参院選で与党が“大敗”しましたが、金融市場に大きな混乱はありませんでした。なぜ、このような動きになったのでしょうか。
【写真で見る】「政権の揺らぎ」=株価にマイナスに働く可能性も
「与党大敗は織り込み済み」のため?金融市場に大きな混乱なし
TBS報道局経済部 和泉砂絵記者:
一番大きい要因と考えられているのは「与党の苦戦は想定内だった」ということです。
今回の参院選は、事前の報道でも、与党が苦戦し、野党が伸びていくだろうと報じられていました。
金融市場は、“与党の苦戦”を事前に織り込んでおり、与党が敗北して過半数割れが実際に起きても、想定外の範囲ではなかったと考えたことが要因だと思います。
むしろ、参院選というイベントを通過した安心感から、円を買い戻す動きが強まり、円高が進んだり、株価が4万円台を回復する場面がありました。
肉乃小路ニクヨさん:
市場は、不確定なところを予想しながら投資をしていくので、最悪のパターンを想定して、前もって動くところがあります。今回は、最悪の最悪ではなかったところから、安心感がでて、株価がそんなに下がらなかったのではないかと思います。
出水麻衣キャスター:
今後の大きなイベントとしては、日米の関税交渉となりますが、そちらの方が不確定要素が大きいのでしょうか。
肉乃小路ニクヨさん:
そうですね。あとは、どういう連立の枠を組むのかによって、財政の支出の仕方なども変わってきます。そういうところで影響はどんどん出てくると思います。
「政権の揺らぎ」=株価にマイナスに働く可能性 “石破おろし”で株安になるのか?
高柳光希キャスター:
今後の市場について、2つの注目点があります。
・自民党内からの声が上がっている“石破おろし”
・今回の参院選で大きく飛躍を成し遂げた、“減税案”を掲げる野党
これらの動向が、市場にどう影響を及ぼすことになりそうですか。
和泉記者:
まずは“石破おろし”についてです。石破総理は、今の与党内だけでなく、経済界からも厳しい声が上がっています。もし、本当に石破政権が大きく揺らいでいくことになれば、株式市場がマイナスになる可能性があるという見方をする市場関係者もいます。
三井住友 DSアセットマネジメントの市川雅浩さんによると、「政権が不安定となり、市場からの信頼が下がることで“株安”になる可能性がある」ということです。
政権が不安定になると、投資家としては、投資先として日本株にお金を振り向けづらくなっていくということです。
過去に与党が過半数割れをした際の株価の動きのグラフを見てみると、過半数割れした場合、過半数を割れていなかった場合に比べて、低く推移していることがわかります。(※ニッセイアセットマネジメント 1989年以降の東証株価指数の平均値)
政権の揺らぎというのは、株価に対してマイナスに働く可能性が高いと見ている市場関係者もいるということです。
井上貴博キャスター:
要は、政権が安定するかどうかを市場が注目している。今までの常識だと、与党が過半数割れすると不安定だと判断されていました。
しかし、過半数割れは織り込み済みで、与野党が新しい形となると、それは考え方によっては安定と取れるのでしょうか。
肉乃小路ニクヨさん:
私達も不確実な中で、何となくマイナスを織り込んで想定に行くところはあるので。そういったところからも、今回は、そこまで大きく値動きをしないのではないかなとは思っています。
ただ、それはどういう政権の枠組みになるのかが大事になってくるので、そこさえ決まってしまえば、ある程度は織り込めるのではないかなと思います。
「野党の減税案」「日米関税交渉」も影響の可能性
高柳キャスター:
減税を掲げて参院選で議席を伸ばした野党も、今後肝心となってきます。
野党が提案する「財政拡張政策」。野党の中でも多くの議席を獲得した「立憲」「国民」「参政」の3党について見てみます。
【野党が提案する減税案】
立憲:食料品 消費税0%(原則1年間)、1人2万円の給付。
→財源は、国債以外。
国民:消費税一律5%(実質賃金が持続的にプラスになるまで)
→財源は、税収の上振れ分、国債発行など。
参政:消費税 段階的廃止
→財源は、国債発行など。
和泉記者:
財政拡張の政策を提示している党が多くあるので、そういったところに歩み寄れば、株価上昇の要因になることもあります。
一方で、円安が進んでいき、物価高の原因になったり、長期金利が上昇したり、住宅ローンなどの金利が上がっていく可能性もあります。
高柳キャスター:
もう1つ、注目を集めているのが「日米関税交渉」についてです。
赤沢経済再生担当大臣が8回目の渡米で、現在も交渉中です(7月22日午後4時半時点)。トランプ関税を巡って、2時間以上にわたり、ラトニック商務長官と協議をしていました。
ベッセント財務長官との協議も模索している中で、関税が高くなった場合、企業収益が悪化して、株安や賃上げに影響が出るのではないかということです。
井上キャスター:
ここに関しては、トランプ大統領はどのような決断をするのかが全く見えない部分です。ここはリスクを取っておかないといけないと思います。
肉乃小路ニクヨさん:
今までの経緯を見ていると、関税交渉に関しては非常に厳しいことになりそうです。そうなると、国内で景気対策のような景気刺激策を含めた政策をとらざるを得ないということにはなってくると思います。
出水キャスター:
株を持っている皆さんは、どう行動したらいいのでしょうか。
肉乃小路ニクヨさん:
焦って売らない方が個人的には良いと思っています。なぜなら、どの党の政策にしても、どの相手と組むにしても、景気刺激的でインフレの要素が強い政策を取らざるを得なくなってくると思います。
株式は、比較的インフレには強いと言われているので、持っているNISAは焦って売らないで、インフレの時代に即応した資産として持っていくのが、個人的には良いと思っています。
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〈プロフィール〉
肉乃小路ニクヨさん
ニューレディー
銀行・保険会社など金融業界でキャリアを積む
独自の視点で経済・お金・人生観を語る
和泉砂絵
TBS報道局経済部 証券・商社担当
金融関係を幅広く取材
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