
このところの日本株は“トランプ関税”の影響もあり、神経質な値動きが続いていますが、過去3年で見ると、大きく上昇しました。しかし、こうした日本の株高が「“衰退国”の象徴とも解釈できる」と、エコノミストの唐鎌大輔氏は指摘します。その理由とは?
【データを見る】世界の主要株価指数の上昇率トップ20は?対米ドルで「圧倒的に弱い」日本円の実状とは?
ロシアのウクライナ侵攻開始から3年 日本株は大幅に上昇
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔さん:
日本株はこの1か月間、下落傾向にあったので、なぜ日本株の上昇を話題にするのかと思われるかもしれません。
しかし、ロシアのウクライナへの侵攻が始まった3年前と比べれば、日経平均株価はものすごい上がってるわけですよね。
それでロシアとウクライナによる開戦の直後である2022年3月1日から、日経平均株価が史上最高値を更新した2024年7月11日までのパフォーマンスについて、世界の主要株価指数を算出しました。
ここで「1位は何だと思いますか?」と聞いても多くの人は答えられません。大体、日本の人はアメリカのダウ平均株価やS&P500を挙げますが…
株価の上昇率は「1800%以上」 意外な国が1位に
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔さん:
実際、1位はアルゼンチンの「メルバル指数」(上昇率は1838.93%)です。
国でいうと2位と3位がトルコ、4位がエジプト、5位がキプロス、6位がザンビアとなっています。
日本は日経平均株価が14位(上昇率は57.29%)、そして、TOPIXが16位(上昇率は54.40%)です。
今回、TOP20を算出したのですが、その中で、G10の国は日本しかいない。
では、このTOP20から何が導き出せるかというと・・・
株高の国々を悩ませる「2つの現象」
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔さん:
通貨安、そして通貨安による高インフレに悩む国の株価指数がたくさん入っているという事です。
実際、対ドルの自国通貨変化率をみると、上昇している通貨はカザフスタンしかないです。
他国はとてつもなく下落していますし、日本の円相場も約3割、下落しています。
なおかつ主要株価指数の上昇率TOP20の国は消費者物価指数も高いです。
(株価上昇率が)1位のアルゼンチンは151.9%、2位のトルコは61.9%となっています。
こうした国々の中に成熟国である日本が入ってきている現状から今の立ち位置をどう評価すればいいのでしょうか?
日本は衰退の方向に向かっている
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔さん:
これだけで、日本が「衰退国」だとか、「もう駄目だ」などと私は断じるつもりはないです。
しかし、近年の日本では、通貨安とインフレによる実質所得環境の悪化が課題視されていることを考えると、「新興国化」してるのではという議論はよくありますよね。
ただ、人が減っている「新興国」は、ひょっとしたら衰退の方向に向かっているのではないかと。
「いや、そうじゃないんだ」と。ロシア・ウクライナ開戦後の約3年間だけの、一過性の話だというのであれば、それはそうかもしれません。
そうかもしれませんが「状況証拠としてこういう話がありますよ」ということです。
それに・・・
「中進国」か それとも「衰退国」か
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔さん:
日米欧のCPI(消費者物価指数)ですが、いつの間にか日本が一番高いのです。
補助金の反動や円安といった一過性のものだと思いたい人が結構いるんですけど、2020年の時は、物価はマイナスだったわけですから。
そこから5年経って、日本はどう変わったのか?
先進国というステータスが、先進国と途上国の間にある「中進国」になったのか。
それとも「衰退国」というカテゴリーになったのか。
色んな解釈ができる市況変動がこの3年であったと言えると思います。
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【解説】
・唐鎌大輔 | みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト(著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』、『「強い円」はどこへ行ったのか』など)
【聞き手】
・竹下隆一郎
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