現在、アメリカが日本に課している自動車の関税は27.5%。自動車各社の決算は、非常に厳しい結果となりました。今後の日本の自動車業界の課題について記者の解説です。
【写真で見る】日本で成功する? トランプ氏が推す自動車・フォード「F-150」の驚きのサイズ感
トランプ関税発動 「27.5%関税」いつ下がる?
井上貴博キャスター:
日本への相互関税を、一部を除いて15%にするということで実際に発動されました。
自動車の関税率は、これまで2.5%でしたが、2025年4月から現在にかけて27.5%にぐっと引き上げられました。
日本企業へダメージが大きい中、最終的には15%ということで合意したのですが、これがいつからなのかが決まっていないので、日本のメーカーや関係企業の皆さんはやきもきされていると思います。
今まさに、赤沢経済再生担当大臣がアメリカで詰めの交渉を行っているとみられます。
赤沢経済再生担当大臣は「会社によっては1時間に1億円ずつ損失を出している」と8月1日に話していました。各社の数字をみてみましょう。
【自動車各社の決算(2025年4~6月)】
・トヨタ
関税の影響で4500億円減益(営業利益)
・ホンダ
純利益半減(前年同期比)
・マツダ
赤字
特にマツダは、アメリカに輸出していたパーセンテージが大きいので、よりダメージが大きく出たといわれています。
TBS報道局経済部 岩井宏暁記者:
ポイントは、関税分を誰が負担していたのかということです。結果に出ているように、まさしく日本の企業が負担してきました。
本来であれば関税が引き上がる分、アメリカ国内で値上げをするなどして価格を調整するのですが、日本企業も関税分の引き上げをそこまでしてこなかったので、企業に負担がかかって大ダメージになったのだと思います。
井上キャスター:
結果的にむしろ関税分をメーカー側が身を切るような形になり、これだけ損失が出てしまっています。
しかし「日本企業各メーカーはたくましいから大丈夫だろう」「為替の変動に比べたら結構体力はあるぞ」という意見もあります。
肉乃小路ニクヨさん:
1ドル100円や110円といった時代でも利益を出していたこともありましたが、その頃とはいろいろな構造なども変わっているので、マツダが赤字になるなんて大変だなとは思います。
しかし、今回のことは大統領が変わったら関税が戻る可能性もあるため、あまり値段の上がり下がりを消費者に印象として与えたくないという気持ちから、メーカー側が負担しているのではないでしょうか。
ただ、こうしたことをやり過ぎると、こんなに振り回されていいものなのか。政治がしっかりと交渉して、なんとか上手くまとめてほしいなと思います。
岩井記者:
値上げという話も出ましたが、生産台数というのは目標を決めているので、(値段を)上げすぎると売れなくなります。
そうすると、日本の基幹産業である自動車は裾野も広いわけですから、部品メーカーにも影響が出てきます。そういったところで、企業としても決断が難しいのではないかと思います。
売れる車は? 日本とアメリカの違い
井上キャスター:
確かに、今の話を伺っていると理不尽すぎる状況だと感じます。
一方、アメリカで売れている日本の車をみていきましょう。たとえばトヨタの「タコマ」は、アメリカ市場のニーズに合わせてピックアップトラックになっており、アメリカだと売れるわけです。
ほかにも、日本ではあまり見ない大型のマツダ「CX-50」、スバルの「フォレスター」など、日本企業はアメリカのニーズに合わせて手を変え品を変え、しっかりといいものを作っています。
その中で、トランプ大統領は「日本が我々の自動車も輸入する。フォードのF-150(エフ・ワンフィフティ)は大成功を収めるだろう」と話しました。このフォード「F-150」はどんなものなのでしょうか?
岩井記者:
幅が2メートル超、高さ1.9メートル超と、とても大きい車です。運転席にのぼるのも結構大変な大きさではないでしょうか。
特に日本の道は広い道だけではないので、このような車が本当に通れるのか、さらに駐車場に停められるのかといったところも考えていかなければいけないと思います。
出水麻衣キャスター:
この車が入ってきても日本市場で成功するかというと、環境が違うので、なかなか諸条件で難しそうです。
井上キャスター:
それをトランプ大統領に「日本が営業活動をしていないから、あんたたちのせいだ」と言われても…。
肉乃小路ニクヨさん:
小さい車を作って売ればいいのに、と感じてしまいますよね。
日本は中国に比べEVは2周遅れとも…進まない“EVシフト”
井上キャスター:
トランプ大統領から、次の大統領に変わったらEVシフトになるかもしれません。日本のお隣の中国は、EVでものすごく先を行っているといわれています。
BYDのSNSにアップされている動画を見ると、今日本にある規格と同じですが、充電がとても速いです。ものの5分で充電完了し、これで400キロ以上走れるということです。
同じ条件で、日本で今の最先端のEVだと、だいたい充電に40分ぐらいかかるといいます。
岩井記者:
実際に中国では、こういった車が走っています。
ただ、BYDは自動車も製造していますが、もともとはバッテリーなどの電池系統を作っている会社なので、やはりこういうところの技術は相当持っているのだと思います。
日本で電気自動車に力を入れている企業と比べても、この充電スピードはすごく画期的な速さなのではないでしょうか。
井上キャスター:
日本は中国に比べ、EVは2周遅れともいわれています。このあたりが今後どうなっていくのかというのも、一つの焦点かもしれません。
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<プロフィール>
肉乃小路ニクヨ
ニューレディー
銀行・保険会社など金融業界でキャリアを積む
独自の視点で経済・お金・人生観を語る
岩井宏暁
TBS報道局経済部 自動車・重工・電機担当
関税影響を幅広く取材
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