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来場所で“大豊”両横綱は威厳見せられるか、大関昇進の安青錦など時代が大きく動いた今年の6場所【大相撲】

スポーツ
2025-12-26 06:00

大相撲は来年1月11日初日の初場所(東京・国技館)の新番付が発表され、11月の九州場所で初優勝した安青錦が大関に座った。


今年の6場所を振り返ると、時代が大きく動いた気がする。大関・琴桜が綱とりに失敗した初場所では、10度の優勝を誇り、序二段からの復活劇をみせた横綱・照ノ富士が引退。変わって2度目の賜杯を抱いた豊昇龍が横綱に昇進した。春、夏場所は大の里が連続優勝で綱をつかみ、年間2人目の新横綱が誕生。名古屋場所は平幕・琴勝峰に栄冠。秋場所では大の里が横綱初優勝し、納めの九州場所では安青錦が前相撲スタートでは年6場所制最速で大関を射止めた。


2026年は横綱に大関デビューする安青錦を加えた「3強」が優勝争いの軸と思われるが、ウクライナ出身の21歳には勢いがある。初土俵以来、負け越し知らずで、新入幕から5場所連続の二桁勝利も挙げている。怪我なく、低い体勢を維持するスタイルを守れるなら、新しい年で一気に頂点まで駆け上がる可能性も出てくるだろう。


一方、待ち受ける両横綱にはやや停滞感がある。今年の成績的には合格点と言えるだろうが、印象が今一つだからだ。まずは、先に昇進した豊昇龍。綱を締めた5場所で、途中休場した春、名古屋を除くと、3場所は12勝以上。夏場所は優勝争いにこそ絡めなかったものの、千秋楽で大の里の全勝優勝を阻み、秋、九州の2場所は連続で決定戦まで進んでいる。存在感はある。


それでも横綱での初優勝に届かない理由は、序盤での取りこぼしの多さに尽きる。特に平幕に対してすでに計10個の金星を配給している。九州場所もそうだったが1場所2個のハイペース。昇進後、2度目の途中休場となった名古屋場所では3日連続で配給し、その時点での3場所8個は、若・貴兄弟の兄、3代目横綱若乃花以来のワースト記録だった。


元々、下半身の粘りと投げの強さに定評はある26歳だが、簡単に捕まえようとして、立ち合いに安易な張り差しに行く姿勢が目に付く。これは相手が怖がれば効果はあるものの、脇を空けて上体が起きてしまうため、張られても構わず出てくる力士には後れを取る。188㎝、149㎏は決して大きくはない。後手を踏んでから逆転を狙うのでは、不覚を取る確率が増えるのは当たり前だ。


加えて、安青錦という苦手力士を作ってしまった。本割では3連敗。九州場所の優勝決定戦を加えると、4連敗になる。しかも、今後は常に直接、優勝を競い合う相手と言っても良い。直接対決で分が悪いのは致命傷になりかねない。


勝負はほとんど安青錦の快勝。だが、敗因は横綱の墓穴だ。低く、頭を下げてくる相手に苛立ち、豪快に投げ飛ばそうとして捕まえに行き、懐に入れてしまう。組み付けば、レスリング仕込みで横や後ろに回るのが上手い安青錦にペースを握られる。敗れてから、天を仰いでも、どうしようもない。


その優勝決定戦。場所中は番付通り西の支度部屋に豊昇龍。関脇の安青錦は普段は東に陣取っていたが、決定戦は番付上位者が東に回るために、本割での対戦とは反対に豊昇龍が東から土俵に上がった。しかし、勝ったのはまたも安青錦。優勝会見は東の支度部屋で行うのが慣例のため、花道の奥の通路で東に向かう安青錦と西に回る横綱がすれ違った。しっかりと前を向いた安青錦に対し、豊昇龍は目をそらした。主役と脇役の差がはっきりと出ていた。


豊昇龍は大の里には九州場所の不戦勝を除いても、本割では4連勝している。しっかりと当たる昇進前の立ち合いを取り戻すことが出来れば、取りこぼしや安青錦対策にも道が見えてくるはずだ。3度目の賜杯を抱くカギは、横綱本人の自覚にあると思う。


もう一人の横綱、大の里は6場所中、半分の3場所で優勝。通算5度目の優勝を飾った秋場所終了時点で、他の力士に16勝以上の勝ち数差を付け、すでに年間最多勝も決めていた。1年を通してみれば、その活躍には文句のつけようはない。しかし、九州場所に至っては最終盤に急失速した。


立ち合いからの両手突きで寄り切った13日目の安青錦戦で左肩を痛めたという。14日目の琴桜戦に敗れて、安青錦、豊昇龍と3人が3敗で並んだ千秋楽になって、プロ人生初の休場を選んだ。相撲協会に提出された診断書によると、「左肩鎖関節脱臼で1か月の安静を擁する」だった。この日の朝に、稽古場で師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)と話して、決断したとのことだ。


千秋楽の土俵では、十両取組の途中に行われる協会挨拶で八角理事長(元横綱・北勝海)が大の里の休場に「大変遺憾」と述べ、中入りの土俵入りでも豊昇龍登場の後には、「大の里は休場のため、土俵入りはありません」のアナウンスも流れた。大入り満員の館内は一部で小さなため息が漏れたが、大きな混乱はなかった。


それでも、千秋楽恒例の「是より三役」は急遽、横綱戦を抜いた3番に組み替えられた。東は平幕・義ノ富士、小結・隆の勝、琴桜に。西からは小結・高安、関脇・王鵬、安青錦の3人。結果的に結びの一番となった取組で安青錦が琴桜に敗れた場合は、不戦勝の豊昇龍が優勝という事態を招いていた。


当然、ファンからは休場の是非を問う声が出た。だが、当日の私は同じような状況だった師匠の現役時代を思いだしていた。


4横綱時代だった2017年春場所。新横綱だった稀勢の里は、12連勝のあと、13日目の横綱・日馬富士戦で同じ左肩付近を負傷。しかし、テーピングで固めて強硬出場し、14日目は横綱・鶴竜に敗れたものの、千秋楽では本割、決定戦と当時大関だった照ノ富士に連勝して、その前の初場所の大関での初優勝と合わせて2連覇した。その時も出場には賛否あったが、世論は稀勢の里の決断を支持。千秋楽は大歓声の館内も熱狂し、土俵の勝負、表彰式を褒めたたえた。


だが、稀勢の里はその時の無理がたたり、その後は怪我も長引いて15日間皆勤は10勝を記録した1場所だけ。結局、横綱在位12場所で10場所の休場。白鵬らモンゴル出身力士の前に立ち塞がった雄姿は、二度と復活することなかった。今回、心苦しい決断に至った経緯には大の里本人の意思もあるだろうが、愛弟子を思いやる師匠の方に「自分と同じ轍を踏ませたくない」という思いがあったのではないか、と感じた。


肩の辺りは怪我が治りにくいと聞く。特に脱臼だと癖にもなる。九州巡業も休場した大の里が、初場所に間に合うのか。まだ昇進して3場所だ。25歳には輝く未来がある。個人的には今、無理をする必要はないと思う。192㎝、187㎏の体を活かした「らしさ」が戻った時こそ、復活の時だと信じる。


(竹園隆浩/スポーツライター)


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