
ボーナス時期到来。「自分や家族へのご褒美をした上で、できることなら少しは資産形成に」と話す『ニッセイ基礎研究所』井出さんに聞く、“貯蓄”ではない“守り”とは?
【写真で見る】夏のボーナスで始める「攻め」と「守り」の資産形成
積立投資「毎月3万+ボーナス」で20年後は…
まずは、【攻めの資産形成】について。
これは、基本的には株式など“リスクのある投資”をするということだという。
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「例えば40代の人なら老後まで大体平均20年ということで【毎月3万円の積立投資をした場合】で20年後の資産額を見てみると、投資額の累計は720万円。6%の利回りだと1386万円になる」
ちなみに「利回り年率6%」は低めの前提。実績値で言えば、S&P500は過去37年間で12%、オルカン(全世界株式)でも9%だが、「高い数字を前提に計算して投資をして、20年後に足りていなかった」というのを避けるため、あえて低い前提だ。
そして、毎月3万円に<ボーナス>を上乗せするとー
【毎月3万円+年2回ボーナス20万円】×20年
▼累計額1520万円▼利回り6%⇒3065万円
【毎月3万円+年2回ボーナス10万円】×20年
▼累計額1120万円▼利回り6%⇒2225万円
井出さん:
「10年物の定期預金の利息は0.5%で、税金で2割引かれるから実質0.4%。なので少しでも増やしたいという人なら、預貯金で置いておくよりは時間があるんだから、少しでも投資しておけば増えていくよねということ。これが攻めの資産形成」
預貯金で「守り」はできない
では、【守りの資産形成】とは?
投資ではなく“預貯金派”の皆川玲奈アナは、「私はもう守っている。守りに入っていてこのままでもいいのかな」と話すが…
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「ご本人は守ってるつもりだと思うけど、“全然守れていない”。預貯金は見かけ上の元本は減らないが、実質的にはインフレで元本が減っている。だから守っているつもりで実はやっていることは“負け戦”。それをわかった上で預貯金を選択するのは全然良いが、知らずに負け戦に飛び込んでいくのはよくない」
井出さんの考える「守り」とは、“インフレに負けない程度にリスクを抑える”ということ。それは【債券投資】だという。
「債券」って何?どういう仕組み?
【債券】とは、国や自治体、企業やファンドが発行するもので、投資家側が債券を買うということは「発行元にお金を貸す」ようなイメージ。
▼利息⇒発行元から定期的に受け取れる
▼期限⇒満期になったら元本が返ってくる
井出さん:
「ただし、元本は100%必ずもらえるわけではなく、債券を発行している主体が最悪倒産して紙くずになる可能性もゼロではない。利息や元本は決まった日に払うことになっているが、支払いが遅れたり一部減額されたりも起こりうる。そういう状態をデフォルトと言って、その可能性・確率を表しているのが信用格付け」
つまり、格付けが高いほど元利金(元本と利息の合計)が期限通り支払われる可能性が高い。その代わり利息もちょっと低いローリスクローリターン。格付けが低いほどリスクは高いが、利回りも高いというものだ。
米国債「1ドル120円」になっても預貯金より高利回り
例えば、「国債」を見てみる。
【10年もの国債利回り】6月28日時点
▼日本⇒年1.4%前後
▼アメリカ⇒年4.3%前後
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「日本の場合だいぶ上がってきたけど1.4%前後。しかもNISAを使えないので、表面上の利回り1.4%から2割引かれて実質的には1.1%ぐらいになってしまい、完全にインフレに負ける。一方、アメリカ国債は直近で4.3%前後」
ーーずいぶん高いと思うが、でもやはり為替の影響とかも出てくるのでは。
井出さん:
「米ドル建てだから円高になるとマイナスの影響を受ける。ただ、どのくらい円高になったら、どのくらい減るか。これをきちんと理解した上で考えるべき」
例えば
▼米国債(利回り4%)を「償還額(満期の時の額面)100万円相当」購入した場合
▼購入時の円相場を<1ドル150円>とする
▼購入額は日本円で67万6000円
満期の時に、【円相場が150円のまま】なら100万円戻ってくるが、<償還額と購入額の差額に20%の税金>がかかるため、実際の受取額は93万5000円になる。
その場合でも、購入額に対する実質利回りは【3.3%】。
【10%円高で135円】になった場合は
▼償還額⇒90万円に減る
▼償還額が減った分税金も少し減り、税引き後の受取額⇒85万5000円
▼実質利回り【2.4%】
井出さん:
「2.4%なら日本のインフレには多分負けない。足元のインフレには負けているが、主要なエコノミストたちの予想をまとめると、この先ざっと1〜2%ぐらいのインフレが予想されていて、それには負けない。それに何と言っても円の預貯金よりは、遥かに利回りが良い。10年物の定期預金で実質0.4%だからそれよりプラス2%の利回りになる」
【20%円高で120円】になった場合は
▼償還額⇒80万円
▼税引き後の受取額⇒77万5000円
▼実質利回り【1.4%】
井出さん:
「1ドル135円までは十分ありえるが、120円まではあまり心配する必要はないと思う。仮に120円までいったとしても、実質利回り1.4%なので、やはり円の預貯金で置いておくよりは良い。デフォルトしないというのが条件にはなるが、預貯金で置いておくよりはより確実に少し資産を増やせそうだということ」
逆に、円安になれば当然資産額は増える。
井出さん:
「為替の専門家たちの中で割と多いのが日本はもう構造的に円安だと、<長期的には円安>という見方。もし本当にそうならば、例えば15年後10年後1ドル165円というのもなくはない。その場合だと、利回りはもっと高くなる」
【5%円安で1ドル158円】=実質利回り【3.7%】
▼償還額⇒105万円
▼税引き後の受取額⇒97万5000円
【10%円安で1ドル165円】=実質利回り【4.2%】
▼償還額⇒110万円
▼税引き後の受取額⇒101万5000円
日本企業の“米ドル建て”社債
さらに、井出さんが“もう少し分が良い”と話すのが「社債」だ。
日本の企業が発行している「米ドル建債券」で、例えば【本田技研工業】
▼利回り(税引き前):4.73%
▼残存(満期までの残り期間):約6年6か月
▼損益分岐点為替:109円91銭
※井出真吾氏作成(6月4日時点)
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「アメリカ国債10年物で利回り年4.3%前後なので、6年ちょっとと期間が短いのに利回りが高い。1ドル109円90銭を割ると損しちゃうけども、そこまでの円高を今の時点で心配する人はあまり多くないと思う。さらに、もっと短い期間で利回りが4%以上のものもある」
【三井住友フィナンシャルグループ】6月4日時点
▼利回り(税引き前):4.12%
▼残存:約1年4か月
▼損益分岐点為替:136円45銭
井出さん:
「税金2割を引くと実質利回りは3%少しぐらいだが、1年ちょっとで3%ちょいの利回りが確保できる。あとは三井住友フィナンシャルグループがデフォルトするかしないか。日本の企業だから皆さん何となくイメージが湧きやすいと思う。絶対にデフォルトしないとは言えないが、1年4ヶ月で三井住友フィナンシャルがデフォルトしそうだからやめておこうという発想にはあまりならないと思う」
ただ、残存が長期になると何があるかわからないので、より利回りは高くなる。
【三菱UFJフィナンシャルグループ】6月4日時点
▼利回り(税引き前):5.10%
▼残存:約14年1か月
▼損益分岐点為替:82円12銭
井出さん:
「自分の運用したい期間やどのぐらいのリスクを取りたいかなどで選べば良い。あと【どこで買えるのか】というと基本的には証券会社だが、行けば必ず買えるものでもない。正直、流通量は決して多くはなく、その証券会社に在庫がないと買えない。だから急げと煽るつもりは全くないが、必ず買えるわけではない点は注意」
5月の格言は“投資の神様”の言葉
<リスクは自分が何をしているか わからないことから生まれる>
井出さん:
「有名なウォーレン・バフェットさんの言葉だが、言い換えると“自分が今やってることが将来自分に何をもたらすかがわかっていない”ということ。先ほどの負け戦の話。守っているつもりでも全然守れていないと。インフレに負けるかもと理解した上での預貯金なら良いけど、そういう意味を正しく理解できていないことが一番危ないという意味」
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