日本郵便をめぐる不適切な点呼の問題。約2500台の運送事業許可が取り消される異常事態は、お中元などで物流が増加するシーズンにどんな影響を及ぼすのでしょうか。
【写真で見る】「点呼」では具体的に何をチェックする? 佐川急便の実際の様子
日本郵便“不適切点呼” 影響は?
井上貴博キャスター:
安全運転の柱なので、チェックをしっかりとやってくださいという「点呼」の法令が定められているにもかかわらず、これほど杜撰だったということが浮き彫りになった日本郵便。
日本郵便の郵便・物流事業には3つの柱があり、まず、トラックなどは約2500台です。企業から荷物を集め、それぞれの郵便局に運ぶのが主な業務です。
そして、郵便局から皆さんのご家庭に運ぶのを主な業務としているのが軽自動車約3万2000台と、原付バイク約8万3000台です。
最初に問題になったのがトラックについてです。約2500台が不適切な点呼をしていたということで、国交省の許可取消処分となりました。5年間使用不可となったわけです。
これまでトラックが配送していたのは1か月あたり約12万便と言われていますが、これをどうしていくのでしょうか。
TBS報道局経済部 蓮井啓介 記者:
6割近くはヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸、また、自社の子会社などに委託しました。残りの約4割は自社の軽自動車に振り替えてまかなっており、現在のところ物流に影響はないということでした。
“不適切点呼” 軽自動車でも?
蓮井記者:
“不適切点呼”は、大きなトラック以外でも出てきていました。
街でよく見かける日本郵便の軽自動車約3万2000台についても、不適切な点呼の実態があったことがわかっています。
軽自動車は、主に「ゆうパック」の集荷や配送に使われています。ネット通販が普及し、手紙やハガキといった郵便が減っているなか、ネット通販によるゆうパックの取扱が今後の日本郵便の事業の柱になっていくとみられていたのですが、ここにも影響があるのではないかといわれています。
現在は軽自動車の不適切な点呼を、国交省も特別監査で調査している段階です。監査の結果によっては使用停止処分になる可能性もあります。
関係者のなかには「99.9%処分が下りるのではないか」と話している人もいました。
出水麻衣キャスター:
処分が下りるということは、そこでも不適切な点呼があったということですか。
蓮井記者:
日本郵便が調べたところ、約3万2000台の軽自動車においても不適切な点呼があったということです。
井上キャスター:
「トラックの点呼は不適切だったけれども軽自動車はしっかりとルールを守っていました」とはならない気がしますし、それならば他も本当に大丈夫なのかと感じてしまいます。
我々の間でも、飲酒運転が駄目だということはこれだけ徹底されているなかで、物流業界で日本郵便が…というのは驚きましたね。
日本バレーボール協会会長 川合俊一さん:
車に関係する会社は、そういうところを一番気をつけないといけません。こういう大きな会社は少しでも気を抜くと、ダーッと広がっていきます。それをまた戻そうと思うと相当な労力がいるので、一番最初の人が少し気を抜いたせいで、このように広がっていったのではないかと思います。
出水キャスター:
郵便局から皆さんのご家庭に運ぶのを主な業務とする軽自動車が使えなくなると、ネットショッピングなどへの影響も心配ですよね。
川合俊一さん:
私が店舗に行くと、自分のサイズである29.5センチの靴は売っていません。お店の人に「通販だったらあります」と言われるので、いつも通販で靴を買います。車が足りないことで届きづらくなるようなことがあると、困ってしまいますね。
約3万台分の荷物 委託先は?
井上キャスター:
約3万2000台分の荷物を、他社にすべて委託することはできるのでしょうか。
蓮井記者:
2024年問題が話題になったように、今の物流業界では人手不足が叫ばれているので、すべてを外部に委託できるかは怪しい部分もあります。
物流関係の各社に聞いてみると、大手A社は「委託される規模感や業界全体の協力体制次第なので、現時点ではわからない」と話していました。
一方、大手B社は「協力する姿勢だが、自社の利用者には迷惑をかけられないので、できる範囲での協力になる」とのことです。
井上キャスター:
さまざまな影響が指摘されているなか、日本郵便で考えると、郵便・物流部門は2年連続で営業赤字です。
これを何とかしようと、2024年の郵便料金引き上げで黒字転換の予想だったのですが、他社への業務委託には費用がかかるので、そういったものが積み重なって経営の打撃になる可能性が指摘されています。
川合さんは日本バレーボール協会のガバナンスなども改革していこうとトップに立っておられるわけですが、組織のガバナンスを変えていくことの大変さなど、何か感じていらっしゃることはありますか?
川合俊一さん:
たとえば、行動規範をしっかり作って「これを守っていきましょう」と言っても、どこかで気を抜いてしまう部署があったり、担当者がいたりします。そういうところは話し合いをもって「仕事は誠意を持ってやりましょう」「悪い方向には行っていませんね」と常に確認しないといけません。
井上キャスター:
それには第三者の目といったものが必要ですか?
川合俊一さん:
私のところは40人ぐらいの組織なので、会長や執行部がしっかりと指導をしていれば防げることはたくさんあります。話し合いのほかにも、今、誰が何をやっているかを把握している人間がいないと組織は傾いていくので、そういうところを強化していこうと思っています。
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<プロフィール>
蓮井啓介
TBS報道局経済部 郵政・物流担当
物流問題や不適切点呼問題を取材
川合俊一
日本バレーボール協会会長
ロサンゼルス、ソウル五輪2大会連続出場
現在は競技の普及や選手強化に尽力
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