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今から予防できる! 高齢者の体力低下「フレイル」とは

2018-05-20 18:30:00


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
人類未踏の超高齢社会を迎え、できるだけ介護や医療などの世話にならず「健康で快適な生活」を保つことは重要な課題です。
その指標として注目されるキーワードが「健康寿命」です。
そして、「健康寿命」を延ばすために関わってくるのが「フレイル」という定義です。
「老化」は誰もが通る道、若い方も今から知識を蓄え備えていく必要があります。

ところでフレイルってなに?


2014年に訳語が確定した「フレイル」
老年医学用語 frailty (フレイルティ)が原語です。
日本語に直訳すると「虚弱・老衰・脆弱」という意味ですが、ネガティブな印象が強いため「フレイル」のまま採用することに決まったそうです。
厚生労働省は2017年9月、フレイルへの総合対策を掲げています。
そのなかでフレイルは、
「加齢とともに運動や認知機能など心身の活力が低下し、慢性疾患の併存なども影響して、生活機能が障害され、心身の脆弱性が現れた状態であるが、適切な介入や支援によって生活機能の維持向上が可能な状態」
と明記されています。
※厚生労働省『高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進について』(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000135469.pdf)

ポイントは次の点です。

健康と要介護の中間状態


放っておくと要介護状態になってしまう


早期対応することで健康状態を保つことが可能


フレイルは予防的な概念であるということがお分かりになるでしょう。

フレイルの指標


たとえば、風邪を引いたとき健康な人は養生すれば数日でよくなりますが、フレイル状態だと「風邪が長引く」「こじらせて肺炎になる」「転倒して打撲や骨折にいたる」などにつながりやすくなります。
さらに、重症化すると「寝たきり」になってしまうかもしれません。
このように、病気ではありませんが弱っている状態がフレイルなのです。
また、フレイルは身体能力を低下させ死亡率を上昇させますし、ストレスや病気への抵抗力も弱い状態です。
しかし一方では、周囲が早期に察知し適切に対応すれば、要介護状態を遅らせる、健康な状態に近づける、といった改善が可能であることも強調されています。
フレイルの評価方法としては、現在のところアメリカ人老年医学者リンダ・フリードによるCHS基準(Cardiovascular Health Study、別名フリード基準)が主流で、日本版のJ-CHS基準が設けられています。
以下のうち、3項目以上該当するとフレイル、それ以下だとプレフレイルと判断します。

体重減少(年間4.5kgまたは5%以上の意図しない体重減少)


疲れやすい(何をするのも面倒だと週に3~4日以上感じている)


歩行速度の低下


握力の低下


身体活動量の低下


この基準をベースに、研究機関や自治体では、さまざまなフレイルチェックを実施しています。
詳細は以下をご覧ください。
※公益財団法人長寿科学振興財団『フレイルの診断』(https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/shindan.html)

どうしてフレイルになるのか?


フレイルは「フレイルサイクル」という悪循環を生み出します。
これは、低栄養や転倒をくり返すうちに、嚥下・接触機能が低下し、ひいては意欲や認知機能まで落ちてしまい、抑うつや閉じこもりに連鎖するという悪循環です。
食事面の低栄養や運動不足から体調不良になり、認知症や生きる意欲の低下につながって、寝たきりや閉鎖的な生活に陥るのです。
きっかけは次の2点だと指摘されています。
加齢にともなう心身機能の低下や慢性的な疾患が

「サルコペニア」(筋肉量が減少し、筋力や身体能力が低下した状態)を引き起こす


基礎代謝が落ちてエネルギー消費量が少なくなり、食欲が低下し「低栄養」状態になる


また、問題となっている高齢者の「低栄養」は次のような状態をいいます。

栄養素の摂取が必要量よりも少なくなって全体的に栄養素が不足している


そのなかでもとくに、PEM(Protein energy malnutriton:ペム)という、たんぱく質とエネルギーが十分に摂取できていない状態である


フレイルの進行を改善するには


フレイルを受けいれ寝たきりなどを防止していくために、介護施設やリハビリといった専門的な現場だけでなく、地域社会レベルでも様々な活動が活発に行われています。
次のような取り組みが奨励されています。

とくに慢性疾患など持病のコントロール


低栄養状態を回避し筋力をつけるため良質なたんぱく質を摂取する栄養療法や運動療法


筋力維持を目的としたレジスタンス運動(いわゆる筋トレ)


予防接種や生活習慣の改善などによる感染症予防


「転ばぬ先の杖」というように、フレイル対策は若いうちから意識しておくことが大切です。
子どもの頃から食生活や運動、生活習慣などが整っていると、高齢になってからの「元気さ」を維持しやすくなるでしょう。
老化や介護を「他人事」と思わない空気がもっと浸透することを願います。
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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