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地域住民が運行する「菊名おでかけバス」
今回は、外出支援のための「菊名おでかけバス」を取材しました。
山坂が多い横浜市・菊名地域の住民たち自身が、地域の人たちの外出の足となるべく週に一回、火曜日に7便のワゴン車を運行しています。
住宅街から菊名駅と3つのスーパーやホームセンター、区役所などを結ぶルートを一周する会員制の地域コミュニティ交通ですが、「バス」といっても実際に使用しているのは活動に理解を示してくれている方から借りているミニバンです。
一度に乗れる住民は最大5人で、利用は年間1000円。ワゴン車には、ボランティアで乗り降りの時の手伝いをする添乗員とドライバーがいます。実際に私もバスに乗ってきました。
取材した日は、毎週このバスを午前・午後とフル活用している一人暮らしの男性、矢部さんに出会いました。
利用者の男性
「僕はもう85ですよ。(日課なんですか?)日課ったって、一人暮らしだから来なきゃ食べられないじゃん。添乗員さんが皆運んでさ、うちの窓の下まで運んでくれるんだもん。僕はこれが無かったら生きていけない。あとはこれで1週間に一回きょう買い物して、で、きょうの午後は歯医者行くのにまたこのバスを使って行って。もうフル回転ですよ私は。(ハハハ…たまに居ないとどうかしたのかなって?)
そういないとね、どうしたんだよ彼女って。いつも乗る人決まってるしね。挨拶ができてさ、ああ元気でいらっしゃるなと、よし俺も元気でやるぞっていう気になるわけね」
さらにこのエリアは旧道も残っていて一方通行や相互通行の道がとても多く、狭いのも特徴です。高齢者には、高台の住宅地まで登るのはとても難しい場所なんです。実はこのバス「降りる場所はコース上であれば自由」という住民運行ならではの良さもあります。
菊名おでかけバスが始まって今年で15年目になりますが、単に移動手段としてだけではなく車内は交流の場としても役立っています。
93歳の女性を含む、乗客3人が和気あいあいと車内でしゃべっている様子です。
乗客3人の会話より
「88歳だけれど昔はこの辺に遊びに来て…あ、あの人が乗る!あの方乗るの?」
「あの人ね、山本さんていうの。あなた名前よく知ってるね」
「おはようございます、山本です。よろしくお願いします。おはようございます。(閉めまーす)」
「今日でも天気よくてよかったですね、なんかきょう雨かもっていってましたもんね」
「死にそうだ死にそうだって言ったら、カタヤさん5年前から言ってるよって。5年前から死ぬ死ぬって騒いでるっていって。大変よ起きるのも、寒いから」
「あ、どうもありがとうございます。また1時間後に乗る?じゃあまた帰りお願いします」
このように、地域住民が自分たち自身の外出支援に加えて、利用者同士の絆も繋いでいるわけです。
この「菊名おでかけバス」は「コミバス市民の会」が運行管理など全てを担っています。ボランティアですが、運転技術の研修なども定期的に開催しています。さらに、運営側ももれなく全員年間1000円の会費を納入しておでかけバスを支えています。
私が取材した日は、世話人の秋山さん・砂田さん・知久さんの3人がいました。3人は集まると早速、この日の道路状況について情報共有をしていました。地域住民ならではの会話です。
運営側3人の会話より
「今日はね、すごいハプニングが色々あって、郵便局のところが工事してて入れなかったんです。それでパスしちゃったのよ」
(あそこ、昨日車停まっててさ、通れなかった。)
「やっぱり通れなかった?だからああいうようにちょっと寄って左折して、前を確認してからサミットの方に戻らないとね。ふふふ」
地元の事を良く知るメンバーで細かな話し合いを積み重ねて、円滑な運営ができています。しかし、もちろん課題もあります。運転手は76歳までとする年齢制限によって毎年少しずつ担える人も減っていくなど、避けられない問題もあるそうです。
運営スタッフ
「77になったら終わり。人によって個人差があるので年齢でっていうことになっているんですよね。あと車ですね。車が結局、厚意でお借りできているからその方がいなくなったらどうなるんだろう、困るなって。ずっと同じメンバーでね、高齢化してきましたから私たちも。後に続く人を仲間に入れることがすごい大きい課題かな」
「菊名おでかけバス」では運転ボランティアを募集中ということですので、興味のある方は、「菊名おでかけバス」のホームページをご確認ください。また現在、菊名おでかけバスの会員はおよそ90人ですが、乗らないけれども活動を応援する方々もいるそうです。
住民たち自身で「移動の自由」を保障している「菊名おでかけバス」は、全国に多くある交通の不便な地域の手本を示しています。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当・TBSラジオキャスター 加藤奈央)
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