
全国統一予選会のプリンセス駅伝(10月19日)優勝の三井住友海上が、虎視眈眈と上位をうかがっている。クイーンズ駅伝(第45回全日本実業団対抗女子駅伝)は11月23日、宮城県松島町文化観光交流館前をスタートし、弘進ゴムアスリートパーク仙台にフィニッシュする6区間42.195kmコースに、24チームが参加して行われる。区間・距離・中継所は以下の通り。
【一覧】世界陸上マラソン7位小林香菜、不破聖衣来らがエントリー クイーンズ駅伝連覇狙うJP日本郵政Gは廣中璃梨佳ら
1区(7.0km)塩竃市地域活動支援センター前
2区(4.2km)NTT東日本塩釜ビル前
3区(10.6km)富士化学工業前
4区(3.6km)聖和学園高等学校前
5区(10.0km)仙台第二高等学校前
6区(6.795km)弘進ゴムアスリートパーク仙台
三井住友海上はプリンセス駅伝を欠場した不破聖衣来(22)が、故障から回復して出場する。パリ五輪5000m代表の樺沢和佳奈(26)、日本選手権10000m3位の兼友良夏(24)、同3000m障害優勝の西山未奈美(25)と、個人で実績を持つ選手が揃った。10000m日本歴代3位の30分45秒21(学生記録)を持つ不破が加わることで、区間配置のバリエーションが一気に増える。鈴木尚人監督は「確実にクイーンズエイトに入ること」と堅実な目標設定をしている。だが「全員が持っている力を全て発揮すれば、ワンチャンスあるかもしれません」と、大会最多となる8度目の優勝の可能性を否定しない。
夏にしっかり練習を積んだ不破
JP日本郵政グループ、積水化学が2強、エディオンを加えて3強とも言われている今年のクイーンズ駅伝。そこに三井住友海上が割って入る可能性がある。
プリンセス駅伝優勝時、三井住友海上は2時間15分53秒の大会新記録で、2位との2分11秒差は大会史上最大だった。鈴木監督は慎重な姿勢を崩さないが、不破が参戦することでプリンセス駅伝時よりも戦力がアップする。不破の出場区間は未定だが、練習でかなり良い状態になっていることを鈴木監督が認めた。
「夏合宿では見たことのない距離、本数を走っていました。こちらが出しているメニューでも十分のはずなんですが、それ以上に走ってしまって、1カ月に換算したら1200kmくらいになっていたんです。これはヤバイと思っていたら、9月に入って故障をしてしまいました(後脛骨筋の炎症)」
9月の全日本実業団陸上と10月のプリンセス駅伝を欠場したが、トレーニングは積める状態だった。「夏の間に土台ができていたので、クイーンズ駅伝には間に合う」と鈴木監督は判断。11月1~15日の徳之島合宿で「任せられる練習ができるか」を確認した。不破は、他の選手たちも納得させる走りを見せたようだ。
不破が出走すれば周囲の期待は否が応でも高まるが、鈴木監督は「皆さんが期待するほど、すごい走りにはならないと思います」と釘を刺す。「今の実力を確実に出してくれたら」と、他を圧倒するような走りは想定していない。
樺沢と兼友が揃って活躍できれば…
個人種目の実績がある樺沢と兼友が、駅伝ではともに悔しい思いをしてきた。樺沢は昨年のクイーンズ駅伝3区で区間17位、兼友は昨年のプリンセス駅伝3区でやはり区間17位。樺沢は座骨神経痛で、当日のウォーミングアップから痛みが出ていた。兼友は中継所に走り込んできた他チームの走者と接触して転倒、手首を強打し、走っている間に痛みがひどくなった。レース翌日の診察で骨折していたことが判明した。
樺沢は昨年のプリンセス駅伝では、アンカーの6区で区間賞を取り3人抜きの走りを見せたが、兼友のアクシデントで9位まで後退したチームは7秒差の2位だった。昨年のクイーンズ駅伝では兼友が6区に回り区間2位と好走したが、1~3区で17位と出遅れた三井住友海上は13位に終わった。エース的存在の2人がともに好走していれば、チームの成績は一気に上がる。
兼友は今年のプリンセス駅伝では3区で区間4位。2区からトップでタスキを受け取ったが、伊澤菜々花(34、スターツ)の驚異的な追い上げがあり、逆転されてしまった。しかし4秒差の2位で4区に中継したことで、5区の樺沢が逆転してトップに立つことができた。「クイーンズ駅伝でも長距離区間の可能性はありますし、どの区間でも自分の走りをしてチームに貢献したいです」。
樺沢は今年のプリンセス駅伝では5区で区間賞。前述のように逆転してトップに立ち、チームの優勝に大きく貢献した。「クイーンズ駅伝はプリンセス以上に貢献したいです。プリンセスはリズムに乗れないまま前半の5~6kmまで走ってしまい、納得できませんでした。納得の行く走りをしてチームの5位以内に貢献します」。
スピードもある樺沢は1区か3区への起用が有力だ。1区なら区間賞か、区間賞と僅差で2区にタスキを渡すことが求められる。3区の距離では廣中璃梨佳(24、JP日本郵政グループ)や五島莉乃(28、資生堂)が強いので、前を追える範囲で4区にタスキを渡すことが重要だ。
兼友は3区、5区の長距離区間か、不破の復調次第では1区や6区に回る可能性もある。長距離区間では樺沢と同様、小差で前を追える範囲でタスキをつなぐことが役割になる。1、6区であればこれも樺沢と同じで、区間賞か区間賞と僅差の走りをしたい。
2区の西山でトップに立つ展開も
プリンセス駅伝では2区の西山が、区間賞の快走でトップに立った。クイーンズ駅伝でも2区は確定的で、「区間賞も狙える練習ができている」と鈴木監督も期待する。
西山は7月の日本選手権3000m障害に優勝したが、東京2025世界陸上代表には届かなかった。世界ランキングのポイントで日本選手権2位の齋藤みう(23、パナソニック)が西山を上回ったからだ。世界陸上の齋藤は9分24秒72と、17年ぶりに日本記録を大幅に更新する健闘だった。西山はその走りを国立競技場のスタンドで観戦した。目の前で齋藤の快走を見てショックを受けていた西山に、鈴木監督は「あなたも同じ記録を出せる練習はしていたよ」と声をかけた。
「世界陸上という大会や、大観衆の国立競技場の雰囲気もあって出せた記録だから、ここで走ったらあなたも出せるかもしれないよ、と。西山が出られなかったのは運もあってのこと。完全に差を付けられたわけではないから、破れないことはありません。世界陸上に出られなかった悔しさを、まずは駅伝にぶつけて、駅伝をステップに3000m障害で頑張ってほしい」
齋藤と同じ区間になる可能性は低いが、クイーンズ駅伝の西山は強い思いを持って走る。鈴木監督は2区の西山で一度はトップに立ちたいと考えている。
「できれば1、2区でトップに立ち、3区で少し後退しても4区のタビタジェリ(25)で、もう一度トップ集団に追いつくのが理想の展開です。タビタジェリは良い状態で来ているので、トップを走っているところを見たいですね。松田杏奈(31)も安定感抜群の選手なので、5区か6区でしっかり走ってくれると思います」。各区間の果たす役割についても、次のような話し方をしている。「3区と5区をエース級がしっかり走ることが必要な駅伝ですが、今回に限っては3区と5区は我慢の区間です。自分のリズムで走って、後れても差を最小限にとどめてほしい。残りの1、2、4、6区でしっかり勝負をしたい」。
プリンセス駅伝優勝後のインタビューで、鈴木監督は「私がイメージした区間配置ができましたし、選手同士もこの子が走ったら強いだろうな、という思いがあったと思う。その2つが一致したら力を発揮する」とコメントした。プリンセス駅伝とは上位チームの力が違うので、同じことが当てはまるわけではない。だから3、5区が我慢の区間になるわけだが、その状況でも三井住友海上は鈴木監督が思い描く区間配置ができ、選手たちも良い状態を作っているのは間違いない。
4区終了時にトップ集団をキープしている可能性は高い。あとは5区の選手が監督の想定を上回る走りをすれば、三井住友海上が最後まで優勝争いをする展開も見られそうだ。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
・「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
・「彼女から告白を受けていた」26年前の未解決事件、逮捕された安福久美子容疑者は被害者の“夫の同級生” まさかの人物に夫は…「事件の前年OB会で…」【news23】
・【全文公開】“ラブホテル密会” 小川晶・前橋市長の謝罪会見【後編】「どちらからホテルに誘うことが多かった?」記者と小川晶市長の一問一答(9月24日夜)
