アメリカが行った南米ベネズエラに対する軍事攻撃。トランプ大統領は、ベネズエラ新政権がアメリカ側の意向に従わない場合、「再び攻撃する」と警告しました。国際秩序が揺れる中、世界はどこへ向かうのか、そして日本への影響は。
ベネズエラ大統領 裁判出廷へ
報道陣が詰めかけたニューヨークの拘置所前。
先ほど、この拘置所に収容されていた南米ベネズエラのマドゥロ大統領が車から降り、ヘリコプターに乗り込む姿がとらえられました。
降り立ったヘリから出てきたあと、再び車に乗り込んだマドゥロ氏。その後、市内の裁判所に入りました。
マドゥロ氏はこのあと、日本時間の6日午前2時ごろに開かれる裁判に出廷する見通しです。
3日、ベネズエラの首都カラカスで行われたアメリカ軍による大規模攻撃。
150機以上の戦闘機や爆撃機などが投入され、ベネズエラ側の死者は80人に上ったとニューヨークタイムズが報じています。
死者80人…在住日本人が語る恐怖
攻撃を受けたカラカス在住の日本人は…
カラカス在住の日本人男性
「攻撃されたエリアに近い所に住んでいる友人とボイスメッセージでやり取りしていたときは、ものすごい、ものすごい音でした。びっくりしました。あっち(軍の近く)にいた人たちは、かなり恐怖を感じたのでは」
マドゥロ氏と妻は、カラカスにある自宅で拘束されました。
精鋭部隊が急襲 “模型”で演習
この軍事作戦は、アメリカ陸軍の精鋭部隊「デルタフォース」などが実行したといいます。
アメリカ ケイン統合参謀本部議長
「諜報チームの仲間が何か月もかけてマドゥロを捜し出し、行動パターンや居住地、移動経路、食事、服装、ペットまで把握した」
アメリカ・フロリダ州の自宅で、今回の作戦を見守ったトランプ大統領。
ブルームバーグによりますと、アメリカの情報機関「CIA」が2024年8月からベネズエラに潜入。ベネズエラ政府の内通者から協力を得て、マドゥロ氏の行動を監視していました。
さらに、デルタフォースの隊員らが、マドゥロ氏がいた建物の模型を作り、突入の予行演習を行っていたといいます。
拘束されたマドゥロ氏と妻は、航空機でニューヨークへと移送されました。
ベネズエラ マドゥロ大統領
「グッドナイト ハッピーニューイヤー」
トランプ氏 “再攻撃”を示唆
一夜明け、取材に応じたトランプ氏。
トランプ大統領
「ベネズエラ側が従わなければ、我々は二度目の攻撃を行う。“新政権”の行動次第だ」
ベネズエラの新たな政権がアメリカの意向に従わない場合、再び攻撃を行う可能性を示唆したのです。
ベネズエラ ロドリゲス副大統領
「我々はマドゥロ大統領夫妻の即時解放を要求します」
ベネズエラの「大統領代行」に任命されたロドリゲス副大統領は、攻撃の直後、マドゥロ氏への忠誠を示していました。
しかし4日に発表した声明では、「国際法にのっとった相互発展に向け、協力をアメリカに呼びかける」としています。
トランプ氏の真の狙いとは?
今回の軍事作戦を受けて、隣国コロンビアでは、避難しているベネズエラ人が歓喜の声をあげました。
ーーベネズエラに帰りたい?
コロンビア在住 ベネズエラ人
「帰りたい」
「私たちを支援して快く受け入れてくれた国々に感謝するが、国の再建のために帰国しなければならない」
この街には生活苦などからベネズエラを逃れた人が大勢暮らしていて、マドゥロ大統領の拘束を祝う人たちもいました。
ベネズエラへの攻撃の狙いは何なのか。
トランプ大統領は、アメリカへ流入する麻薬にマドゥロ政権の関与があると主張。ベネズエラ近海では、麻薬密輸船とみなした船舶への攻撃を続けてきました。
マドゥロ大統領と妻は、麻薬の密輸を共謀した罪などで起訴されています。
トランプ大統領
「非合法な独裁者マドゥロは、死に至る違法薬物を莫大な量、アメリカに密輸した巨大な犯罪ネットワークの首謀者だった」
しかし、軍事作戦の本当の狙いは麻薬対策ではないと指摘されています。
トランプ大統領
「ベネズエラは死んだ国だ。石油企業による巨額投資で復活させる。企業の準備は万端だ」
世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラですが、反米政権のもと石油の大半は中国に輸出されてきました。
そのためアメリカには、中国が権益を握ることへの強い危機感があったのです。
さらにトランプ政権の大きな狙いの一つが、西半球での“覇権”の確立です。
トランプ大統領
「新たな国家安全保障戦略のもと、アメリカの西半球での優位は二度と揺らぐことはない」
トランプ政権が2025年12月に発表した「国家安全保障戦略」。
中南米地域を含む「西半球」をアメリカの勢力圏=いわば“縄張り”と位置づけ、権益を確保する姿勢を強く打ち出しました。
マドゥロ政権は「反米」で、中国やロシアなどと関係を深める厄介な存在です。
それを排除し、「親米」の政権を樹立することで「西半球」から中国などの影響力を取り除きたい意向があったとみられています。
国際政治に詳しい専門家は…
地経学研究所 鈴木一人所長
「中南米の国々に対して、アメリカに対する麻薬・武器の取引をやっていると、アメリカはいつでも拘束するぞという、脅し・アピールもあった。中南米諸国がアメリカに対して、抵抗することを抑止する目的もあると思う」
「国際法上の主権侵害」批判やまず
ベネズエラへの攻撃は、議会を通さずに実施されました。その理由について、トランプ政権はこう説明しています。
ルビオ国務長官
「これは議会に通知するような任務ではなかった」
トランプ大統領
「付け加えると、議会は情報をもらす傾向にある。それはまずい。そうなったら結果も違っただろう?」
ただ、野党議員から「この戦争は違法だ」という声が上がっています。
今回の攻撃について、鈴木氏は、「国際法上の主権侵害」にあたると指摘した上で…
地経学研究所 鈴木一人所長
「国際法の逸脱だとしても、それは国際法の方が悪いというのがトランプ大統領の考え方。アメリカの安全を守ることが最優先であって、自分たちを守るためにはそれを破っても仕方がないという発想であることは間違いないと思う」
まもなく国連では、安全保障理事会の緊急会合が開かれますが、アメリカは常任理事国のため、都合の悪い決議案には拒否権を行使できます。
今回の攻撃をロシアの外務省は「武力による侵略行為」と非難。
中国の習近平国家主席は、アイルランドの首相との会談の中で、トランプ政権を念頭に「一方的ないじめが国際秩序に深刻な打撃を与えている」と批判しています。
次はグリーンランド?国際秩序は
しかしトランプ氏は…
トランプ大統領
「今、グリーンランドはロシア・中国の船だらけ。国家安全保障のためにはグリーンランドが必要。デンマークには無理。これだけは言える」
鉱物資源が豊富なデンマーク領グリーンランドへの介入についても言及。
国際秩序の行く末は…
地経学研究所 鈴木一人所長
「法律を守ることで成り立っている国際秩序が、どんどん苦しくなってきている。国によってはやはり自衛をしなければ、場合によっては核開発も含む防衛力の強化ということを考える国も出てくるだろう」
アメリカの同盟国・日本はどう対応していくのか。
高市総理
「邦人保護には万全を期すとともに、ベネズエラにおける民主主義の回復、および情勢の安定化に向けた外交努力を進めてまいります」
アメリカ軍の攻撃の是非については、言及を避けました。
揺らぐ国際秩序 アメリカ国民は?
小川彩佳キャスター:
他国に乗り込んで敵対する大統領を拘束するという異例の事態です。
藤森祥平キャスター:
マドゥロ大統領は、ニューヨーク・マンハッタンにある裁判所に入りました。ベネズエラの新しい政権の運営方法などの続報は、現地報道も含めて入ってきましたか?
ワシントン支局長 涌井文晶記者:
こちらのニュースでも、マドゥロ大統領の動静や今後のベネズエラの運営、アメリカはどのように関わるのかというようなことが、ずっとニュースで報道されています。非常に関心が高いです。
藤森キャスター:
国際法違反すら気にしないような、今回アメリカが単独で、しかもトランプ政権だけが、実行してしまったということですよね。
小説家 真山仁さん:
ベネズエラの国に、いろいろと問題があったかもしれませんが、独立国にいきなり軍を持っていって大統領を拉致して、自分の国に連れて帰るという、こういう国がロシアのウクライナ侵攻を非難できるのかと思います。そういう意味では、これは「戦争をした」に近いという感じがすごくします。
アメリカでは、このようなことに関して「こんなのおかしいだろ」という大きな声が上がったりはしていないのでしょうか?
ワシントン支局長 涌井文晶記者:
世論の受け止めという意味では、真っ二つに割れているというのが現状です。
「おかしいだろう」という声も上がっていますが、「トランプ大統領よくやった」「独裁政権を打倒した」というような声も出ています。
ワシントン・ポストが5日、ベネズエラへの米軍派遣に対する簡単な世論調査を発表しました。
【ベネズエラへの米軍派遣】(ワシントン・ポスト)
▼賛成:40%
▼反対:42%
▼わからない:18%
まさに真っ二つに割れており、これは1000人程度への世論調査という簡易的なものですが、大きな世論調査をやっても、おそらくこのような結果になるのではないかと思います。
小川キャスター:
トランプ大統領の支持者の皆さんの中での賛否はどうなのでしょうか?
ワシントン支局長 涌井文晶記者:
トランプ大統領の支持者は基本的に、例えば「ベネズエラからアメリカに亡命で逃れてきたような方々もたくさんいて、そういう人たちは喜んでいるじゃないか」と。独裁政権を打倒したことは、アメリカの安全保障にもプラスであり、賛成の声が多数となっています。
一方で、アメリカファーストという意味からすると外国への関与、特に軍事介入のような形で、それが長引くようなことになると、アメリカのためにならないのではないかという声は上がっていますが、トランプ支持者の中ではまだ限定的と言える状況です。
藤森キャスター:
新しいベネズエラの政権が、アメリカの意に沿わなかったらまた攻撃すると言っていますが、本気でそのようなことを狙っているのでしょうか?
ワシントン支局長 涌井文晶記者:
これがどこまで脅しなのか、本気なのかというところが、今アメリカの中でもまさに議論になっているところです。
本格的な介入は避けたいというのは、おそらくトランプ政権でも本音でしょう。しかし、「意にに沿わない形であれば」というふうに言っており、この間トランプ大統領はずっと、ベネズエラに対して強い圧力をかけていて、最終的にあのような形で軍事的な介入を行い、大統領本人の拘束まで行ったということから見ると、決して単なる脅しではないとみられているところです。
トランプ氏 今後のシナリオは?
藤森キャスター:
トランプ大統領は、ベネズエラだけではなく、狙いとしてコロンビアへの攻撃、さらにはグリーンランドの領有にまで踏み込んだ発言をしています。この辺りもどこまで本気なのでしょうか?
ワシントン支局長 涌井文晶記者:
トランプ政権は今、「西半球を重視する、ここは自分たちの縄張りなんだ」ということを強く打ち出しており、それを「国家安全保障戦略」という戦略文書でも明確に表明しています。
そのため、コロンビアは今、左派政権という状況であり、中国との関係などを深めているとということがあります。
やはりアメリカの近くでそういう政権があるということは、トランプ政権にとっては厄介な動きであるというふうに見ており、実際に「ベネズエラでやったようなことをやるんじゃないか」とコロンビアに思わせる、あるいは他の中南米の左派政権に思わせるというところもあり、実際に動くというオプションは全く排除されていないという状況です。
小川キャスター:
今後この動きがどう波及していくのでしょうか。そうした中で、各国様々な反応が出ていますが、高市総理は今回の攻撃についての正当性については、全く言及していません。スタンスが問われますよね。
小説家 真山仁さん:
やはり平和憲法があり、平和を訴える国・日本という意味でも、さらに台湾有事のリスクもあるわけですよね。これについて何もコメントしないと、アメリカも中国もいつでも台湾有事をやるのではないかということを、そのまま見過ごすのかと思ってしまいます。
日本としてちゃんと「何をやってるんだ」と、アメリカにぜひ質してほしいです。
藤森キャスター:
自制を求める発言ができるかですよね。
小川キャスター:
同盟国だから黙るのか、同盟国だからこそ問うのか。
小説家 真山仁さん:
同盟国として問わなきゃいけないと思います。
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<プロフィール>
真山仁さん
小説家 2004年「ハゲタカ」でデビュー
最新作は能登地震がテーマの「ここにいるよ」
涌井文晶
ワシントン支局長
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