物価高対策の「おこめ券」。1枚500円で購入しても、交換できるのは440円分。「60円」は発行元の利益などとなるため、自治体から“活用の見送り”が相次いでいます。
おこめ券1枚「500円」なのに「440円分」しか使えないのはなぜ?
出水麻衣キャスター:
世の中には商品券の額面を満額使えるものもありますが、おこめ券は「60円」が経費になってしまう。なぜそのような差が生まれるのか。
そもそもおこめ券とは、JA全農と全米販の2つの団体が発行しているもので、1枚「500円」しますが、実際に交換可能な分は「440円分」なんです。残りの「60円」は、印刷代や利益などに充てられるということなんです。
これに対し、自治体はおこめ券活用を見送るということを続々と発表しています。
批判などを受け、JA全農と全米販は、重点支援地方交付金でおこめ券を買う場合に限り、おこめ券の販売金額を安くするといった対策をとっているということです。
そして、鈴木農水大臣は16日、このように発言しています。
――コメの価格高騰に繋がるのではないか?
鈴木憲和 農林水産大臣
「コメの需給バランスへの影響というのは限定的ではないかと考えております」
――おこめ券を撤回しては?
鈴木憲和 農林水産大臣
「それぞれの自治体のご判断だと思います」
このように明言を避けています。
鈴木農水大臣の発言の裏側にはどんな思いがあると思いますか?
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
二つ理由があって、一つはデパートの商品券と違い、おこめ券の場合、コメの小売業者が500円に上乗せした手数料を払うというのはなかなかやりにくいので、めり込ませて440円にするしかないということ。
また、農水省や農水大臣からすると、自分たちの仲間内のJAなどに、色々な仕事の場や、利益の出る場を分け与えようという仲間意識というのはあると思います。
「百貨店商品券」と「おこめ券」の違いは?
出水キャスター:
満額使える「百貨店商品券」と「おこめ券」の違いは何なのかを説明していきます。
東洋大学経営学部の小川純生名誉教授によると、「商品券の本来の意図は、販売促進の効果をあげること」だといいます。
では、なぜ1000円で満額の1000円分利用できるのでしょうか。
具体的にどういうことかというと、百貨店の商品券の場合、商品券をもらうことで、今まで百貨店に足を運んでこなかった▼新たな顧客の獲得。
さらに、商品券があることで、少し高い物を購入しても心理的障壁が少なくなる▼購買単価の上昇。
そして、1回で全て使わなかったり多くの人が商品券をもらうことで、百貨店に通う頻度が上がる▼購買頻度の上昇といったような効果があるそうです。
では、おこめ券との違いですが、エコノミストで昭和女子大学研究員の崔真淑さんによると、百貨店の商品券の場合、百貨店が1000円で消費者に販売し、消費者は当然、満額分を加盟店で使用します。手数料や経費などは百貨店側が負担し、加盟店側から手数料をもらっています。
一方のおこめ券は、JA全農と全米販が500円で消費者に販売しますが、このときに既に消費者が手数料を負担する形になっているので、販売店では440円分しか使えません。
コメの販売店側は、JA全農や全米販に手数料を払う手立てがないので、今のおこめ券の仕組みだと、おこめ券を買う消費者が手数料も負担しなくてはいけないということなんです。
経費率が高く、「おこめ券はどうなんだ」という議論や批判などを受けて、自治体は様々な方策を考えていますが、おこめ券を取り巻く一連の騒動を井上キャスターはどのようにみていますか。
井上貴博キャスター:
結局、消費者が負担する60円分が税金になるということは納得がいかないですよね。
星さんのお話にもありましたが、「族議員の利益誘導が票に繋がるのかな」とか、やはり自民党議員はこうやって業界と繋がっていて、国民に向けては「改革をしていくんだ」などと総裁選のときに話していましたが、結局、「団体・組織に向いた政治なのかな」と思って、そこに帰着してしまう気がします。
星さん:
このご時世に、いかにもアナログですよね。電子マネーなどの工夫ができないのかと思ってしまいます。
出水キャスター:
そもそも、我々は満額で使える商品券にもう慣れてしまっているところがあるので、「なぜ満額使えないのか」というモヤモヤに対してきちんと説明をしていって、改めて自治体はどうやってそのお金をきちんと使っていくのかというところが問われているのかも知れません。
井上キャスター:
最終的に、自治体がおこめ券導入を見送るなどの議論が今すごく活発になってきているのは、今後に繋がるのかなという気はします。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
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