
飲食料品の消費税を2年間に限り1%へと引き下げる法案が、6日、衆議院を通過しました。議席数で自民、維新の与党が圧倒する衆議院では、議論は深まらず、財源や、新たな「支援金」制度の詳細は、結局、何もわからないままでした。こんなことで10兆円もの歳出を決めて本当に大丈夫なんでしょうか。
【写真を見る】消費税減税法案衆院通過、「支援金」は曖昧なまま取引材料に【播摩卓士の経済コラム】
高市総理「就業者の3割以上に給付」
来年4月からの消費税減税と同時に開始する現金給付、いわゆる「支援金」について、高市総理大臣は、採決直前の衆議院の委員会で、「少なくとも諸外国並みの、就業者の3割と同程度以上とする方向で検討したい」と述べました。その上で高市総理は、給付の対象について、年収100万円から350万円とした政府の参考値よりも、「もう少し幅広く考えている」と述べて、今後の議論次第で対象範囲を広げる可能性を示唆しました。
この2年間の「支援金」は、食料品の消費税をゼロではなく1%への引き下げに留める代わりに、残る1%分を国民に還元して、「消費税ゼロ」という政治公約を実質的に達成することが、そもそもの目的でした。
検討されている「就業者負担軽減支援金」とは
一方で政府は、2年を経た2029年4月に食料品の消費税を再び8%に戻す際には、中低所得者の負担軽減のために、「就業者負担軽減支援金」という、所得に応じた給付制度を本格的に導入することを目指しています。この新しい給付制度は、これまでのような非課税世帯を対象にするのではなく、働いて税金や社会保険料を納めているものの、その負担が重くのしかかる所得層を対象にして設計されることになっていて、我が国では初めてとなる本格的な就業者にむけた給付制度です。
話を難しくしているのは、その「就業者負担軽減支援金」が本格導入される前の2年間も、上述の消費税1%分の給付が行われるためで、この2年限定の給付を本格的な「就業者負担軽減支援金」への「つなぎ」、或いは「先駆け」と位置付けてしまったことから、議論が一層混迷しているのです。
消費減税と支援金は性格が異なる
高市政権が進める消費税減税の目的は、あくまで物価高対策です。とりわけ食料品の物価高が激しいので、2年に限り消費税を下げるという話です。一方で、就業者負担軽減支援金は、税金や社会保険料の負担割合が諸外国に比して構造的に高くなってしまっている所得層の負担を和らげるための給付です。目的、性格が全く異なっているのに、同じ「支援金」として繋げようとすること自体、無理があります。
そもそも食料品の消費税1%分は6000億円なので、この規模の額では、本格的な「就業者負担軽減支援金」制度には足りません。就業者の3割なら2000万人、単純計算で一人あたり年3万円、対象を3000万人に広げると平均年2万円にしかなりません。政府の参考値でも最も所得が低い層では、わずか年5000円です。その額のために複雑な制度を急ごしらえで作って、コストをかけて配ろうというのです。
物価高対策なら1%分を単純給付すればよいだけ
物価高対策としての消費税減税が、本来の8%ではなく7%しか下げられなかったという趣旨からいえば、残る1%分は、所得上限をどこかに決めて単純に定額給付すれば、良いだけの話です。経済的には1%分の還元にそれほど大きな意味などなく、そもそも政治的なメンツの問題なのです。
29年度からの本格的な支援金制度で、広く中所得層まで給付しようと思えば、兆円単位の財源が必要になります。そのために2年間の1%分を取っておくという考え方もあるでしょうし、何より、税や社会保険料の負担の実情を所得ごとに把握して、きめ細かな制度設計を、慎重に行う必要があります。
給付の前に税や社会保険料負担の軽減の議論を
それよりなにより、中低所得者層での税や社会保険料負担が過重なのであれば、現金給付をする前に、まず、税や社会保険料のあり方を見直し、軽減するのが先決でしょう。いったん集めたお金を再び給付するより、まず集めるお金を少なくする方が、まっとうです。そうした議論を微塵もしないで、わずかひと月余りで、急いで支援金制度を作ろうというのは、あまりに無責任です。
2年間の『支援金』が取引材料に
それでも今後の参議院での議論では、この、2年間の仮称「暫定支援金」なるものが焦点になりそうです。与党が過半数を割る参議院では、いずれかの野党の賛成が不可欠で、「暫定支援金」でどこまで野党の要求を受け入れるかが、政党間の政治的駆け引きのポイントになりそうだからです。
その過程では、「暫定支援金」が拡充され、結果として6000億円で済まなくなる可能性だってあるでしょう。消費税減税をするために、現金給付を上積みするという、冗談のような光景が、今後、現出するのでしょうか。
消費税減税を前に値上げラッシュ
4月の消費税引き下げを前に、消費の現場では値上げの動きが顕在化しています。4月に消費減税分の7%がちゃんと下がったかどうか、世間の目が厳しくなることが見込まれるので、これまで価格転嫁できていない分を今のうちに上げておかなければ大変だという、危機意識があるのかもしれません。消費税を動かすというのは、消費者にとっても、企業にとっても、先行き不透明さを作り出すものなのです。2年後に消費税を8%に戻す際の、不透明さやショックは、その比ではありません。
今後の国会審議が、こうした根本の話もせずに、政治的な駆け引きのための「暫定支援金」の増額の話に終始するようであれば、税を決めるべき、政治そのものへの信頼に関わることになるでしょう。
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