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いつも同じ歯で噛む「偏咀嚼(へんそしゃく)」が及ぼす影響

2017-06-06 18:30:37


執筆:影向 美樹(歯科医師)
人間の体は左右対称ですがその機能には差があり、「右利き」「左利き」というように左右どちらかが優位に働きます。
噛む(かむ)という行為も同様で、食事の際に噛む回数は右と左で異なり、より多く噛む側が「利きアゴ」になります。
ただこの噛む回数が左右で極端に異なり、常にどちらか一方でしか噛まないという場合、これを「偏咀嚼(へんそしゃく)」と呼びます。
偏咀嚼が長く続くと体が歪み、肩こりや腰痛などを引き起こすため注意が必要です。
今回は偏咀嚼が体に及ぼす影響や、偏咀嚼の原因などを詳しくご紹介したいと思います。

偏咀嚼の何が問題なの?


それでは偏咀嚼が私たちの体にどのような弊害をもたらすのか詳しくみていきましょう。

その1:片側の歯の寿命が縮まる


通常であれば左右バランスよく食べ物をかみ砕くことで、歯にかかる力は分散されますが、偏咀嚼の場合は力のすべてが片側の歯に集中し、負担が大きくなります。
このダメージはやがて歯を弱らせ、歯の寿命を短くしてしまう原因になってしまいます。

その2:噛まない歯は汚れやすい


食べ物は噛み合わさる歯の動きと舌の動きによって食道へと移動します。そのため噛まない方に流れ込んだ食片の動きは鈍く、汚れが溜まりやすくなり、虫歯や歯周病の原因になってしまいます。

その3:顎の関節にも負担がかかる


偏咀嚼は顎の関節にも大きな影響を及ぼします。
特に噛む側の顎関節に大きな負担がかかるため、口を開けるたびに「パキン」と音が鳴るといった顎関節症の原因になります。

その4:顔がゆがむ


片側ばかりで噛むと、噛む側の筋肉ばかり発達し、反対に使わない方の筋肉は衰えていきます。
その結果顔全体の筋肉のバランスが崩れ、顔がゆがむ原因になってしまいます。

その5:体がゆがみ、肩こりや腰痛を引き起こす


偏咀嚼によって顔面周囲の筋肉のバランスが崩れると、頭の位置が少しずつ変わります。そのズレに対応しようと首や肩、背中などの筋肉もバランスを崩し、やがて体の中心軸にもズレが生じます。
中心軸がずれると体全体が歪み、頭痛や肩こり、腰痛などを引き起こします。

偏咀嚼になる原因


偏咀嚼の原因は口の中に問題があるケースがほとんどです。具体的には虫歯や歯周病などの歯科疾患によって片側が使えない、もしくは歯並びが悪いために片側が噛みにくいことで偏咀嚼になってしまいます。
また歯科治療で被せた詰め物や被せ物、入れ歯などの噛み合わせが合っていないことも偏咀嚼の原因になります。
このように口の中に問題がある場合は、歯科医院で治療をしないと偏咀嚼を改善することは困難です。偏咀嚼を治したいけど、どうも反対側が噛みにくいと思う方は、歯科医院で相談してみましょう。
また「両方の噛み合わせに問題はないけれど、つい片側ばかりで噛んでしまう」といった噛みグセが強い人も、それが長期にわたると上記で述べたような弊害があらわれる可能性があります。
特に歯科医院で治療を受ける必要はありませんが、食事中は左右でバランス良く噛むことを意識するよう心がけましょう。

自分ももしかしたら・・・と気になったら


「利き手」「利き足」があるように、体はどちらか一方がより使いやすくできています。
噛むことも例外ではなく、より噛みやすい「利きアゴ」でつい噛んでしまうことは体の自然な動きなのです。
ただそれが極端になりすぎる偏咀嚼は、長期にわたると体のあらゆる部位に弊害をもたらします。
偏咀嚼の多くは歯や噛み合わせに問題があり、その場合は歯科医院で治療が必要です。
「もしかしたら自分も偏咀嚼かも?」と気になる方は、自分が偏咀嚼かどうかチェックする方法があります。
以下の項目に心当たりがある人は偏咀嚼の疑いがありますので、注意しましょう。
最後に偏咀嚼をチェックするポイントを挙げておきましょう。

偏咀嚼チェック


・右側、もしくは左側だけ、歯が大きくすり減っている
・眉の位置の高さがずれている
・顎の位置が中心からずれている
・左右のほうれい線の深さが違う

<執筆者プロフィール>
影向 美樹(ようこう・みき)
歯科医師。歯科医師免許取得後、横浜と京都の歯科医院にて勤務を経て、現在は医療系ライターとして活動中

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情報提供元: mocosuku

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