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冷え込み続く日中関係…岐路に立つ日本企業の中国ビジネス 生き残りの鍵は背を向けず“対話の維持”と“日本ファンのつなぎとめ”

海外
2026-01-09 07:00

高市総理の台湾有事をめぐる国会答弁に反発を続ける中国政府。
今年に入ってからも日本への渡航を控えるよう注意喚起を繰り返し、1月に予定されていた日本の経済界の代表による北京訪問も延期となるなど関係改善に向けた見通しは立っていません。


【写真を見る】北京首都国際空港 日本行きの便の手続きカウンター(去年12月)


こうしたなか、中国で活動する日本企業は2026年をどのように乗り切ればよいのか?中国で日本企業のビジネス展開支援などを行っている日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所の森永正裕副所長に聞きました。

※インタビューは去年12月16日に行いました。


日中関係悪化で「旅行」「航空」「エンタメ」に打撃

Q.日中関係の悪化は中国で活動する日本企業にとってどのような影響がありますか?


森永副所長
現時点で最も影響を受けているのは、人的往来の激減によって収益が悪化している旅行関係の企業や航空会社などが挙げられると思います。現在、日中間の航空便は便数も減っていますし、既存の便も小型機に変更していますが、それでもだいぶ空席率が高い状況になっているようです。


次に影響が大きいのは、音楽や映画など文化関連の産業が挙げられると思います。浜崎あゆみさんをはじめとした多くの日本人アーティストのコンサートなどが中止になっています。すでに開催が決定し準備が進められていたコンサートが中止に追い込まれ大きな損失が出ています。関係者の中には、当面の間、中国で日本人のコンサートや日本関係の文化イベントを実施するのは厳しいだろうという見方がありますので、そうなってくると機会損失が計り知れないというようなことも言えるかと思います。


今、中国が実施している措置、サービス分野における非合理的な規制についてはGATS=サービスの貿易に関する一般協定(サービス貿易の障害となる政府規制を対象とした多国間の国際協定)の枠組みによる対抗措置を検討してもいいのではないかと指摘する専門家もいます。私も個人的にはそういった対抗措置も十分にあり得るのではないかと思います。


もう一つの特徴としては、過去に日中関係が悪化したときとは異なり、今回は反日デモのような市民の行動はほとんど見られません。中国政府も今回それは望んでいないというように思います。


通商貿易に関して1つ言えるのは、中国政府による日本産水産物や日本産牛肉の輸入禁止措置について、日本側は措置の撤廃を期待しているところですが、残念ながらこの問題の解決については若干遠のいたという見方が現実的だと思います。


「メンツ重視」から「コスパ重視」へ 消費行動の変化捉える日本企業も

Q.大手回転ずしチェーン「スシロー」やショッピングモールを展開する「イオン」は新たな店舗を中国に出しました。


森永副所長
一部の日系の小売業や飲食業が好調なのは日中関係の変化に関わらず今の中国で起きている消費様式の変容によるものだと見ています。かつて中国人の消費の志向は、より高いものを買うとか最新のものが出たらすぐに買うとか自分の財力をアピールする、自分はこんなものが買えるんだという、いわゆるメンツを重視した消費様式でした。最近はそれがだいぶ変わりコスパを重視し、自分がそれを買うことで満足できるような消費に変わってきているというように思います。


日本も不景気のときがありましたが、生活にかかる費用をなるべく抑えつつ、それでもプチ贅沢はしたいといった考えがありました。金曜日にはちょっと高級なスイーツを買うとかですね。今の中国の特に若い消費者もそれに近いような感じなんじゃないかと思います。一部の日系の小売業や飲食業はうまくその消費者の志向に当てはまっているのだと思います。


中国は成長が鈍化し不景気感が漂っているとも指摘されていますが、その中でも消費が伸びている分野、さらに言えば日本のブランドがまだ競争力を維持しているような分野もあります。例えば、中国では健康志向がブームですが、これを背景にしたスポーツ用品ですとかアウトドアグッズ、それからヘルスケア関係の分野。それからいわゆるエモ消費、中国では「情緒消費」と言いますが、この広がりによる、例えばペット分野ですとかキャラクターグッズ、こういった分野が中国では消費を伸ばしています。今回、日中関係が若干微妙な状況になっていますが、こういうときだからこそ消費が伸びている分野、日本のブランドが競争力を持っている分野について中国の消費者から見放されないようにプロモーションをしっかりとやっていかなければならないと考えています。


日本企業は数ある選択肢の1つに…「日本ファン」を掴み続ける努力が必要

Q.2026年は日本企業にとってどのような努力が必要になるのでしょうか?


森永副所長
日中関係が緊張していることを理由に日本企業が自ら中国ビジネスを自粛するような姿勢は見せないということが大事だと思います。多くの日本企業が中国市場で大きな売り上げを得ていますが、実際、中国企業や第三国の企業の技術力やブランド力も高まっていますので、日本の製品やサービスの優位性は相対的に下がっていると思います。


そうした中、日本企業が自ら中国市場に背を向けてしまうとおそらく中国の消費者も日本の製品やサービスに対して目を向けなくなってしまう可能性もあるわけです。ひとたび日本の製品やサービスのブランドが中国にいる日本ファンを失ってしまうとこれを取り戻すのは容易ではないと思います。


それからもう一点は、日中関係が厳しいときだからこそ意識して中国企業との対話のチャンネルは維持かつ拡大を目指すことが必要だと思います。かつて日本企業が中国企業に対して大きな優位性を持っていた頃は、日本企業は黙っていても中国企業の方から取引や協力をしたいというアプローチがあったわけです。ただ、今の中国企業にとって日本企業の製品やサービス、もしくは日本企業との協力というのは数ある選択肢の1つに過ぎないということが言えると思います。日中関係が若干微妙なこういうときこそ日本企業は中国企業と対話をして、情報をしっかりと収集し、状況を認識するような努力が必要だと思います。


中国市場の放棄は死活問題に…関係悪化の時期こそ「踏ん張って稼ぐ」

森永副所長
中国で活動する日本企業は約3万6000社と言われています。世界に進出した日本企業の約4割がこの中国ということです。グローバルな売り上げの大部分を中国が占めるというような日本企業も多くあります。日中関係が良かろうが悪かろうがこれは変わりません。中国は引き続き重要な市場であるということは変わらないと思います。


ジェトロは毎年海外でビジネスを行っている日系企業にアンケートを実施しています。ここ数年、中国で事業を拡大しようという企業の比率はどんどん下がっていましたが、底打ちの兆しが見えました。中国でこれ以上の拡大は考えていないけれども、かといって中国市場を手放し中国から引き上げる企業もほとんどいないのが現状だと思います。多くの日本企業にとって中国市場を捨て中国から離れるということは死活問題だと思いますので、若干関係が悪くなっている時代こそいかに中国で踏ん張ってビジネスを続け、しっかり稼いでいくかということが大事だと思います。


懸念されるのは、日本の世論がより中国に対して厳しくなるということですが、これはこのような状況ですので避けられないと思います。ただ、例えば、アメリカの企業はトランプ政権が誕生し、米中関係が緊張したときも、したたかに中国ビジネスを続け稼いでいたというような企業がたくさんあります。


日本の国内世論が中国に対して厳しくなっても日本企業は中国で稼げるとこはちゃんと稼ぐと、続けられる中国ビジネスはちゃんと続けるというような姿勢で中国でのビジネスを継続しちゃんと稼いでいって欲しいと思います。


中国政府の強硬姿勢は中国企業にとっても大きな打撃に?

Q.中国政府の姿勢はこれまで日本関連のビジネスを展開していた中国企業にとっても打撃となるのではないでしょうか?


森永副所長
日本に進出し日本でビジネスをやろうと思っていた中国企業の方が影響は大きいと思います。例えば、今年、中国人の観光客は日中関係が悪化するまで過去最高の1000万人に届くのではないかと言われていましたし、コロナ前もものすごい数の中国人観光客が日本に行っていました。日本ではオーバーツーリズムという話もありますが、観光客が劇的に増えている、この変化はビジネスチャンスですよね。これを当てにして中国の方が日本で会社を作りサービスを提供するというようなことを多くやっていたと思うのですが、ここへのダメージは相当大きいと思います。


日本でビジネスを展開する中国企業への影響は日本企業以上に大きいのではないかと思います。日本に行かないようにと中国政府が言っていますので、日本でビジネスをしている中国企業も2026年をどう乗り越えていこうかと考えているのではないでしょうか。


聞き手 JNN北京支局 松尾一志


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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