
「Bizストリート」の時代と合わせ11年にわたって日本経済、世界経済の“いま”を伝えてきた「Bizスクエア」の最終回。新たな経済成長には何が必要なのか?番組コメンテーター陣の“未来への提言”とは。
【写真を見る】日本が生き抜くためには何が必要なのか?日本経済「未来への提言」【Bizスクエア】
「激動の11年」その先をどう生き抜くか
番組が始まった2015年ー
当時2万円台だった日経平均株価は2025年には5万円を突破し、26年3月19日は5万3372円。株価は倍以上となった。
この11年間の日本と世界の経済を振り返ると、長期間にわたった「アベノミクス」による大胆な金融緩和、「新型コロナウイルス」というパンデミック、さらに「ウクライナ侵攻」など世界を揺るがす地政学リスク。そして「トランプ関税」と、まさに激動の時代だった。
GDP(国内総生産)で世界4位の日本は、いまやインドに抜かれ5位に転落する寸前だが、【新たな経済成長のためには何が必要なのか?】
番組のコメンテーターの言葉から、その答えを探る。
「環境の変化」に対応できるか
政府の経済財政諮問会議の議員も務めた東京大学名誉教授の伊藤元重さんは、覇権主義が強まる▼【“グローバル経済の変容”への対応】を説く。
『東京大学』伊藤元重名誉教授:
「環境が変わってきているから、“環境の変化に対応できるか”ということだと思う。1つはグローバル経済で、“トランプ関税に象徴されるようにグローバル化が変容している”わけだから、そういう中で日本経済・日本の企業がどうやって生き延びていくかが問われている。それからデフレが定着して、いまインフレになってきている。逆に言うと過剰なインフレになるとまた困るわけだから、マクロ経済の舵取りもちょっと変わってきた状況になってきている」
国と国との接着剤は「経済安保」
内閣官房参与として日本の経済政策に携わる、明星大学教授の細川昌彦さんは、これからの国際連携のキーワードに▼【経済安全保障】を挙げる。
『明星大学』細川昌彦教授:
「いままでは自由貿易という旗のもとにみんな集まってきたが、これから先はそうじゃないと思う。もちろん自由貿易の大事さは否定はしない。でもこれだけ言っていても国は集まってこない。何に集まってくるのかというと“経済安全保障がキーワード”。経済安保で、『あなたの国のサプライチェーンも強靭化して強化しましょう。それに協力しますよ日本は』。あるいは供給途絶の目にあったら、『お互いに連携して協力してやりましょう』とか。そういう“経済安保がカギになってくる”。いわば、“国と国を引っ付ける接着剤は、いまは経済安保”。アイデアを持っていろんな国々との連携を重層的に積み上げていく。これがものすごく大事」
必要なのは「変革を恐れないマインド」
長年染み付いた▼【デフレマインドとの決別】を強調するのは、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんだ。
『早稲田大学ビジネススクール』入山章栄教授:
「2025~26年あたりというのが本当にいま、“日本も世界も転換点”だと思う。日本経済は長い30~40年のデフレの時代から、ついにインフレの時代になってきた。“変革を恐れないマインドに尽きる”と思う。経営者も我々のような普通に働いている人々も含めて、いままでのある意味のんびりした状態。終身雇用で、給料は安いけどデフレなので何となく生活がうまくいって世界はそこそこ安定していました、という時代が終わりつつある。我々自身1人1人が能動的に変革をする必要があるし、会社も大きな変革をする。それができるかどうかにかかっていると思う」
「セーフティネットの張り方」を変える
日銀ウォッチャーで東短リサーチ社長の加藤出さんが重要視するのは▼【国内投資と経済の新陳代謝】だ。
『東短リサーチ』加藤出社長:
「基本的には“国内投資不足”。日本企業は海外に対しては投資をするが、人口減少社会で国内で投資してもリターンがあまり無いということで投資が非常に少ない。これでは経済が伸びない。“いかに国内で日本企業が新しい投資をするか”が、まず一つ重要だと思う。もう一つは、“セーフティネットの張り方を変える方がいい”のではないかと。いままでは事実上、企業が潰れないように政府日銀がセーフティネットを張ってきたような状況。特に中小零細企業が破綻しないように資金繰りを支える.、および低金利政策で金利の支払いを抑えることで支えてきた。その結果失業率が低く抑えられてきたという現実はあるが、そのやり方を数十年やってると、どうしても“経済の新陳代謝が進まない”。それゆえ実質賃金がプラスにならないという問題にも繋がってきていると思う」
「変化を受け入れる勇気」
歴史についての著書も多い立命館アジア太平洋大学の元学長、出口治明さん。
『立命館アジア太平洋大学』出口治明元学長:(2018年1月13日放送)
「昔の人がどういうときに失敗したりうまくいったり、生きたケーススタディを学べるところが面白い」
脳出血を患い現在はリハビリを行っている出口さんは、「日本は今まで変化を迫られた時に実は伸びてきた」と話し、歴史の教訓から▼【変化への適応】が大切だと指摘する。
『立命館アジア太平洋大学』出口治明元学長:
「いま社会が予期せぬ変化に直面しても、過去の成功にしがみつかず“変化を受け入れる勇気”こそが問われる。“変化こそが生き残り成長する唯一の道”」
個々の「倫理観」の重要性
千葉商科大学の教授で経済ジャーナリストの磯山友幸さんは、相次ぐ企業の不正や不祥事などを引き合いに▼【個々の「倫理観」の重要性】を訴える。
経済ジャーナリスト 磯山友幸さん:
「何が一番大きな問題かというと、東芝だからああいう問題が起きたんだとか、フジテレビだからあの体質、ドンがいて言うことを聞かないといけないけどしょうがないよねとか。ニデックはニデックで創業者がうるさくて全部仕切っていたからこうなったんだと、特定の会社の問題でみんな矮小化してしまう。人間の生き方や根源的な哲学みたいな話だったり、“何が価値観として一番大事なのか”。そういうものを見失ってなかったら、そうではないと思う」
グローバルサウスとの関係性
慶応義塾大学の教授で日銀の政策委員会の審議委員も務めた白井さゆりさんは、▼【台頭するグローバルサウスとの新たな関係性】に光を当てる。
『慶応義塾大学』総合政策学部 白井さゆり教授:
「上目線で、先進国がODA(政府開発援助)や技術協力をしてきたという時代ではなくなっている。つまりレガシー(過去の遺物)がないから彼らは動きが早い。そこが上下ではなくて仲間というか、もう少しアメリカ以外で何が世界で起きているのかを見て、そこでいかに色々なルール作りに入っていって、“実装で繋がっていけるか”を考えた方がいい。日本にいるとそういう意見が出てこない。内向きになりすぎている。どんどん国内市場が増えるわけではないから、“世界と繋がっていくことが大事”。みんな日本のこと大好きなので、それを生かして、できればバランスとってほしい」
「将来への期待」と「挑戦し続ける」
最終回のスタジオでコメンテーターをつとめた2人の専門家が挙げたのは、“空気感”と“挑戦”というキーワードだ。
『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
▼【将来に期待できる“空気”】
「コメンテーターという立場の反省も込めてだが、この十数年ですごく感じるのは、デフレの中で“できない議論”がものすごく強まったこと。それからトランプ大統領の第1次政権が誕生した時には非常識みたいな話で、僕たち思考停止になったと思う。やらないためとか変化しないことの議論はものすごく強くなったけど、逆に考えると、“やることに向けての議論は全然高まっていない”。今は折角良い感じになってきているので、将来に向けて“今日より明日が良いというような空気感”をみんなで作っていければもっともっと良くなっていくのではないか。そういう良いところに今いると思う」
『第一生命経済研究所』首席エコノミスト 熊野英生さん:
▼【挑戦また挑戦】
「過去20年を見てみると、日本は100年に一度の危機が何回も来ていてそれを乗り越えてきた。恐らく今後も色々な危機が来ると思う。だから単なる挑戦ではなくて、“挑戦して、また次の壁が来たら挑戦する”。明治維新では勤王の志士が次々に倒れたが、また新しい顔ぶれに変わって改革を引っ張っていた。それと同じダイナミズムで、今後の日本も“どんどん挑戦し続ける”ことが必要だと思う」
GDP4位の日本に迫るインド
名目GDPの推移を見ると、日本は2010年に中国に抜かれ世界3位に。2023年にはドイツに抜かれ、さらにインドが迫っている。
<2025年 名目GDP>
▼1位:アメリカ/30兆6157億ドル
▼2位:中国/19兆3986億ドル
▼3位:ドイツ/5兆136億ドル
▼4位:日本/4兆2798億ドル
▼5位:インド/4兆1252億ドル
『ニッセイ基礎研究所』矢嶋康次さん:
「あっという間に抜かれたという印象はこの10年あると思うが、これからの未来を考えたときに、“10年ぐらいあれば何とかできるチャンスがある”ともいえる。いま発射台の角度が上がり始めているので、ここをもっと上げていけば、10年後の自分たちの未来に対してもっと違う絵が描けるのではないか」
――コメンテーターの方々の話を聞いて思ったのは、やはり民間のダイナミズムをもっと復活させないと成長力は高まらないということ。国が一生懸命投資とか対米投資もやっているけど、それには限界がある。もっと創意工夫、競争をやっていかないといけないし、そのためには磯山さんも言っていたが、忖度とか同調圧力があれば個のダイナミズムが働かなくなる
矢嶋さん:
「国のせいにする議論がこの20年ぐらい多かったと思うが、経済は、企業、個人がやるというところにもう一回立ち返らないと、開いてる世界との差がこれからも開くし、逆に言うと改善すればいくらでも良くなる。今は、そのチャンスの場所にいると思う」
「経済に奇跡はない」
最後に、出演者からー
皆川玲奈アナ:
「打ち合わせの時間から本当に濃くて学びがたくさんあった。放送を通して勉強ができるというのが社会人としてすごくうれしかった。この視点をこれからも大切にしたい」
播摩卓士キャスター:
「いま日本経済は図らずも外からやってきたインフレの大波によって局面が転換し、株価も上がるし、物価も賃金も上がるという光が見えてくる時代に入った。ただ、経済に奇跡はない。何かをきっかけに局面が変わるとしても、それはそれまでの企業、個人、政策の取り組み一つ一つの積み重ねがあってこそ初めて実を結ぶもので、いま局面が変わったからといって将来の成長が楽観できるようなそんな状況ではない。こうした大きな局面の転換に繋がる一つ一つの小さな変化や動きを丁寧にきちんと伝えることが経済番組の使命だと思って11年間それに努めてきた放送だった。この私どものささやかな挑戦が、何かしら皆様のお役に立てたのなら大変嬉しく思います。ありがとうございました」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2026年3月21日放送より)
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