
働き手が減少に転じたのが30年前。人手不足、物価高にさらされた「外食産業」の戦いを取材しました。
安さが魅力の地元で愛される「老舗餃子店」でも30年で…
灼熱の鉄板で一気に蒸される餃子。
カリッと焼き上げた皮には香ばしい焦げ目。中を開ければ、凝縮された豚肉と野菜の旨みがたまりません。
東京の下町、亀戸にある餃子店「亀戸餃子」。
子供も箸が止まらない、老若男女に愛されてきた味です。
メニューは潔く、餃子1本。
お客さん
「ひたすら餃子を食べ続けたい時がある。亀戸を感じる」
餃子愛を熱く語る男性は、ビールを片手にひたすら餃子を食べ続け、9皿を完食。でも、これだけ食べても2970円。
安さが大きな魅力の餃子ですが、常連客は…
常連客
「いま(2皿で)660円でしょ。いい値段になっちゃったよね。昔はもっと安かったんだよ」
時を遡ること30年。「亀戸餃子」では、変わらぬ作り方で餃子を焼いていました。1996年当時の価格は1皿250円。
この価格は徐々に値上がり、2024年に330円になりました。
亀戸餃子本店 丸山貴大さん
「80円上げちゃってるだけでも、皆さん苦しいと思う。食べる方はものすごく食べてってくださるから」
皮に使う小麦は、円安などの影響を受け高騰。光熱費も大きく跳ね上がっています。
値上げに抗い続けた30年。
亀戸餃子本店 丸山貴大さん
「これ以上(値段を)上げたら、お客さん離れちゃう。薄利多売でも、皆に食べていただければ、うちのお店は継続していける」
ケンタッキー、すかいらーくが日常に 1970年は“外食産業元年”
振り返れば、“外食産業元年”と言われた1970年。
世界大阪万博への「ケンタッキーフライドチキン」の出店や、日本初の「すかいらーく1号店」を皮切りに、外食の文化が日常に広がりました。
当時の価格は、今では考えられないくらい安いです。庶民の味方、吉野家の牛丼はなんと一杯200円。
1971年には「マクドナルド」が初上陸。ハンバーガーはわずか80円でした。
順調に市場規模を拡大していった「外食産業」は、1997年には29兆円とピークに達しました。当時の主役はファミレス。
記者
「ありました!確かにデニーズが2軒並んでいます」
通常店舗の隣に和食専門の店舗が並ぶ、まさに珍百景が生まれました。
各社が出店数を加速させる“ファミレス戦国時代”。
回転寿司で究極の“省人化” ロボットも大活躍
ところが、今から30年前の1995年。影が忍び寄っていました。それが「働き手の減少」です。
それまで増加していた労働人口が、この年をピークに初めて減少に転じたのです。
そこから“省人化”が大きなテーマとなりました。配膳の主役はロボットに。
どれくらい活躍しているのか。通路を通る回数を数えてみると、1時間半でロボットが5回。従業員は1回でした。
片付けや接客は従業員がロボットと役割分担しています。
慢性的な人手不足の時代をどう生き抜くのか。誕生から究極の進化を遂げた外食があります。それは「回転寿司」です。
2020年にオープンした最新の店舗「くら寿司グローバル旗艦店 浅草ROX」に行ってみると、従業員の「いらっしゃい!」はなく…
窪田ゆき 記者
「たくさんお客さんがいるのですが、店員さんはあまりいる印象はないです」
案内はされず、少し不安を感じつつも、番号の席を探し…
結局、入店してから誰とも会話することなく、席にたどり着いてしまいました。
注文したネタは、従業員を介さず高速で届きます。もはや“究極の省人化”を実現しています。
1997年の回転寿司店の厨房には、確認できただけでも職人が5人います。
レーンには寿司が隙間無く敷き詰められ、回っていました。
今の注文は、全てタッチパネルです。
今回、厨房に入る許可を特別にもらい、作業を見せてもらいました。
くら寿司 小坂博之さん
「実際にこういう風に作業するのは、もう10年以上前のことになるので…」
10数年ぶりに厨房に入った小坂さん。でも、今も現役かのような手際の良さです。
それもそのはず。作業が超~簡単なんです!
実際に時間を測ってみると…
くら寿司 小坂博之さん
「今サーモンが『2』となってますので、実際にサーモンを2皿作ります」
あらかじめ切り分けられたネタを冷蔵庫から取り出し、機械で作られたシャリに乗せるだけ。かかった時間、わずか13秒。
作業の効率化を進めたことで、創業時40種類程度だったメニューが、最大200種類にまで増えたといいます。
くら寿司 小坂博之さん
「どうしても人件費が高騰しているし、人手不足がついてまわるので、いかに従業員が覚えやすい、教育しやすい環境を整えるか。システム化は大きな役目がある」
「物価高」や「人手不足」など外食に吹き荒れる向かい風。
次の30年をどう生き残るのか。企業の知恵と工夫が試されています。
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