでイランに譲歩を迫るとみられます。
一方で、イランは今回の戦闘を通じて軍事力ではアメリカに及ばなくても、ホルムズ海峡の封鎖や湾岸諸国への攻撃といった手段による効果を実感したはずです。
その意味で、イラン側は以前よりも自信を深めており、より強硬な姿勢で交渉に臨む可能性があります。
今後の焦点は、「イランがどこまで譲歩するか」ではなく、「アメリカがどこまで譲歩できるか」に移りつつあるようにすら思えます。
これからの60日間は、今回の「覚書」の合意よりもはるかに険しい交渉になると思います。
イランの“切り札”ホルムズ海峡 「19日に完全開放」なるか
高柳キャスター:
今回の戦闘終結に向けた「覚書」に署名したことを受け、トランプ大統領は「金曜日(19日)に完全に開放される」という見通しを示しました。
現在、ペルシャ湾内には日本関連の船舶38隻が待機しています。
イランがすんなりホルムズ海峡を開放し、石油を以前のように輸入できるようになるのでしょうか。
JNN中東支局長 増尾聡 記者:
当面は、日本向けを含めた石油輸送は再開に向かう可能性が高いとみられます。
というのも、ホルムズ海峡の正常化は今回の「覚書」の“柱”の一つであり、現時点でアメリカ側が最も重視している要求でもあります。
そのためイランとしても、いきなり約束を反故にして海峡を再び封鎖するようなことは考えにくく、もしそうなれば覚書そのものが崩壊しかねません。それはイランにとっても不都合なことだと思います。
一方で、イランは今回の戦闘を通じて、ホルムズ海峡が自らにとって極めて強力な交渉カードであることを改めて認識したはずです。
そのため、例えば仮に今後60日間の交渉で合意違反があった場合や、核問題で最終合意に至らず再び軍事的緊張が高まった場合には、海峡の封鎖や航行妨害が、依然としてイランの持つ「最大の切り札」となり続けます。
ホルムズ海峡をめぐる不確実性は、当面残り続けるのが今の状況だと言えます。
「海峡の開放」G7でも論点に “通航料”をめぐる問題も
高柳キャスター:
こうした中、トランプ大統領は15日からフランスで行われている「G7=主要7か国首脳会議」に出席しています。
今回の「覚書」の署名について、アメリカ側はどのような見解なのでしょうか?
ワシントン支局長 涌井文晶記者:
アメリカメディアの論調は、「イランの核問題は先送りされた」などと厳しいものが目立ちます。
一方、合意発表直後に株価が上昇し、原油価格が急落していて、トランプ大統領はその点を強調して「成果があった」とアピールしています。
ただ、ホルムズ海峡の通航料をめぐり、アメリカ側は最終合意でも「無料」とすることを目指す一方、イラン側は今後も「サービス料」という名目で実質的に徴収することを目指していると言われています。
これまでホルムズ海峡は自由に航行できる「国際海峡」とされてきました。「サービス料」の名目でも認めてしまうと、国際法の原則を曲げることにもつながり、国際的にも影響の大きい論点となります。
ホルムズ海峡の開放は、G7サミットにおいても大きな論点となっています。15日に開かれた夕食会の場でも議論になり、ひとまずは各国とも合意を歓迎したとみられています。
トランプ大統領は15日、フランスのマクロン大統領と個別会談を行い、ホルムズ海峡の今後の安全な航行の確保をめぐり、各国に船舶の派遣を依頼するのかという話題になったそうです。
その際、「イラン側との合意ができているので、それほど多くの支援は必要ないだろう」と述べる一方で、「数か国から1隻2隻ずつ支援を出してもらうのは悪くない案だ」とも述べていました。機雷の掃海などで支援を受けたいのではないかという本音も垣間見せます。
サミット2日目には、UAEやカタールの首脳をゲストで招いた中東関連のセッションも予定されていて、ホルムズ海峡の開放、中東情勢の安定について議論する見通しです。
「我々は合意に参加していない」今後のイスラエルの出方は
井上貴博キャスター:
和平に向けた話し合いが前進しているのは望ましいことです。
しかし、トランプ大統領は「ホルムズ海峡の開放は成果だ」と胸を張りますが、そもそも戦闘がなければこのような事態にはなっておらず、元の状態に戻っただけです。核合意については、より困難な状況になってしまいました。
この戦闘が何をもたらしたのかと考えると、失ったものばかりで、むしろ状況を後退させたことにしかならないのではないかと思ってしまいます。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
海外でも様々な分析がされていますが、この戦闘によって得られたものは一つもなく、失ったものもあります。一方で、イランは様々なものを獲得している、あるいは今後獲得するだろうと言われています。
今後60日間で全て合意ができるのかというのは非常に疑問です。
様々なキーワードが出ましたが、一つ出てこなかったのが、イスラエルについてです。
イスラエルは、イランの政権交代をそもそもの目的としており、それが実現できていません。
イスラエル側からすれば、今後このようなチャンスはなかなか訪れるものではありません。本当に60日間も黙っているのかどうかについては、疑問を感じるところです。
井上キャスター:
イスラエルは、ネタニヤフ首相自身もこの先に選挙を控えており、そこで勝つためには弱腰は見せられないですよね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
イスラエルは「我々は独立国家だから、今回の合意には参加していない」とはっきりと発言しています。そう発言するということは、何かの前触れなのではないかと心配するぐらいの表現ですよね。
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<プロフィール>
増尾聡
JNN中東支局長
イランやイスラエル・パレスチナなど中東各地を取材
涌井文晶
ワシントン支局長
今回のG7を取材
トランプ氏を3年以上追いかける
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック顧問・アース製薬の社外取締役など
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