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『23区』が青山に新旗艦店 “モノを売る店”を超えた新戦略とは

2026-03-31 15:30:58

オンワード樫山のレディスブランド『23区』が、ブランドの新たな発信拠点となる新業態フラッグシップストア「SALON 23区 AOYAMA」を3月25日にオープンした。開業に先立って行われた記者発表会では、店舗のコンセプトだけでなく、アパレル市場の変化を踏まえた今後の戦略も語られた。

■顧客とブランド、スタッフがつながる場に

『23区』は、シンプルで上品、そして長く着続けられる品質感を強みに、長年支持を集めてきたブランドだ。百貨店や商業施設での展開の印象が強いが、東京・南青山にオープンした「SALON 23区 AOYAMA」は、そうした従来型の店舗とは少し役割が異なる。ブランドの世界観をより深く体験できる“新業態”を掲げる路面型旗艦店であり、単に服を買う場所にとどまらない、新しい接点づくりの場として位置づけられている。

記者発表会でプレゼンテーションを行ったのは、オンワード樫山 第一カンパニー副カンパニー長 執行役員の秋山亜希さん。まず秋山さんは、なぜ今、青山に新たな旗艦店を開くのか、その理由から説明した。

『23区』は30年以上にわたって「真面目で丁寧なものづくり」を続けてきたブランドだという。一方で、これまでの店舗展開はテナントが中心だったため、「お客さま自身にたまたま見つけてもらうのがこれまでの主流でした」と振り返る。そうした受け身のあり方から一歩進み、「ブランドの今と未来を自由に発信できる、本店と呼べる店を一からつくり上げていきたかった」と、新店舗立ち上げの狙いを語った。

もうひとつ、今回のキーワードとして印象的だったのが「コミュニティー」だ。秋山さんは「『23区』を共感できるファッションコミュニティーを、お客さまとブランドでともにつくりたかった」と話し、顧客とブランド、さらに店頭スタッフや内部チームまでがつながる場として、この店を育てていきたい考えを示した。これまでのように販売の現場だけで完結するのではなく、ブランドに関わる人たちが立場を超えて交わることで、商品力や発信力をさらに高めていくという発想だ。

背景にあるのは、アパレル市場そのものの変化だという。秋山さんは、近年の市場環境について、温暖化による季節の“二季化”や景気低迷によって、衣料品の消費環境が変わってきたと説明する。一方で、「推し活」文化の広がりやサステイナブル意識の浸透などから、生活者の間では「自分が納得できる価値」にお金を使いたいという傾向が強まっていると分析した。

■アパレルの消費傾向は「モノ」から「コト」へ

そこで『23区』が重視したのが、「モノ」から「コト」へと移る消費傾向だ。リアル店舗に求められるものも、単なる物販ではなく“体験”になっている。秋山さんは、今後の店舗について「モノを売買する場」を超えた「ブランドを介したコミュニティーの場」として活用していきたいと語った。商品そのものの魅力に加えて、誰と出会えるのか、どんな時間を過ごせるのかまで含めて店舗価値を設計していく考え方は、ファッションビジネスの現在地を象徴しているようにも感じられる。

そうした方針を体現するのが、「SALON 23区 AOYAMA」の空間づくりだ。店舗は「OFFICE(Morning)」「TERRACE(Daytime)」「ROOM(Evening)」という3つのテーマで構成されており、時間帯ごとのライフシーンをイメージしながら『23区』の世界観を表現している。さらに「VIP ROOM」も設け、より特別感のある接客や体験にも対応する。ブランドの服を並べるだけではなく、空間全体で世界観を伝える設計になっている点は、旗艦店らしい見どころと言えそうだ。

秋山さんからは、この店舗で用意される“体験価値”についても具体的な説明があった。「ブランドの世界観を広げるレーベルをすべて集め、一堂に見られる形にしています。テイストや価格の幅を持ち、多様なニーズに対応していきたい」と話し、この店ならではの見せ方を強調した。さらに、同店限定商品や完全受注生産のオーダー会も企画しているという。ネックレスパーツを自由に組み合わせるカスタマイズや、リアルレザー、ファーを使ったアウターのオーダーなど、単なる販売にとどまらない仕掛けを用意している。

もうひとつの柱が、顧客との関係性を深めるための「EXCLUSIVE SALON」だ。全国のロイヤル顧客と担当スタイリストを招いたクローズドイベントを企画しているほか、フラワーアレンジメントやアロマオイルづくりなど、ファッション以外の体験も取り入れていく予定だという。秋山さんは「そうすることで、新しいお客さまと『23区』の接点につなげていけたらなと思います。既存のお客さまにはいろいろなイベントを通して、『23区』の新しい側面を知っていただき、改めてファンになってもらえたらうれしい」と語った。

■常識にとらわれない「体験」を提供

印象的だったのは、店舗を“売る場”としてだけではなく、“人が集まる場”として再定義しようとする姿勢だ。秋山さんは最後に、「各店舗の顧客という位置づけや概念を超えて『23区』のファンなどが一堂に会するフラッグショップとして位置付けられ、過去の経験や常識にとらわれず、おもてなしやイベント体験、また商品提案を自由な発想で実現できる場としてたくさんのことにチャレンジしていきたいと思っています」と展望を語った。

さらに、『23区』というブランドそのものについても、「一度ファンになったらずっと着続けられる品質、飽きのこないテイスト、年齢やライフスタイル、ライフイベント等に応じて卒業する必要のないブランド」と表現し、「まずはこちらのショップに足を運んでいただき、ブランドの魅力に触れていただけたらなと思います」と呼びかけた。

商品を売るだけでは、リアル店舗の価値をつくりにくくなっている時代。そんな中で『23区』が青山から打ち出したのは、服の先にある共感や体験、そして人と人とのつながりだった。長年愛されてきたブランドが次の30年に向けて何を目指すのか。そのひとつの答えが、この「SALON 23区 AOYAMA」に詰まっている。

【「SALON 23区」特設ページ】
https://23ku-web.jp/pages/salon-23ku

情報提供元: マガジンサミット