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バレーボール日本代表、30歳・石川祐希が立つ“最高の特等席”から見える景色「今、僕はもっと強くなれる」【実況席から見える世界】

スポーツ
2026-06-11 17:00

バレーボールの世界三大大会のひとつ、ネーションズリーグ(VNL)の男子大会が6月10日に開幕。予選ラウンド第3週(7月8日~)は男女ともに大阪で開催される。23年大会では銅、24年大会では銀と2大会連続でメダルを獲得した男子日本代表も、前回はまさかの6位。その後の世界バレーでも予選ラウンドで敗退し、苦しいシーズンをおくった。


【写真で見る】石川選手と髙橋藍選手


2大会ぶりの表彰台を狙う選手たちの素顔を、自身も中高でバレー部に所属(セッター)し、入社直後の98年から現場取材を重ねてきた、実況のTBS新タ悦男アナウンサーがリポートする(第6回)。


人間的にも選手としてもさらに成長できる機会

『30歳は、上からも下からも学べる“最高の特等席”』

石川祐希のこの言葉には、 日本代表の現在地と、石川自身の立ち位置が凝縮されている。


「30代って言っても、まだ30代になって1年目。チームメイトから『祐希、もうオッサンだな!』って言われる回数が、増えて、『あぁ、これが“歳を取る”ということのリアリティなんだな』と気づいたくらい」


そう笑った直後、 石川の言葉は一気に熱を帯び始める。


「今の日本代表のコートを見渡した時に、若いメンバーが間違いなく、もの凄い勢いで増えているっていう“嬉しい実感”は強くある。 西田(有志)にしても、(髙橋)藍にしても、あとは大塚(達宣)、甲斐(優斗)も含めて、もう数えれば、年齢的には“25歳”とか、それくらいの中堅の一番動けるポジションの位置にみんなが上がってきている。彼ら若い選手たちも、これまでにフル代表で色んな過酷な海外の経験をして、一人のプロのアスリートとして劇的に大きく成長している。


今シーズンの代表合宿に入ってみて、逆に彼ら進化した若い世代から、キャプテンである“僕が学ぶもの”の方が、これからより多くなると本気で思っている。彼ら若い選手たちも、この1年間で全く新しい経験をたくさん積んできている。例えば、西田や藍がそれぞれのチームでキャプテンを務めたり、大塚に関しては、イタリア(セリエA)のミラノに挑戦して、今シーズンで2年目の過酷なリーグをサバイブしてきた。甲斐も、この前のSVリーグのファイナルの大舞台に出てスタメンで活躍して、凄い経験をしている。彼らがコートの上で発する“一言ひとことの言葉”だったり、日々の練習に対する“取り組み方、向き合い方”だったり、『彼らはこの1年で、一体何がどういう風に成長してきたのか?』と、僕が一歩引いた目線で見ることが、すごく楽しみ。 そうやって成長した若い世代から、新しい感覚を学ぶことが、今シーズンは絶対に増えてくる。


今までは、代表の中でも『自分の中で、どんどんどんどん個人の技術を成長させて上に引っ張っていく!』という、自分の矢印だけで突っ走っていたが、今の日本代表は、自分の周りに“心身ともに劇的に成長した強いメンバー”がこれだけたくさん増えてくれたので、僕が若手から新しいエッセンスを貪欲に学ぶことが増えれば、結果として『僕自身が、今よりももっと、さらに強くなれるんじゃないかな』と強く思える。年齢が高くなれば高くなるほど、視野が広く持てるので、いろんな新しい経験ができる。技術の吸収ができる。僕は今の30歳というポジション(位置)にいる方が、“周りから学べることの数が、格段に多い”と思う」


若手の成長が石川の進化を加速させる。


「若いうちは、コートの上で「ベテランの背中を見て学ぶこと」しか、視点としてできないことが多い。下の世代を見れば、人生の経験値としても、大学を卒業して「社会に出て、プロとしてリアルに経験している時間」の絶対数が、僕に比べたら圧倒的に少ない。でも、彼らが25歳とかの中堅になれば、社会にもプロとして出て、色んな経験をして、自分の確固たる考え方を持ってバレーをするようになる。そうなった彼らから、上の僕はたくさんのことを学べる」 


石川は今、 チームの真ん中にいる。


「30の位置にいれば、まだ自分よりも上の先輩(山内晶大・深津英臣ら)の背中を見て、大人のベテランの在り方を学ぶこともできる。同時に、下(西田、藍、大塚、甲斐たち)の進化した世代の考え方も見て学ぶことができる。 この“上からも、下からも、すべての良い技術を同時に見て学び取れる贅沢な位置”というのは、自分が年齢を重ねて、ここまで来たからこそ初めて見ることができた、『最高の特等席の景色』なのかな、と思う」


「下の世代よりも僕の方がこれから“人間的にも選手としてもさらに成長できる機会”は、誰よりも多いと思っています」


だからこそ石川は自分自身が進化を続けなければいけないと考える。誰よりも。


「自分自身が誰よりも日々の練習に対して厳しく、1球に対してしっかりと打ち込んで、アグレッシブな背中を見せれば、僕の練習の雰囲気を見た周りの選手たちが、『自分はこれじゃ足りないな』と気づくと思うし、雰囲気も締まる。そうなれば、彼ら自身が勝手にコートで力を発揮すると思う。自然と、チームが引き締まってくる」


反面厳しさも持ち合わせる。


「世界で勝つための高いプロ意識が持てない人は、もうこのハイレベルな代表の中からは 自然淘汰(しぜんとうた)されていく。それくらいのシビアな世界だというのは、みんな分かっているはず」


キャプテンとして情熱的にチームを鼓舞し、時として冷徹にもならなければいけない。


ロラン・ティリ監督が見る“石川祐希”

求められるものはまだある。


『本能の勝負師』。ロラン・ティリ監督は石川についてそう評する。


「石川は今やアウトサイドの絶対的なリーダー。まず彼が“自由(Free)”にプレーする姿を見たい。ゲームは非常に速く進んでいます。コート上の選手は本能を理解し、どうプレーすべきかを自分で判断しなければなりません。ルールに従うのではなく、時には“自由”にプレーしてほしい」とティリ監督は話す。


「監督が、自分のプレースタイルを信頼して考えてくれているのであれば、その裏には重い“責任”が、同時にコートの中で伴ってくる。その自由の裏にある“結果(勝敗への全責任)”も、同時に自分たちの実力として100%問われる部分。与えられた自由なコートの中で、自分が絶対に100%“結果”を出せることが重要になる。厳しい勝負どころで結果を出さないと、監督から信頼してフリーに(自由に)させてもらっている意味が、何一つ無くなってしまう。日々ただ気持ちよく打つんじゃなくて、自分の頭で最善の戦術を考えながら、その自由の裏にある重い責任を、キャプテンとしてしっかりと背負って立ちたい」


これは キャプテンとしての覚悟そのものだ。


進化の先にあるロス五輪に向けてのカギについて問うと、「『“サイドアウト(レセプションからの最初の攻撃)”をきっちり、完璧に1本で切り返す』こと。 そこは、僕がペルーシャにいた時も全くそうだし、世界一になるためには、このサイドアウトを毎セットきっちり(高い決定率で)切らなければ、勝負の世界において日本代表に勝ち目は無い。そこは大前提。その上で、そこからブレイク(連続得点)を奪うための戦術としては、『“サーブ”が、今シーズンも絶対に一番の決定的な鍵(キーポイント)』になる。 ブロックやディフェンスの関係性(トータルディフェンス)に関しては、今の日本のクオリティは決して悪くない。レシーブが綺麗に相手に返されて、真ん中から“ミドルのクイック(速攻)”を世界に使われるケースが多くなると、日本の高さだとちょっとディフェンスとしてはきついところもあるが、今年は真ん中のミドルブロッカーに、サイズのある大きい選手たちが万全のコンディションでしっかり戻ってきたので去年よりは効果は上がると思う」。


道筋は見えている。あとは準備をやり切ること。小さな積み重ねしかない。


「『自分たちはこの大会に向けて、これ以上もう何もやることは無かった。これ以上無いくらい、世界一の最高の準備を100%やり切った!』と、自分たちの胸を張ってハッキリと言えるような準備を、最低限しておかなければいけないと思っている。 そこまで『自分の持っているすべてを整えた!』と言える、それだけの強い、隙のない覚悟と自信を持って、今年のアジア選手権の公式戦のコートに臨まなければいけない。そうでなければ、去年の世界バレーでの悔しい敗戦からの“学び”、チームとしての“本当の成長”に繋げられたとは言えない。負けを恐れずに、これ以上ない準備をやり切ることは、僕にとっては“結果”以上に、アスリートのプライドとして、今シーズン一番大切にしたい、こだわっていきたいポイントなんです」


30歳は、上からも下からも学べる最高の特等席。


その景色の真ん中で、石川祐希は今日も自分に問い続ける。
「もっと強くなれるか」と。


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