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“トランプ関税”突然の方針転換…キーマンは「政権の側近2人」【Bizスクエア】

経済
2025-04-16 06:30

 相互関税の「上乗せ分」が一時停止となり、アメリカと各国との交渉がスタートする。「日本が列の先頭」にいると話したベッセント財務長官の狙いは?交渉のカギは?


【写真で見る】“トランプ関税”突然の方針転換…キーマンは「政権の側近2人」


方針転換の影に「2人のキーマン」

相互関税の「上乗せ分」を、発動からわずか13時間後に「90日間一時停止にする」と表明したトランプ大統領。


背景にあったのは、株安やドル安に加えて、安全資産とされた国債まで売られる「トリプル安」の発生だ。これは“金融危機に発展するおそれ”のある動きで、トランプ氏も金融市場の動きが判断材料になったことを認めた。


トランプ大統領(9日):
「債券市場は難しい。私も注視していた。みんな少し過剰に反応していると思ったんだ。神経質になりすぎ、怖がりすぎだ」


その方針転換の影に【2人のキーマン】をあげるのは、経産省米州課長などを歴任し日米の通商交渉を最前線で担当してきた細川昌彦さんだ。


今回一時停止となったのは、ベッセント財務長官が主導した「上乗せ分」で、細川さんは「もともとベッセント氏は『関税は交渉のための道具』と言い続けてきたので、いずれこうなると思っていた」と話す。


一方、ナバロ大統領上級顧問が主導した全世界対象の「10%の一律関税」は維持された。


『明星大学』経営学部教授 細川さん:
「ナバロ氏に乗っかってトランプ大統領が発表し、マーケットが危ないというシグナルが出てきたらベッセント氏が出てきて調整していく。この役割分担がきっちりと機能している。2026年の中間選挙に向けて回復不能なダメージにならないうちに手を打つのがベッセント氏の役割。マーケットを見ながら調整していくのも織り込み済みだ」


日本を足がかりに「ドル安誘導」?

また、関税をめぐる各国の通商交渉を担当するベッセント氏は「日本が列の先頭にいる」(9日)と話したが、細川さんは「ただのリップサービスにすぎない」という。
トランプ政権には「関税の引き上げ」とともに“もう一つ大事なミッション”があり、それは【ドル安への誘導】。その先導役・牽引役がベッセント氏だからだ。


細川さん:
「日本は今でも円安が行き過ぎているという議論もある。これから利上げの議論もある。そういう中で“ドル安政策に誘導していく相手”として日本を第1号としてやって、他の国にドル安誘導を仕掛けていく」


関税+ドル安は「アメリカ経済に大打撃」

そして、トランプ氏の言動は市場を毎日振り回している。


▼ニューヨーク株式市場の【ダウ平均株価】は乱高下
⇒5日の相互関税「一律10%」の発動後、株価下落
⇒9日、「上乗せ分」の一時停止を受け急反発。上げ幅は2962ドルと過去最大
⇒10日、中国への関税率が145%になると伝わると、米中貿易戦争への警戒感から
1000ドル以上値下がり


【為替市場】では「米中対立の激化でアメリカの景気が後退するのでは」という警戒感から、ドルを売って円を買う動きが拡大
⇒一時1ドル=142円台後半と約半年ぶりの円高水準に


▼安全資産とされるアメリカ国債も売られ【長期金利】が急騰
⇒長期金利の代表的な指標である10年債の利回りは、前週末の3.9%から一時4.5%を超える水準に


こうした金融市場の反応は「ホワイトハウスにとって想定外だったのでは」と話すのは、ニューヨークに拠点を置くヘッジファンド『ホリコ・キャピタル・マネジメント』の堀古英司さんだ。


堀古さん:
「株がある程度下がるのは覚悟していたと思うが、債券の利回りがあれだけ上がるとか、ドル安になるとかは思っていなかったのでは。関税を導入して金利が上がるという直接のリンクはほとんどないはずなので、単なる“パニック売り”。とにかく現金にできるものは現金にしようという動きが起こってしまうのは想定外だったと思う」


ーー全ての資産が売られる状況で、しかもアメリカ売り。これが原因でベッセント氏がトランプ氏を説得したと。


堀古さん:
「まず市場が冷静になる期間が必要という判断だと思う。それから、<ドルが下がった>のは大きな誤算。なぜかというと、関税を導入しても相手の国の通貨が安くなってくれれば相殺されて、アメリカの消費者は損をしない。同じ価格で買えるので。ただ今回は関税を導入し相手国通貨が上がってしまったので、値上がり分をアメリカの消費者が全部負担しないといけないことになる。これはアメリカ経済に大打撃」


対中国145%関税のウラに「前回の成功体験」

中国との間では、“報復関税の応酬”となっている。


▼アメリカ(10日)
⇒中国に対する「相互関税」の税率を84%⇒125%に引き上げ発表。合成麻薬の流入を理由に課している20%の関税とあわせて【関税率145%】に。
▼中国(11日)
【アメリカからの全ての輸入品に対する追加関税を84%⇒125%】に引き上げると発表


ーートランプ氏は選挙中に「中国に60%関税」と口にしていたが145%というのは驚きだ。


堀古さん:
「中国はアメリカの一番大きな貿易赤字の相手国。報復関税をやりあっても赤字国の方が有利なので、絶対勝てるという目論見があると思う。また、前回(2018年)は、人民元が下がってくれたのでアメリカ国民の負担がそんなになかった。そういう成功体験が145%という関税に繋がっている。これから交渉する材料を探してる、そういうやり合いだと思う」


「日本が列の先頭」日米交渉のカギ

アメリカとの交渉を担当する赤沢亮正経済再生担当大臣は、17日にベッセント氏らと会談する見通しだが、日米交渉のカギは何なのか。


『明星大学』経営学部教授 細川さん:
「トランプ氏が会見でコメントした自動車・コメ・安倍元総理、この3点。アメリカの自動車が日本ではなかなか採用されない、走っていないという不満。アメリカのコメもなかなか受け入れられていないと、この2つは言い続けている。石破総理が1回電話しただけで終わりではダメ。赤沢大臣の手腕も大事だが、もっと大事なのは石破総理が主導していくことだ


また、ベッセント財務長官は交渉のポイントとして、【関税】・【非関税障壁】・【政府補助金】に加え、【通貨問題】もあげている。


『ホリコ・キャピタル・マネジメント』堀古さん:
「貿易不均衡の解消手段としては<価格で調整>と<数量で調整>があるが、今回関税を導入したということは、数量での調整。なので通貨でという話にはとりあえずならないと思う。今ドル安に持って行ったら、値上がり分が全部アメリカ消費者の負担になるので、それはやらないと思う。まず、【関税】の方」


その上で、日本が主張できるポイントはどこにあるのか。


堀古さん:
「日本との2国間だが、天然資源の問題や経済優位性などあるので一方的に相互関税をというのは、アメリカに文句を言える。さらに、ホワイトハウスが今回関税の根拠として出した計算式も現実から到底離れているので、おかしいと交渉できる」


さらに、【非関税障壁】にもカギはあるようだ。


経済ジャーナリスト 磯山友幸さん:
「非関税障壁というのはむしろ日本も色々なものを抱えているので、例えば<消費税の問題>もアメリカが言ってる。それをうまく利用して日本にプラスになるような政策を持って行ってみるというのも一つの手じゃないかと思う」


今後の株式市場の見通しは?

株価はしばらく不透明な状況が続き、場合によってはもう一段の下げもありえるのか?ニューヨークの投資顧問会社の最高運営責任者でもある掘古さんはこの先の動きをどう見ているのだろうか。


堀古さん:
「関税自体は、実はそんなに株価の下押し材料ではなく、1回だけのシフトはあるがずっと続くものではない。ただマーケットはやはり今、色んなニュースが毎日変わる。企業の経営者としたら、10%でも20%でも決めてくれれば、設備投資計画なり、資金の使い方なり、生産拠点を移すなり判断できるが、コロコロ変わるので全部投資が一旦ストップとなり、景気の足をひっぱる。実はコロコロ変わることの方が関税より問題


ーーAI関連株の急騰に対する反動が起き、それと重なっていることも株式市場のショックを深めてるのではとも言われているが。


堀古さん:
「Appleはさすがに中国に145%の関税がかけられれば影響するが、マイクロソフトやエヌビディアなど他はそんなに影響はないはず。元々バリュエーション(企業価値評価)もバブルと言われるほど高くなかった。どちらかというと市場取引の半分ぐらいになっているインデックスファンド。インデックスの中にはAI関連銘柄が一番大きく入っているから、世界的に現金化の流れが出る中で売られやすいという状況になっている」


(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年4月12日放送より)


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