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なぜ?日米合意に“認識のズレ”…相互関税「8月7日から」発動?「合意文書」が作られない“思惑”とは【Nスタ解説】

経済
2025-08-01 20:35

ついに合意に至った日米関税交渉をめぐり、早くも“認識のズレ”が明らかになっています。背景には何があるのか。また、詳細を記す「合意文書」が作られない“思惑”とは?


【写真を見る】関税合意に関する日米間の“認識のズレ”


日米間の認識“ズレまくり”の関税合意

高柳光希キャスター:
アメリカと日本の相互関税では、新たな税率が8月1日にスタートするはずでした。しかし、トランプ大統領は「8月7日」から発動する大統領令に署名しました。発動する日付の時点で、既にズレが生じています。


日比麻音子キャスター:
関税の引き下げは各企業にとって待ったなしです。なので「いつ始まるか」は非常に重要です。こんなことがあっていいのでしょうか。


TBS報道局経済部 竹岡建介 記者:
これが“トランプ流”です。アメリカはかねてから、「8月1日から新しい関税率が適用される」と発表していました。しかし結果、一週間ずれており「これが“トランプ流”の表れだ」と話している交渉関係者もいました。


高柳キャスター:
関税合意の認識のズレが生じているのは、他にもあります。


【農作物などの購入について】
日本「決まっていない」
アメリカ「80億ドル(1兆2000億円)分を購入、コメは75%増」

【防衛装備品】
日本「現行計画の範囲内で対応」
アメリカ「年間数十億ドル追加購入」

【事後検証】
日本「トランプ氏と話した認識はない」
アメリカ「不満を感じたら自動車など25%に」

【対米投資約80兆円】
日本「投資や融資など」
アメリカ「トランプ氏の指示で投資」


認識のズレの背景に“合意文書なし” 一体なぜ?

高柳キャスター:
こうした二国間のズレは、なぜ生じているんでしょうか。


TBS報道局経済部 竹岡 記者:
理由の一つは「法的拘束力のある合意文書がない」ことです。なぜ作らないのか。これには“スピード感”を大切にする日本政府の思惑があります。


高柳キャスター:
合意文書を作っていた場合、何が起きていたのでしょうか。


TBS報道局経済部 竹岡 記者:
日本側は、合意文書の作成は「損」だと判断しました。合意文書を作るには時間がかかります。イギリスだと1~2か月ほどかかり、その間も高い関税が課されました。

ある自動車メーカー幹部は「1時間に1億円損し続けている。一分一秒でも早く関税を下げて欲しい」と言っています。そのため日本は「文章作成の時間があるなら、早く関税を下げる」という戦略をとりました。


日比キャスター:
他の国とは文書を作ってないのでしょうか。


TBS報道局経済部 竹岡 記者:
イギリスは合意文書を作成しましたが、ベトナムやフィリピン、EUとは現時点で合意文書を全く作られていません。

日米合意で日本が一番恐れたのは、合意文書の作成までに、閣僚間や首脳間で詰めの協議が必要なことです。

トランプ大統領は交渉の達人で、1交渉する度に“1おみやげ”=譲歩を求めてきます。日本側からすると、「せっかく良い合意がまとまっているのだから、これ以上やぶへびな形で新たな取引を持ちかけるのは避けたい」と考え、今回は合意文書を作りませんでした。


スピード感重視の合意で日本に損は

日比キャスター:
これまでのズレを見ると、あやふやな条件があまりに多く、日本が損していないか不安になります。


TBS報道局経済部 竹岡 記者:
スピード感を取った一方、曖昧なところがたくさんあります。もしかすると、トランプ大統領が「日本はアメリカと約束したことを実行していない」と主張して、また関税を引き上げる可能性もあります。火種というのは常に残っている状態です。


南波雅俊キャスター:
アメリカは日本に限らず、世界各国に対して「関税」というカードで、交渉を有利に進めてきました。今はまとまっていても、今後、新たな交渉になる可能性もあるのでしょうか。


TBS報道局経済部 竹岡 記者:
ベッセント財務長官は「3か月に1回、合意の実施状況をチェックして、トランプ大統領が不満ならば関税率を元に戻す」という“脅し”のようなことも言っています。いったん合意したので一件落着、とはいかない見通しです。


日比キャスター:
今のところ日本のメリットはどこなのでしょうか。


TBS報道局経済部 竹岡 記者:
自動車関税が15%に下がったことは、政府内でも評価されています。自動車メーカーからも、「いまは円安なので15%でも苦しいが、25%よりかはマシ」という声が聞こえてきています。

また、合意文書がないメリットとして、ある経済官庁の幹部は「トランプ政権の任期終了後に合意文書がないと、うやむやにできる」と話しています。

文章があれば、国家間の約束なのでトランプ政権終了後も高い関税率が続きます。しかし、あいまいにさせておくことで、「あくまでトランプ政権ときの話。関税をもう1回見直してください」と言うことができます。

合意文書がなくても、交渉の余地を残すことで、日本が逆手に取ってうまく進められる可能性もあります。


日比キャスター:
この影響を受けているのは、特に中小企業の皆さんだと思います。一刻も早く安心できる交渉を進めて欲しいですね。


TBS報道局経済部 竹岡 記者:
赤沢経済再生担当大臣も、「今すぐにでも自動車関税を下げてほしい」とアメリカに強く要望してるようなので、一刻も早く下がることが一番だと思います。


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<プロフィール>
竹岡建介 記者
TBS報道局経済部
不動産業界や経済官庁を取材


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