
2008年(平成20年)9月14日、アメリカ投資銀行4位であったリーマン・ブラザーズの経営破綻が決定的になりました。これを契機に世界的な金融・経済危機が発生し各国の経済は大きな打撃を受けました。(アーカイブマネジメント部 森 菜採)
発端はサブプライム住宅ローン問題
約1年前からその兆候は、すでに現れていました。
信用度の低い人(サブプライム層)でも住宅を購入できるようにしたのが、「サブプライム住宅ローン」ですが、当初その分、金利は高めに設定されていました。
しかし2000年代初頭のアメリカでは住宅価格が急騰し、高金利のさらに上を行く上昇を続けたのです。
金融機関は住宅価格が上昇している間は、返済が難しくなっても住宅を担保に借り換えをして返済を先送りしたり、「最悪、家を売れば大丈夫」という考え方が通用しました。そのため審査の甘い融資が横行。さらに「始めの頃は返済額を低く抑える」など、一見すると返済しやすいプランも提供されました。
しかし、住宅価格が暴落すると状況は一変します。返済不能に陥る人が急増し、それに伴いサブプライムローン証券の価値も暴落。これが金融危機を引き起こし、2008年のリーマンショックの直接的な原因となっていきます。
なぜ金融危機は世界規模に?
しかしサブプライムローンというアメリカ国内の問題が、なぜ世界規模の危機に発展したのか。その要因こそが「証券化」です。
具体的には、ローンを貸し出した金融機関は、リスクの高いサブプライムローン債権を証券会社に売却。証券会社はこの債権を細分化して証券にし、他の金融商品と組み合わせて販売。
この福袋のような金融商品は高利回りであり、さらに信用格付けも高かったため、世界中のヘッジファンドや投資銀行がこぞって購入し、爆発的に売れました。
結果として、リスクが世界中に分散したことで、サブプライムローンの焦げつきの影響は広範囲に拡大。投資家たちに「自分が購入した福袋のような金融商品の中に、サブプライム証券が含まれているのではないか?」という疑念が広がり、それが金融不安へと繋がっていきました。
金融危機の始まり
こうしてアメリカ市場の株価暴落が世界の株式市場にも波及して世界同時株安を引き起こしました。これが「サブプライムショック」と呼ばれ、世界的な金融危機の引き金になったとされています。
リーマン・ブラザーズ 立て直しの失敗
大手保険会社「AIG」、投資銀行3位「メリルリンチ」などもサブプライム住宅ローンの焦げ付き問題が取りざたされる中、「リーマン・ブラザーズ」もサブプライムローン関連証券を大量に保有していたため経営が傾きます。
2008年6月に、上場以来初めての赤字に転落する見通しを発表し、その年の9月11日には決算が4000億円を超える赤字になるという見通しを明らかにしました。
業績不振に陥ったリーマン・ブラザーズの株価は一気に下落します。
会社売却に向け複数の金融機関との交渉もされましたが、アメリカ政府は大統領選挙を前に国民の反発を恐れて、公的資金の投入を拒否。この結果、引受先として有力視されていた大手銀行「バンク・オブ・アメリカ」は一転して買収相手をメリルリンチに切り替え、リーマン・ブラザーズの自力再建の道は閉ざされました。
救済交渉が不調に終わり、2008年(平成20年)9月14日にリーマン・ブラザーズは破産法の適用を申請すると発表。負債総額は約6,000億ドル(約64兆円)とアメリカ史上最大級の規模で倒産しました。この日は「流血の日曜日」と呼ばれるほどに世界に衝撃が走りました。
世界経済への波及
翌月曜日、ニューヨーク証券取引所では500ドルを超える大暴落。
このリーマン・ブラザーズの破綻申請という最悪の事態を受けて、市場にはさらなる金融不安が広がり、アジア市場では台湾やシンガポールで全面安となったほか、ロンドン、フランクフルトなどのヨーロッパの主要市場でも株価が大幅に急落しました。
景気の低迷
リーマンショックは、その後も世界的な景気後退を引き起こしました。
アメリカの金融市場では、財務状況への懸念から金融機関相互の信頼が失われ、その結果、市場の流動性が著しく低下。財務状況が健全な金融機関や事業会社であっても資金調達が困難な状況になり、企業の倒産や失業が急増しました。
その不況の波は世界規模で波及。外需が落ち込み、株価下落や雇用悪化など、深刻な影響が広がりました。
日本でも倒産件数が過去最高になり、非正規雇用者の解雇である「派遣切り」が社会問題化するなどの影響ももたらしました。
リーマンショックは、ひとつの企業の破綻がどれほど世界に影響を与えるかを示した象徴的な出来事でした。
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