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ガソリン暫定税率“年内廃止”へ ”急務”の財源確保は「隠れ補助金」の削減?【Nスタ解説】

経済
2025-11-10 21:17

年末に廃止されるガソリンの暫定税率。ガソリンスタンドでは、段階的に安くなるガソリン価格を見据え買い控えが広がっています。


【画像で見る】年末までの2週間ごとのガソリン価格の見通し


ガソリン暫定税率廃止へ 家計負担は軽減も懸念が…

高柳光希キャスター:
与野党6党は5日、ガソリンの暫定税率を2025年大晦日に廃止することで合意しました。


現在のガソリン価格は平均で1L=173円程度で、本体価格と本来の税率に上乗せする形で、1Lあたり約25.1円の暫定税率がかかっています。

現在1Lあたり10円の補助金が、2週間に5円ずつ拡充されていくことで、12月11日には実質的に暫定税率はかからなくなり、年末で廃止となり、大体1Lあたり約158円まで落ち着くのではないか、と言われています。


ガソリンの暫定税率の廃止は、やはり車を使う方たちにとって大きな優遇となります。
第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストによると、全国平均で2人以上世帯の家計負担が年間約7600円減るということです。


メリットがある一方で、暫定税率で賄っていた財源がなくなるという側面も持ち合わせています。

代わりとなる財源を検討した上で廃止に合意することが望ましいわけですが、これまで暫定税率の代替財源に関して、自民党は「減収分は恒久財源手当」と強調をしてきました。

ただ実際は、具体的な安定財源を示した合意はできていないということです。


TBS報道局経済部 蓮井啓介 記者:
財務省に取材してみると、今の自民党の立場というものがわかります。
財務省幹部は「少数与党になるなかで、財源に関してはある程度譲歩を迫られて、着地せざるを得なかった」と苦しい胸の内を明かしていました。

というのも今回、野党が「年末の暫定税率廃止」を求めてきたので、タイムリミットを過ぎていた中で、財源がセットできないまま廃止に追い込まれた形です。


老朽化したインフラの整備などに影響? 代替財源の議論は

高柳光希キャスター:
財源がない場合はどのような影響が考えられるのでしょうか。


蓮井啓介 記者:
現在、道路関連の歳出は年間9兆円となっていて、その一部はガソリン税などで補われています。
今回の暫定税率の廃止によって、税収が1兆5000億円減る見込みのため、老朽化したインフラの整備などができなくなる可能性があります。


高柳光希キャスター:
代替財源の確保が急務になると思いますが、考えられているのでしょうか。


蓮井啓介 記者:
キーパーソンとなるのが、片山さつき財務大臣です。片山大臣は就任会見の中で「無駄があるのかないのか、不断にチェックするのは、まさに財務省の本来業務」だと話していました。
こうした中で見直しを検討しているのが、“隠れ補助金”とも言われる「租税特別措置」です。


租税特別措置は、特定の目的を達成するために設けられた優遇税制で、例えば「住宅ローン減税」や「エコカー減税」などがあります。


年末には、業界団体が自民党本部を訪れ、議員に税制優遇を陳情するのが風物詩となっている面もあります。
「来年もエコカー減税や住宅ローン減税を延長してくれ」といった業界団体の声が、毎年年末に自民党に寄せられ、「来年も減税するのか、しないのか」という議論が行われます。今年もこういう議論があるはずです。


「一時的な措置」のはずが…安定的な制度設計の難しさ

井上貴博キャスター: 
腑に落ちないのが、もともと一時的な措置だったはずの「ガソリン暫定税率」が、なし崩し的に恒久的な財源となり、その財源がないと地方自治体が立ち行かなくなってしまったのは、なぜなのでしょうか。

また、ガソリンの補助金に関しては、3年半で約8兆円も使っていながら財源の議論にはならないのに、暫定税率の話になった途端に財源の問題で話が進まないというのが、釈然としないところがあります。


スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
“暫定”ではなかったということですよね。ただ、暫定と言ってとりあえず取らざるを得なかったのだと思います。インフラのことを考えたら、恒久的に財源は必要で、これからもっと必要になります。そうすると、対症療法のやり方の税金導入はやはり難しい。そのため、どうするかというと、制度設計になります。

本当に安定的に財源を持たなきゃいけない場所はどこなのか。財務省も、何が無駄なのかを決めるのは難しいと思います。


代替財源として「法人税」の租税特別措置にメスか

蓮井啓介 記者:
税制は本当に難しいところです。本来、税というのは「中立・簡素・公平」が求められるもので、この優遇税制(租税特別措置)は、一部歪んだあり方とも言えます。


6党合意では、既に「法人税」の租税特別措置の見直しを、代替財源として検討する話が出ています。


法人税の租税特別措置には、「研究開発税制」や「賃上げ促進税制」などがありますが、▼研究開発税制については、「減税額に比べると研究開発費は増えてないことから研究の増加につながっていない」「大企業に恩恵が偏っている」といった指摘があります。

また▼賃上げ促進税制については、賃上げが当たり前になってきた中で「本当に必要なのか」という指摘もあるなど、これらの税制については、財務省や日本維新の会が効果を疑問視していることから、議論が進む可能性はあります。


井上キャスター:
暫定税率廃止したものの、恒久的に財源が必要なため、形を変えて自動車に関する税金をまた新たに設けるということにはなりませんか?


蓮井啓介 記者:
それに関する議論も一部上がっていましたが、野党側は「一時的な税収の上振れを使うべきだ」という意見が強く、一旦は合意文書からなくなりました。


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<プロフィール>
蓮井啓介
TBS報道局経済部 財務省担当
財政・税制などの経済政策を取材

田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶応義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMia(イミア)」主宰


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