生活支援策として全世帯対象で「おこめ券」の配布が始まった東京・台東区。1世帯当たり4400円分、子育て世帯には8800円分、すでに届いた家庭もあるようです。
【画像を見る】“おこめ券”で買えるのはコメだけじゃない?いくつかの店舗で「店内の商品全てと引き換え可能」
台東区は全世帯に4400円分の「おこめ券」配布
井上貴博キャスター:
農林水産大臣が小泉大臣から鈴木大臣に変わってコメ政策が大きく変わっていきそうです。
自治体の動きを見ていくと、東京・台東区の場合、子育て世帯と区切るのではなく、全ての世帯に対して「“おこめ券”1枚 440円分(希望小売価格500円)」を配布するということです。
“おこめ券”ですので、コメが買えるのはもちろん、「ドン・キホーテ浅草店など」「サンドラッグ(区内各店舗)」「業務スーパー 上野公園店など」「成城石井 アトレ上野店など」では、店内の商品全てと引き換え可能ということです。
つまり、コメ以外にも置いてある商品であれば全て使えるというお店もあります(台東区HPより)。
スピード重視の物価高対策 現金給付でない理由
井上キャスター:
なぜ“おこめ券”にしたのか。台東区・企画財政部の三谷洋介さんに話を伺うと、「現金給付は時間がかかる。とにかくスピード感を重視し『おこめ券』になった」ということです。
台東区・企画財政部の三谷さんによりますと、「現金給付」の場合、マイナンバーカードはある程度広がりましたが、全て把握できているわけではありません。
そのため、まず全区民に対して申請書を役所から送る必要があります。申請書が届いてからそれぞれが口座情報などを申告する必要があり、かなり時間がかかります。
一方、「おこめ券」の場合、もう既にある“おこめ券”を、住民登録された住所に全て配布すればできるということです。
しかし、「スケジュールはかなりタイトでした」とのことで、現場は大変だったようです。
8月ごろに“おこめ券”配布を区として検討を始め、9月8日にはもう区議会で予算を成立させました。そして、10月24日におこめ券の配布を開始したとのこと。
台東区や現場の皆さんのご尽力があって、スピード感を持って配布することができたということです。こうして物価高騰対策の一つ大きな手を打つことができたというわけです。
スポーツジャーナリスト・大阪芸術大学教授 増田明美さん:
分かりやすい“おこめ券”ということで、すごくストレートでいいと思いました。また、台東区は私のイメージでも、子育て支援などに手厚い感じがするので、そこから始まったのかなという印象ですね。
井上キャスター:
台東区は「こども商品券」など、いち早くコロナ禍などでも配布していたので、今まであった経験も活きているのかもしれません。
地方で広がる「おこめ券」政府としても後押しか
井上キャスター:
台東区の他にも、各自治体を調べると、全国で「おこめ券」配布は広がっていました。
▼茨城・日立市
18歳以下の子がいる世帯に4400円分(10月23日までに配送済み)
▼兵庫・尼崎市
1世帯あたり2200円分(10月31日までに配布)
▼愛媛・今治市
1人あたり2200円分(7月末日までに配布済み)
“おこめ券”の配布が広がっていて、「政府として後押ししたい」と話しているのは鈴木憲和農水大臣です。
鈴木憲和 農水大臣
(10月28日)
「(物価高政策について)これはお米券と前から申し上げております」
(10月24日)
「重点支援地方交付金で対応しているところもある。そういう地域を後押ししていく」
「重点支援地方交付金」では、国がゼロから制度設計をする必要がありません。制度設計は地方にお任せします。
地方の自治体は、誰にどう配るかなど柔軟性が高い判断ができます。今回は独自の物価高対策として“おこめ券”です。交付金については国がバックアップするというものです。
(みずほリサーチ&テクノロジーズ 主席エコノミストの対木さおりさんによると)
コメの値段を適正価格に持っていくためには、根本的な違う政策が必要でしょう。また、おこめ券配布だと値段が上がるばかりな気もします。そういうところも考えながらと思いますが…
TBS報道局 岩田夏弥 政治部長:
「重点支援地方交付金」という制度は、高市氏が総裁選の時も一つのアイデアとしてどうかと話していました。総理になる前、そして、総裁になった後も話しています。ところが、自民党と維新の連立合意の中にはこの言葉は入っていません。
これはやらないのかとも思いましたが、10月21日の総理記者会見で、「自治体向けの重点支援交付金を拡充することを考えている」と話しています。
これから始まる国会の補正予算をどうするかという議論の中で、このテーマが入ってくるのかどうかですよね。
実現するのであれば、全国の自治体に国がお金を出して、各自治体がそれぞれ使い道を考える。例えば“おこめ券”を配るということもできるかもしれません。
しかし、それが少数与党の中で実現するのかどうか。臨時国会の中でこの後、話し合いが続いていくことになりそうです。
出水麻衣キャスター:
一旦政策が通ったとしても、息の長い対策ではないですよね。付け焼刃的な気もしていて、その先のコメの価格をどうするかというところも含め、議論を進めてほしいです。
岩田夏弥 政治部長:
実現したとしても今回1回のみという措置ですね。その先のコメ政策を根本的にどうするのかは考えていかないといけないですよね。
「需要に応じた生産」石破政権の“増産”ではなく…
井上キャスター:
鈴木農水大臣や高市総理からコメ政策について、あまり語られることがないので、どのように石破内閣から変えようとしてるのかは、まだよく分かりません。
しかし、鈴木農水大臣が話すには「価格は需給バランス、マーケットで決まるものなので、政府が価格について口を出してはいけない」ということです。
鈴木農水大臣は「需要に合わせて生産をしていく」とおっしゃっています。そうすると、やはり介入するということになるのか。また、「備蓄米の放出、増産には後ろ向き」で、石破内閣と全く正反対のことを話しています。
需給バランスで考えると、農水省は需要をずっと見誤ってきて、数字がおかしかったから今年これだけ値段が上がったと言われています。その整合性を含めて鈴木農水大臣はどのようにお考えになっているのでしょうか。
岩田夏弥 政治部長:
小泉前農水大臣は「需要に応じた増産」という言葉を使いました。つまり「これからコメは増産していきましょう」という方向に舵を切ろうとしました。
しかし、今回新しく就任した鈴木農水大臣は、似た言葉ですが「需要に応じた生産」ということで、必ずしも増産の方向だけではないという考えです。
鈴木農水大臣が話してる中では、「海外のマーケットや市場に売れるかどうかなど、しっかり拡大した上でないと無責任にいきなり増産だけしても問題があるのではないか」ということです。
そのため、石破政権時の「増産」からは修正している状況です。これもまた国会でおそらく議論の大きいテーマになっていくでしょう。
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〈プロフィール〉
岩田夏弥
TBS報道局 政治部長 元官邸キャップ
小渕総理以来、主に政治取材を担当
増田明美さん
スポーツジャーナリストとして「細かすぎる解説」が話題に
ロサンゼルス五輪 マラソン日本代表
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